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言い訳

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「兄上」

クララがドアをしっかり閉めていなかったのか、シャトが隙間から覗いている。

「シャト、今は入ってくるな。」

そう言ったが、リルが倒れているのを見てしまったシャトに、俺の言葉は聞こえていないらしい。バンっと大きくドアを開けて、部屋に飛び込んできた。

「うぁぁあん!リルが死んじゃう!兄上っ!どうしよう!!」
「大丈夫だ。泣くな、シャト。」
「うわぁぁん!リルが死んじゃうー!!」

日暮の宮で何かあったのは明らかだし、この状態で返すわけにもいかないな。

「殿下っ!どうなさいましたかっ!!」

俺に何か怪我があったと思ったのか、医師が走って来た。

「俺ではなく、この女だ。急に吐いて倒れた。」

大丈夫だとは思うが、もし毒草でも含まれていたら死ぬ。シャトには聞かせられない。

「今すぐシャトを部屋の外へ。」
「畏まりました。」
「イヤだ!一緒にいるんだっ!!」

じたばた暴れるシャトを護衛が抱えて部屋を出た。

「どうだ?」

ジブリールの吐いた物を見て、医師が言った。

「雑草を食べて、消化不良を起こしたのでしょう。」
「毒は?」
「いえ、今は寝ている状態に近いです。脈も落ち着いてます。」
「命に別状はないんだな?」
「はい。ですが、かなり体力が落ちているはずです。普通なら多少食べ物を消化出来なくても吐けば落ち着きますが、意識を失うくらいですから。」
「病室へつれていけ。暫くそこで様子をみろ。」
「畏まりました。」

部屋の前でシャトが泣いている。

「ジブリールは大丈夫だ。」
「リルは姉上になるのに、死んだら駄目です…」
「姉上になると決まってない。」
「父上と母上は賛成してくれました。」
「シャト、嘘はよくないぞ。」
「ウソではありません!『このさい女なら誰でもいい』とおっしゃってました!!」
「……」

俺が婚約者を選ぶのを拒否する言い訳が、『女に興味がない』だったからな。……男色だとでも思われたのか。
下手な言い訳が、仇になってしまった。

草を食らう女と結婚なんて、冗談じゃない。すぐに断りに行かなければ。
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