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婚約者

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「姉上!!起きてください!!」

朝7時になると、いつも弟のミカエラが私を起こしに来る。

「ミカ…、おはよう。」
「おはようございます!」

今日も私の可愛い弟は元気だわ。

「姉上!大事件だよ!」
「事件?」
「そうなんだ!」

興奮して顔が赤いのが更に可愛い。

「ふふ、何かしら?」
「実は、姉上がカーライル殿下の婚約者候補に選ばれたんだよ!」
「ミカ、嘘をつくならもっと上手くつきなさい。」
「本当だよ!」

12才年下の異母弟ミカエラ。齢5才のお子様には、それが絶対にありえない事だと解らないのね。

カーライルと言えば、隣国カポネ王国の王太子。その婚約者候補に他国の…しかも伯爵家でも下位貴族であるマカロン家に、そんな話がくるはずない。

そう、そんな事、普通はあるはずないのよ。

けど、本当だった。

王太子の婚約者候補……って、冗談じゃないわよ!!

服を着替えてすぐにお父様の部屋へ向かった。

「お父様、本当に本当でしょうか?」
「ああ。」
「騙されていませんか?」
「私もそう思って確認したんだ…。」

お父様が青い顔をして、私に手紙を渡してきた。

「読んでも良いのですか?」
「ああ。」

お父様の顔色が更に悪くなったわ。
一体、何が書いてあるのかしら。

差出人を見ると、そこには王様の名が書いてあった。

『ジブリール・マカロンを婚約者候補にと、カポネ王国カーライル王太子殿下より直々の指名である。我が国マドーレに拒否権はない。』

さらりとそれだけ書いてあった。

「手の込んだ悪戯ですか?」
「だと良かったんだが…。」

拒否権はない。
そりゃそうでしょう。うちの国は自然豊かで平和だけれど、とても小さい。何故攻め落とされないかというと、大国カポネが守ってくれているから。
私達はそれなりにお金や物資をお支払しているけれど、カポネの気が変わればいつでも属国になってしまうわ。

「出立はいつですか?」
「3日後だ。」
「……」

想像以上に早かった。

「用意も何も出来ていないのに、そんな馬鹿な話が…」
「荷物は必要ない。」
「どういう事ですか?」
「持っていけるものは、3つ。そのうちの1つはジブリール自身。1つは家族の肖像画、後1つはジブリールが大切にしているもの。」

結局、1つしか自由に持ち込めないって事よね。

「わかりました。カポネへ行きます。」

どう考えても私が選ばれる事はないし、気楽に行けばいいよね。
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