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チョコレート色の靴をはいて3

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あれから、キラという女は来なくなった。

お母様は、『キアラは絶対に助けるから待っていて欲しい』…と毎日言ってくれる。手紙の書き方や暗号を教えてくれた。アイクにも暗号表を渡しておく…と。

無理だろうけど、その気持ちは嬉しかった。


ルートニアを離れてから今日で21日。明日ノツメの王子が来るらしい。

そんな事は関係ない。私は今日も靴を作る。
型も何もないから、頭に入ってる物を作る。
魔術の靴。あの靴は物凄く難しかった。だけど何足も作った。色を変えてみたり素材を変えてみたり。

だから、もう感覚で作れる。

・・・・


ドロシーが国を出て22日たっている。
俺が15日寝ていた。そして今日リタンに着いたのは7日たってからだ。

「アイク、城に正面から突っ込むのか?」
「当然だろ。俺達は国王からの遣いだ。何のためにこんな堅苦しい服に着替えたと思ってる。」

リタンの城に近付く前に、国からの遣いと思わせる為に服を着替え、確認の為の札も用意した。

「誰だお前は。」
「ルートニアからの使者だ。我が国の王から至急に伝えたい事がある。」
「今日は駄目だ。何があっても取り次ぐなと言われている。」
「……」
ルシアが来てる。だから取り次がない。今ならまだドロシーを取り戻せる!!



・・・・


何を考えたら黒のドレスを着せて異国に送ろうと思うんだろう。この国の人のセンスを疑うわ。

支度が出来たらすぐに綺麗な部屋に案内された。

ここは謁見の間…というものなのかもしれないわね。

そこにいた男はアイクが言ってた『怖いやつ』と同じ、茶色の長髪の男。

その男は私を笑顔で迎えた。

「君がキアラ?随分悲惨な目にあっていたらしいね。今日からノツメで幸せに暮らそう。」

「初めまして、キアラです。こちらこそよろしくお願いします。」

バチンッ
「痛っ…」

普通に挨拶したのが気に食わなかったのか、私はいきなり殴られた。平手でも男は痛いわね。
まぁ、借金取りに殴られた時の方が痛かったのを考えれば、手加減はしてるんでしょうけど。

「反応が薄い。それはそれで面白いかもしれない。」
「…」
「誰が返事をしなくていいと言った?」
「…っ!?」

シュッと音がしたと思ったら、ナイフを抜いた音だった。

「っっ!?」

何をされたか、床に髪の毛が落ちてやっとわかった。
髪を切られた。

「ちょうど髪を切ろうと思っていたのです。ルシア様、ありがとうございます。感想を述べましたので、これで満足いただけましたか?」

どうせ何をしても気に食わないんでしょうけどね。

バキッ
「っっ!!」

「生意気だな。」

「…その女と結婚するのでしょう。奇特な方ですわね。」

まさか、ここでこんなに殴られるなんて。

久しぶりに鼻と口から血が出たわ。ハンカチなんて持ってないし、血はドレスの袖ふけばいいか。
駄目だ、結構口が切れてる…血が口にたまる。
「ぺっ!」
この感じ、久しぶりだわ。
借金取りに死ぬほど殴られて、今度は金持ちに殴られるなんて、笑える。

何が気に食わないのか、また殴ろうとしてきたからかわした。
「はぁ…。痛いので止めていただけますか。こういうくだらない事は。」

さっさと話しを進めなさいよ。これ以上殴られるのはごめんだわ。
ああ…、この様子だと国は本当に乗っ取られるわね。
王様、震えて真っ青じゃない。
なんて情けない男なの。
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