いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん

文字の大きさ
上 下
43 / 57

帰したくない2

しおりを挟む
ドロシーとの話を終えて、俺は図書室を出てすぐに父上の元へ向かった。


コンコン
「アイザックです。」
「入りなさい。」
「失礼します。」
ノートンと父の側近は部屋の外でまってもらう事にした。

「リタンの姫に縁談などはありませんか?」

「…何故?」

俺の唐突な質問に父上は顔をしかめた。この顔、きっとあるな…。

「ドロシーが思い出した事ですが『同じ顔をした女の子に川に突き飛ばされた』と。」

「ドロシーは自分で落ちたんじゃないのか?」

「違うようです。…ドロシーはノツメの第2王子と結婚させられるのでは…、俺はそう思えてなりません。」

「…何か心当たりでもあるのか?」

「ドロシーは溺れる前に、男を追いかけていたらしいんです。」

「その男がノツメの第2王子だと?」

「大人の俺には解らないのですが、7才の俺は『ドロシーが変な男にとられる、』と言っていて、その男は怖い奴で風貌を聞くと…」

「第2王子のルシアに似てるという事か…。」

「『20才の俺はチョコレート色の靴を履いて、ドロシーを助けに行く』そうも言ってたらしいんです。」

「助ける…。誰からなのかは解らなくても、ここではない何処かで危機に陥ってるのを助ける、そう7才のアイクは言ってるんだな。」

「はい。」

「確かにリタンの姫には結婚話が持ち上がっている。相手は誰なのかそこまでは解らなかったが、返事をなかなかしていないのを考えると第2王子で違いないだろう。病死だとされているが、前の婚約者を殺した男だ…。」

「今の姿の俺が直接リタンの王のもとまで行き、ドロシーと結婚したいと申し出てはいけませんか?」

「悪くはない。だが、アイクが寝てる間、しかもドロシーがある程度側にいなければ大人の姿にはなれないなら、呼ばれた日時に訪れるのは無理だろう。」

ある程度…ドロシーが城を出て行ってから帰ってくるまで、俺は大人になれなかった…。

「だとしても、どうしても帰したくないんです。」

ノツメの第2王子のルシアのもとへ行けば、殺されてしまう可能性だってある。少なくとも、普通の扱いはしてもらえない。

「ドロシーが第2王子に嫁ぐかどうか、まだわからない。完全に大人に戻らないなら様子を見るしかない。」

双子の妹だか姉だかは知らないが、ドロシーを殺そうとした女。侍女だって側にいたはずだ。なのに助けなかった。
邪魔だと思っていたからだ。根本的な性格は簡単には変わらない。必ず身代わりにする。


睡魔が襲ってきた。

「…7才の俺に戻りそうです。話は途中で…すが……しま…。」
最後まで言いきる事なく俺は眠ってしまった。

「…7才にもどるか……。」

「ノートン、入りなさい。」

「失礼します。………寝ましたか。」

「ああ、部屋へ連れて行ってくれ。」

「畏まりました。」

ノートンがアイクを抱えて出てい行くのを見ていると、親である俺も辛い。

チョコレート色の靴を履いて助けに行く…その場所は何処なのか。
もしノツメの婚約者とされてしまった場合、助けに行く場は敵対してる国になる。そこへアイクを送り出す事は出来ない。

ドロシーがいなければ、絶対にアイクは大人に戻れないし、生きてさえいられない気がする…。何故かはわからないが。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?

田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。 受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。 妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。 今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。 …そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。 だから私は婚約破棄を受け入れた。 それなのに必死になる王太子殿下。

処理中です...