いきなり結婚しろと言われても、相手は７才の王子だなんて冗談はよしてください

別れの時

アイクが寝るのを待って、私は靴を作る為に作業部屋に急いだ。これから当分の間、図書室で調べる時間も靴の作業にあてる。

本に書かれていた言葉。
『諸刃の剣』
『忘却』
『真実』
図書室で闇雲に情報を探す前に、これを考える方がいいと思ったから。



コンコン

「ドロシー、話がある。開けていいか？」
「はい。」

声の主はアンドリュー様。

「何かあったの？」

あまりにも真剣な顔をしているから、少し怖い…。

「大事な話がある。付いてきてくれ。」

「…わかった。」



到着したのは陛下の執務室。

…本当の両親が見つかったのかもしれない。

もうアイクの靴を作らないでいいって言われるのかもしれない。

ここに呼ばれるなんて、それくらいしか考えられないよね…。


「ドロシー、作業中に邪魔をしてすまない。」
「いえ、特に問題はありません。」
「ならよかった。……では、早速本題に入ろうか。ドロシー、君の両親が見つかった。」

やっぱり…

「君はこの国の者ではない。」

「私は異国人なのですか？そんな記憶は、全く……。」

「川に落ちた時に少し記憶が失くなったのかもしれないね。」
「……」
「本当の両親はリタンの国王と王妃。ドロシー、君はリタンの姫君だ。」
「姫…？そんな…ありえません。」
「信じられないのも無理はないが、君と同じ顔をした姫がリタンにはいる。双子の姉の『キラ』という子だ。」

双子…

「君を国へ帰さなければいけなくなった。」
「…え？嫌です、駄目です!!アイクの靴が作れないし、好きだった女性も探せなくなります！」
「リタンから要求されている。ドロシーが王女だと解った時点で、１度もリタンに帰さないという事は出来ない。」

「私はここに帰ってくる事はできますか？」
「それも、私には判断出来ない。」
「それじゃ…行きたくありません。行きません。絶対に…」

アイクの靴が作れなくなる。サイズも変わってくるからピッタリの物が作れなくなる。何より、どんどん子供になっていくアイクを１人残してなんていけない。

「ドロシー、悪いがそれは出来ない。」

「出ていけ…と言う事でしょうか…」

「違うっ!!誰もドロシーに出ていって欲しいだなんて思ってない。俺がアイザックとしてドロシーに結婚を申し込むから、それまで待っていてくれ!!」

帰ってこれない気がする。私を殺そうとした姉がいるところへ行って、大切に扱われるとは思わない。

「アイクの靴を作って送り続けます。必ずアイクが大人になれるまで、何処にいても。」

「ドロシー！君が何処にいても迎えに行く！何があっても助けに行くっ!!だからここを出ていく日までに、俺のために靴を作ってくれ。俺の好きなチョコレートの色の靴をっ!!」

「うん。帰って来れない時は迎えに来て。」