いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん

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アンドリュー

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アイクが寝たので、私はいつものようにこそっと部屋をでる。

「ダージリンさん。アンドリュー様とは何処に行けば会えるんでしょうか?」

たしかこの城に住んでるって言ってたよね…。

「いつも昼間はアイザック殿下の代わりに公務をしておりますので、21時頃なら会えるかと思いますよ。」

「やっぱり大変なんですね…。」

陛下に会うのに一緒についてきてくれたし、お礼を言いたかったんだけど。いつも会いに来てくれるばかりだしね。
あまり会わない方がいいのかな…。『結婚』って、まだ完全に諦めてないみたいだったし…。

「ドロシー」
私が悩んでいる所にアンドリュー様が後ろからやって来た。
「今日は図書室には行かないのか?お茶を持って行こうと思ったんだが。」
「今日は靴を作ろうと思って。アンドリュー様、昨日はありがとう。」
「ん?」
「疲れていたのに、陛下の所へついてきてくれたし。」
…忘れていたけど、頭を撫でてもらったのよね。思い出したら恥ずかしくなってきた。
「別に、大したことじゃない。そうだな、お礼をくれるなら、『ありがとうのチュー』でいいぞ。」
クスクス笑いながら言うアンドリュー様。
大人になったアイクもこんな感じなのかもしれない。大人になったらアイクの中に私はいなくなって、会えなくなるんだけどね。


「靴を作るなら、俺も見てていいか?」
「……」
「…駄目か?」
「プロポーズは無かった事にしてくれるなら、見学してもお茶してもいいけど、そうじゃなければ2人きりにはなりません。」

「……無かった事にする。」
「本当?」
「ああ。」
怪しい…
「本当だぞ。」
「なら一緒に来てもいいけど。」
「ドロシーは俺を好きになってもいいんだぞ。」
「ならないわよ。」
「ドロシーは手厳しいな。」
「私は王太子様の姿絵を見た時、好みじゃないと思ったしね。」
「…手強い。」
「本当にプロポーズは無かった事になってるんだよね?」
「それは無かった事にしている。」
「絶対によ。」
「ああ。」

強く同意を得てから、私達は作業部屋へ向かった。


「ドロシー、アイクは焦茶色が好きだぞ。」
「そうなの?」
「ああ。」
「そういえば『チョコレートの色だ!』って言ってた。」
「まぁ、焦茶といってもいっぱいあるしな。チョコが1番わかりやすいと思ったんだろ。」
なるほど。
「因みに、このチョコレートの色だ。」
アンドリュー様が私に小さな巾着をくれた。
「…溶けてるね。」
「袋に入れてはいたけど、内ポケットにいれてたからな…。」
「…っ」
「笑いたかったら笑っていいぞ。」
「…ふふ…はははっ!」
「そこまで笑わなくてもいいぞ。」

ドロシーはあまり解ってないな。プロポーズをは無かった事にしても、俺がドロシーを好きなのは変わらない。2人きりになってもいいと思っているのは、ドロシーが自分から俺に一歩近付いているって事だ。


ドロシーはリタンに絶対帰さない。
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