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魔術2
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「ノートン、アイザックはどうだ?」
「それが、熱が一向に下がりません。ドロシーがいなくなってから殆ど食事もとっていませんので、体力が…」
ドロシーがいなくなって10日目からアイクは高熱を出して、今日で5日間意識がもどらない。
「アイク…」
このままだと、アイクは死んでしまう…
「これが魔術の靴のそれなのかもしれないな。」
「陛下…」
「ドロシーの夢を見ていた7才のアイクには、ドロシーが必要だったんだ。けれど、これが運命であるとしたなら、あまりにも酷すぎる。」
アイザックの手を握る事しか出来ない自分が嫌になる。こんな時、妻が生きていればどうしてやるだろう。やはり子供にとって母親は特別だ。俺では代わりはつとまらない事も多々あった。だから、ドロシーとアイクを見ているのは幸せだった。
「ドロシーをアイザックの妻にと、それは伝えてあるんですよね。」
「……あぁ、書状を渡してもらうようには伝えているが、果たして王のもとまで届くかどうか…。」
「ドロシーを邪魔に思ってる人間がいるのであれば、難しいかもしれません。」
「…リタンの王女とノツメの第2王子と結婚話が決まりかけているらしい。ドロシーが見つかったとわかってから、すぐにノツメへ返事をしていたようだ。ドロシーを代わりにするつもりだろう。生贄にされるために帰ったようなものだ。」
「…っっ」
「もっと早くわかっていたなら帰さなかったのに…。」
リタンの王への書状、例え届いたとしてもドロシーをノツメへ送られてしまえば終わりだ。
子を持つ親としては、前の婚約者を殴り殺した男のもとに娘を渡したくない気持ちはわかる。だが、それはドロシーにも向けられるべきものじゃないのか。
アイク……。ドロシーがいないと、意識すらなくなるなんて…。大人になるならないの問題じゃない。このままじゃアイクは死ぬ。
何をすれば起きる?何をすれば目を覚ます?妻にも先立たれ、たった1人の息子すらまもれないのか…俺は……。
『魔術をとく為にドロシーが来た訳じゃないの。ドロシーを幸せにする為にアイクは靴を履いたのよ。どうやって幸せにするのか、アイクは何度も言っていたでしょう。』
この世にいるはずもない妻の声が聞こえた気がした。
「…そうだ。」
「どうかなさいましたか?」
「ノートン、ドロシーがアイクの為に作った靴…それに『チョコレート色の靴』はないか?」
「…っ見てきますっ!!」
陛下に言われ、俺はドロシーの作業部屋まで全力で走った。
そうだ、ドロシーはサイズを気にしていたが、子供のサイズでいいんだ。
アイクが大人になった時、服のサイズも変わってる。
ベッドで靴を履いてる事がないから気がつかなかったが、7才のアイクの為に作ったチョコレート色の靴も大きくなる。
アイクを大人にするには、『魔術をとく靴』『好きな人との口づけ』…そんな事を言っていた。
どちらもそろう。
『特別な約束のちゅー』
好きな人からアイクに向けての。
『魔術をとく靴』
それがチョコレート色の靴だ。
「それが、熱が一向に下がりません。ドロシーがいなくなってから殆ど食事もとっていませんので、体力が…」
ドロシーがいなくなって10日目からアイクは高熱を出して、今日で5日間意識がもどらない。
「アイク…」
このままだと、アイクは死んでしまう…
「これが魔術の靴のそれなのかもしれないな。」
「陛下…」
「ドロシーの夢を見ていた7才のアイクには、ドロシーが必要だったんだ。けれど、これが運命であるとしたなら、あまりにも酷すぎる。」
アイザックの手を握る事しか出来ない自分が嫌になる。こんな時、妻が生きていればどうしてやるだろう。やはり子供にとって母親は特別だ。俺では代わりはつとまらない事も多々あった。だから、ドロシーとアイクを見ているのは幸せだった。
「ドロシーをアイザックの妻にと、それは伝えてあるんですよね。」
「……あぁ、書状を渡してもらうようには伝えているが、果たして王のもとまで届くかどうか…。」
「ドロシーを邪魔に思ってる人間がいるのであれば、難しいかもしれません。」
「…リタンの王女とノツメの第2王子と結婚話が決まりかけているらしい。ドロシーが見つかったとわかってから、すぐにノツメへ返事をしていたようだ。ドロシーを代わりにするつもりだろう。生贄にされるために帰ったようなものだ。」
「…っっ」
「もっと早くわかっていたなら帰さなかったのに…。」
リタンの王への書状、例え届いたとしてもドロシーをノツメへ送られてしまえば終わりだ。
子を持つ親としては、前の婚約者を殴り殺した男のもとに娘を渡したくない気持ちはわかる。だが、それはドロシーにも向けられるべきものじゃないのか。
アイク……。ドロシーがいないと、意識すらなくなるなんて…。大人になるならないの問題じゃない。このままじゃアイクは死ぬ。
何をすれば起きる?何をすれば目を覚ます?妻にも先立たれ、たった1人の息子すらまもれないのか…俺は……。
『魔術をとく為にドロシーが来た訳じゃないの。ドロシーを幸せにする為にアイクは靴を履いたのよ。どうやって幸せにするのか、アイクは何度も言っていたでしょう。』
この世にいるはずもない妻の声が聞こえた気がした。
「…そうだ。」
「どうかなさいましたか?」
「ノートン、ドロシーがアイクの為に作った靴…それに『チョコレート色の靴』はないか?」
「…っ見てきますっ!!」
陛下に言われ、俺はドロシーの作業部屋まで全力で走った。
そうだ、ドロシーはサイズを気にしていたが、子供のサイズでいいんだ。
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ベッドで靴を履いてる事がないから気がつかなかったが、7才のアイクの為に作ったチョコレート色の靴も大きくなる。
アイクを大人にするには、『魔術をとく靴』『好きな人との口づけ』…そんな事を言っていた。
どちらもそろう。
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それがチョコレート色の靴だ。
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