いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん

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魔術

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朝、綺麗な服を着せら馬車が待つ所へ向かった。

「いやだぁぁぁっ!!ドロシーはずっとオレと一緒にいるんだぁぁっー!けっこんしたんだぁーーっうわあああん!」

「アイク…」
「どろしぃぃぃぃー」
「帰ってくるから泣かないで。」
「わぁぁあーんっ!!」
「絶対に帰ってくるから」
「ぅぅ…っほっんとか?…夫にっウソはダ…メなんだぞっ!」
「アイク、こっち向いて。」
「かえってくるのか…?」
「うん、約束する。」

私はアイクの唇にチュと口づけた。

「『特別な約束のちゅー』だよ。何があっても絶対帰ってくるからね」
「ぜったい…だぞ!!」
「うん。」
「皆さん、今日までありがとうございました。」
「…やっぱりいったらダメだ…。怖いやつの所にいったらダメだ…」
「大丈夫、怖いやつの所じゃないよ…」
「違うっ!アイツは怖いやつなんだ!!」
「…アイザック、ドロシーから離れなさい。」

私に抱きついていたアイクを陛下が引き離した。
いつまでも馬車にのらない訳にもいかないよね。

「アイク、行ってくるね。」

「うわあああっ!!いやだーーっ!!どろしぃぃー!!」

「ごめんなさい。もう出発してください。……うぅ……っ…アイ…ク……」

絶対帰ってこれるかなんてわからない。
ううん、多分帰ってこれない。
だって、もしこれが魔術だったとしたなら、私とアイクを会わせてくれるわけがない。

魔術の7つ道具は諸刃の剣

同じ傷をおう。
幸せになるために…不幸を振り払おうと刃を向ければ、その刃は私にもまた傷をつける。幸せにだけなる、そんな事は出来ないのよ。

忘却…
思い出さなくてよかったのに

真実…
こんなものいらなかったのに

諸刃の剣…
不幸にしかなれないなら。

靴を作ろう。何があっても…アイクが大人になれるまで…。指がとれたって、腕がなくなったって、例えどんな事があっても…。


アンドリュー様は私を迎えに来る事は出来ない。影であっても、アイクが子供の姿の間は『アイザック王太子』だしね。それは仕方ない事、最初から解ってたけど『迎えに来てくれる』っていう希望がなければやっていけない。
靴は完成しなかったけど…。


……見送りにくらいは来て欲しかったかな。

城の殆どの人が見送りに来てくれたけど、アンドリュー様は来てくれなかった。



馬車の中で言われた。私は『キアラ』という名前らしい。
しっくりこない。

あの人達につけられた『ドロシー』という名前なんて捨てたいと思っていたけど、呼ぶ人が違えば全然違うものに聞こえた。だからこれからも、私の名前はドロシー。『キアラ』じゃない



15日ほどでリタンにはついた。
そこには王妃様がいて、その隣には私と同じ顔をした子が、気持ち悪い笑顔をうかべていた。

「キアラっ!!生きていて本当に良かった!!」
王妃様は泣いて喜んでいるように見える。
けれど、これも本心なのか分からない。信じられるものなんて、この国に何1つない。



「王妃様、これを陛下に渡していただけますか…?」

帰り際、陛下に渡された書状。何が書いてるのか、それは教えて貰うことはできなかった。
それはそうだよね。王様どうしでやり取りする内容を、私が知れるはずがない。
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