8 / 38
任命
しおりを挟む 通路を数回曲がり、行き止まりまでくると、俺の腕試しが始まる。
「僕が向こうから来るモンスターは全部倒すから、コルネくんはそのオルトロス一体に集中して」
俺はオルトロスは行き止まりの部分にいて、通路の方からやってくるモンスターを師匠が防ぐようなかたちだ。
次々と他のモンスターを倒していたのを見ていたせいか師匠には目もくれず、ウウウと唸りながら離れて俺だけを睨みつけるオルトロス。
オルトロスは今回の旅で倒してはいるが、ダンジョンのモンスターはAランク以上がごろごろいるというからそれよりも強い可能性が高い。何より、実際と同じ強さなら俺の腕試しの相手として師匠が選ぶわけがない。
相手の実力が分からない以上、こちらからは下手に動けない──そう思って様子を見ていると、痺れを切らしたのかオルトロスがこちらへ一直線に向かってくる。
──速い。ターニュで見たものとは比べものにならないスピードでオルトロスが迫ってくる。俺から突っ込んでいかなくて正解だったが、ここからどうするべきか……すぐに思いついたのは二つ。
一つはこちらからも向かっていき、斬りつける。お互いに加速している状態のため、俺の剣の殺傷力は跳ね上がる。しかし、それは向こうの攻撃の威力も増すということであるのtお、お互いに勢いをつけすぎているせいで剣への負担が大きい。よほど真っ直ぐ刃を入れないと剣が折れてしまう危険がある。
そうなると二つ目だな。俺は集中してオルトロスの動きを目で追う。今も少しずつ加速していっているオルトロスが次の瞬間どこにいるかを推測していく。
「ここだ!」
俺は素早く土魔法でダンジョンの床を盛り上げ、土壁をつくる。ボコボコと盛り上がってくる地面にすぐに気付いたオルトロスの顔には驚きが浮かぶが、勢いがつきすぎていて急には停まれない。
「キャウ──」
目を逸らすように頭を横に向けながらひと鳴きをしようとしたところで、オルトロスは俺の出した土壁に激突する。大きな音とともに頸椎がボキリと折れ、オルトロスの首が本来曲がらない方向に曲がる。
もともとダンジョンの床や壁は異常に硬い。それに勢いよくぶつかれば多少はダメージが入るかと思ったが、予想よりも衝撃が大きかったようだ。
直後、その躯はサラサラとなって消えていき魔力結晶となる。首の骨が折れて即死だったのだろう。
そして残った魔力結晶はかなりの大きさだ。記憶が正しければラムハのダンジョンの奥で採れたものよりも大きい気がする。
「早かったね。意外と楽勝だった?」
「そんなことはないですね。オルトロスが突っ込んできてくれたおかげですよ」
のんきに自分が倒したモンスターの魔力結晶を袋に入れながら師匠が訊いてくる。 からんと袋の中で魔力結晶がぶつかり合う音を聞いて顔が緩んだ師匠に、俺はずっと気になっていたことを訊ねる。
「……全部の袋がいっぱいになるまでこの腕試しは続くんですか?」
「いや、コルネくんが続けたいならそうすればいいし、満足したならやめればいいよ。僕は魔力結晶ほしいからたくさん狩るけど」
俺が一人で大量のモンスターを倒さなくていいと知って一安心だ。
「持ってきた袋全部がいっぱいいっぱいになるまで倒すんですか?」
「え……さすがにそこまではしないよ──あれは予備。袋が破れたりなくなったりしたときのために一応持ってるんだ」
笑って答える師匠。たしかにモンスターの攻撃や魔力結晶の重みで袋が破れることはあり得る。よく忘れ物はしそうになるのに、そういうところだけ用意周到なんだ──と心の裡で思った。
「僕が向こうから来るモンスターは全部倒すから、コルネくんはそのオルトロス一体に集中して」
俺はオルトロスは行き止まりの部分にいて、通路の方からやってくるモンスターを師匠が防ぐようなかたちだ。
次々と他のモンスターを倒していたのを見ていたせいか師匠には目もくれず、ウウウと唸りながら離れて俺だけを睨みつけるオルトロス。
オルトロスは今回の旅で倒してはいるが、ダンジョンのモンスターはAランク以上がごろごろいるというからそれよりも強い可能性が高い。何より、実際と同じ強さなら俺の腕試しの相手として師匠が選ぶわけがない。
相手の実力が分からない以上、こちらからは下手に動けない──そう思って様子を見ていると、痺れを切らしたのかオルトロスがこちらへ一直線に向かってくる。
──速い。ターニュで見たものとは比べものにならないスピードでオルトロスが迫ってくる。俺から突っ込んでいかなくて正解だったが、ここからどうするべきか……すぐに思いついたのは二つ。
一つはこちらからも向かっていき、斬りつける。お互いに加速している状態のため、俺の剣の殺傷力は跳ね上がる。しかし、それは向こうの攻撃の威力も増すということであるのtお、お互いに勢いをつけすぎているせいで剣への負担が大きい。よほど真っ直ぐ刃を入れないと剣が折れてしまう危険がある。
そうなると二つ目だな。俺は集中してオルトロスの動きを目で追う。今も少しずつ加速していっているオルトロスが次の瞬間どこにいるかを推測していく。
「ここだ!」
俺は素早く土魔法でダンジョンの床を盛り上げ、土壁をつくる。ボコボコと盛り上がってくる地面にすぐに気付いたオルトロスの顔には驚きが浮かぶが、勢いがつきすぎていて急には停まれない。
「キャウ──」
目を逸らすように頭を横に向けながらひと鳴きをしようとしたところで、オルトロスは俺の出した土壁に激突する。大きな音とともに頸椎がボキリと折れ、オルトロスの首が本来曲がらない方向に曲がる。
もともとダンジョンの床や壁は異常に硬い。それに勢いよくぶつかれば多少はダメージが入るかと思ったが、予想よりも衝撃が大きかったようだ。
直後、その躯はサラサラとなって消えていき魔力結晶となる。首の骨が折れて即死だったのだろう。
そして残った魔力結晶はかなりの大きさだ。記憶が正しければラムハのダンジョンの奥で採れたものよりも大きい気がする。
「早かったね。意外と楽勝だった?」
「そんなことはないですね。オルトロスが突っ込んできてくれたおかげですよ」
のんきに自分が倒したモンスターの魔力結晶を袋に入れながら師匠が訊いてくる。 からんと袋の中で魔力結晶がぶつかり合う音を聞いて顔が緩んだ師匠に、俺はずっと気になっていたことを訊ねる。
「……全部の袋がいっぱいになるまでこの腕試しは続くんですか?」
「いや、コルネくんが続けたいならそうすればいいし、満足したならやめればいいよ。僕は魔力結晶ほしいからたくさん狩るけど」
俺が一人で大量のモンスターを倒さなくていいと知って一安心だ。
「持ってきた袋全部がいっぱいいっぱいになるまで倒すんですか?」
「え……さすがにそこまではしないよ──あれは予備。袋が破れたりなくなったりしたときのために一応持ってるんだ」
笑って答える師匠。たしかにモンスターの攻撃や魔力結晶の重みで袋が破れることはあり得る。よく忘れ物はしそうになるのに、そういうところだけ用意周到なんだ──と心の裡で思った。
3
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?
まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。
☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。
☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。
☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。
☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。
☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
『白い結婚』が好条件だったから即断即決するしかないよね!
三谷朱花
恋愛
私、エヴァはずっともう親がいないものだと思っていた。亡くなった母方の祖父母に育てられていたからだ。だけど、年頃になった私を迎えに来たのは、ピョルリング伯爵だった。どうやら私はピョルリング伯爵の庶子らしい。そしてどうやら、政治の道具になるために、王都に連れていかれるらしい。そして、連れていかれた先には、年若いタッペル公爵がいた。どうやら、タッペル公爵は結婚したい理由があるらしい。タッペル公爵の出した条件に、私はすぐに飛びついた。だって、とてもいい条件だったから!

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月
りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。
1話だいたい1500字くらいを想定してます。
1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。
更新は不定期。
完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。
恋愛とファンタジーの中間のような話です。
主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる