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初めて会った日2

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「子供のアイクからいい影響を受けたのは一途なアイクってところだけだな。」
「べつに一途ではないだろ。」
「なら、ドロシー以外で誰かを好きになった事があったか?それ以外で頑張ろうと思うか?結婚したいと思うか?」
「絶対嫌だ。他を選ぶならもう誰でもいい。どうでもいい。」
「一途だろ。」
「今だけかもしれないだろ。」
「そうなのか?なら俺は手伝わん。」
「手伝ってください。」
「いいだろう。」

何て偉そうな護衛なんだ…。
はっきり物を言ってくれるのはノートンだけだから、別に構いはしないが…。

「俺は7才でも20才でも思考は変わらない。ドロシーが好きな時点で同じ思考回路だし、好みも引き継いでる。」
「そうだな。アイクの好みが陛下に似てるというのも分かったし。」
「は?そんなわけないだろ。黒髪ってだけで。」
「陛下がドロシーに言ってたらしい。王妃様に少し似てるって。」
「止めてくれ。恥ずかしいだろ。父親と同じだなんて…」
「黒髪の女が好きだっていう時点で既に同じだろ。」
「……そうだな。」
「面白い事を教えてやる。」
「何だ?」
「陛下の前で『やくそくのちゅー』をしろっと、ドロシーに言っていたんだ。7才のアイクは。」
「嘘だろ…?嘘だと言ってくれ。」
「本当だ。なんなら確かめてみたらどうだ?吹き出しそうになってたぞ。」
「で、どうなったんだ?」
「ほっぺに『やくそくのちゅー』をしたから不満そうだった。『女からは皆そうなのか?』と陛下に確認していた。」
「……」

聞かなければよかった…。
7才の俺のした事であっても、俺は俺だ。子供の時の事は俺がやってる事になる。そういう面を持ち合わせていた7才の俺がいるという事だ。それを今更になって父上に知られるとは…。
『母親がいなかったから甘えてる』というドロシーの言葉が今理解できた。
甘えているのだとしても、ドロシーを選んだんだから、そこには理由が必ずある。それを知る事が大人に戻る方法の鍵だろう。

「今度、父上にどんな顔をして会えばいい?」
「普通に会えばいいだろ。」
「普通に出来ない気がする。…多分、父上の方が。絶対に笑うだろ…。」

確かに、子供の時は寂しかった。皆が母親と手を繋いでいるのに、それが出来ない。父は既に王位を継承していたから忙しい。いつも一人だった事だけ覚えている。あれは子供だったからいい。今は20才だぞ。たとえ子供に戻ってた時の話でも、恥ずかしすぎる。

「…眠くなってきた…ドロシーが起きる。話は今日の夜にする。」

そうノートンにいったところから、次起きるまでの記憶はない。
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