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悲しい予想
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夜、アンドリューになった俺とノートンは父上に呼びだされた。
「アイク、ドロシーの事だが…もうここに引き留めておく事は出来ないかもしれん。」
「…何故ですか?」
「ノートン、お前の言っていた通りだった。」
「では、やはり…」
「ああ。」
「…何の話をしているんですか?」
「ドロシーはリタン王国の王女殿下だ。」
「……それは何の冗談ですか?」
「ノートン、ドロシーが言っていた事を話してやってくれ。」
「畏まりました。…ドロシーは『本当は私はお姫様で、誘拐されてこき使われてる所を王子様が助けてくれる』と子供の時に願ってたそうです。それで私は思いました。彼女の願いを叶えるのが殿下なのではないかと…。」
「で、遣いを出して本当に姫だったと?そんな訳がないだろ。」
「アイク、リタンからうちの国へ繋がる川がある。姫はそこで川に落ちて行方知れずになった。死体すら上がらなかったらしい。」
「ですが、それがドロシーかどうかなんて解りません!」
「リタン王家は皆黒髪だ。姫は双子で、ドロシーそっくりだ。」
父上が俺に渡した姿絵。
ドロシーに似ている。否定できないくらいに。
「……ドロシーを帰してしまえば2度と会えないという事でしょうか。」
「そうなる。」
「…っ」
リタンはうちと仲がいいとは言えない。今回は黒髪家系だから…と遣いを送った。おそらくそれは、後々の事も考えたからだ。
もしドロシーがどこかの王女殿下だったとしたなら、あの両親がいるところに留めてはおけないし、もちろん城にも…7才の俺と一緒にすごす事もアンドリューとして会う事も出来ない…。
「ドロシーを妃に…と、申し出は出来ませんか…」
「出来ない事はない。お互いに悪い条件ではない。だがアイザック、お前が子供のままなのに『結婚させてくれ』だなんて、リタンからすれば『なんの冗談だ』と言われてしまう。この国の王子は1人、そして20才だという事を、近隣国が知らないはずがない。なのに子供を連れていって『これがアイザックです』と言えるか?」
「……」
俺が子供でなければ、ドロシーに結婚を申し込める。けど、靴を履いてしまった俺には無理だ。
「アイク、ドロシーを救えるのはお前にだけだ。」
「…どういう事ですか?」
「彼女は姫になれば、また自由もないだろう。無理やり結婚もさせられる。それまでに大人に戻れ。『必ず彼女の気持ちを俺に向かせてみせる。彼女は運命の相手だ』そう言い切ったのだから必ずやりとげるんだ。もう一度此方から書状を届け、迎えにきてもらうように手配する。王太子妃として迎えられるかどうか、タイムリミットはそれまでだ。」
「アイク、ドロシーの事だが…もうここに引き留めておく事は出来ないかもしれん。」
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