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ドロシー
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アイクが寝ついたのを見計らって私は城を出た。
私を送ってくれたのは別の人。女性の衛兵。
家に近づくにつれて憂鬱になる。
「送って下さってありがとうございました。」
「命令ですので。では、失礼します。」
冷たくて言い残して馬車は帰っていった。
私が下ろしてもらったのは、少し家から離れた場所。城からの馬車に乗ってるのを見られたら、絶対に面倒な事になるしね。
ガチャ
戸を開けて目に入ってきた物。綺麗な食器、テーブルに乗った高級な食材。
「これ、どうしたの…?」
「食べる物もなかったし、食器も足りなかったから、買っておいたの。」
「そんなお金何処に…」
まさかっっ!!
私は作業部屋へ急いだ。
バンッ
「…嘘でしょ」
予想通り、作業場に置いてあった物がなくなっていた。
まだ道具はある。でも、革は全部ない。アイクが履くんだし、物凄く高級な物よ。それを…
「革を売ったの…?」
「ああ、お金が無かったから。」
「……ここまでクズだとは思わなかったわ。あれは私の物じゃない。靴を作る為に預かった物よ。」
説明してダージリンさんに新しいものを用意してもらわないと…。折角城を出たのに、情けない。
「借金ばかり作ってないで、ちょっとは働きなさいよっ!」
「偉そうにするんじゃないっ!!」
「は?偉そう?」
「そうだ。私達はお前の親だ。子供が持っている物を管理して使って何が悪い。」
「この前まであった借金はどうやって返したの。また同じ方法でお金を稼げばいいじゃない。」
駄目だ…。何を言ったって通じない。たった1日家にいなかっただけで、こんな事になるだなんて…。3日家を空けたらどうなるの…?
…助けてほしいのはアイクだけじゃない。私だってそうだよ。でも逃げ道なんてない。きっと、結婚して家族を作っても蛭のように離れない。お金が底をつくまで絶対。どこまでもついてくる。私に寄生する親という物体。
お金を使うだけ使って、また借金ができたら逃げる。そしてお金をどこかでかりて、私はまた売られる。そんな未来がまってる気がする。
あの人達にとって、私はいつまでも金になる物、そんな存在。
いつまで続くの…。
…すぐにでも縁を切りたい。
「私は作業部屋で寝泊まりするから、2度と入ってこないで。」
革はないけど、作りかけの靴は3足残ってる。とりあえず、これを完成させて持って行こう。
今度城に行くのは4日後。その間に聞き込みもしないと。
少し遠い所まで行ってみよう。王都は広すぎる。
どうやったら元に戻るのか…。一体何が正解なのかわからない。どうすればいいのか、あの靴だって解ってなかった。正解なんて誰も知らない。
「アイク起きろ」
ドロシーが出ていくとアイザックは大人になった。
「なぁ、どういう仕組みだ?いつまで大人の姿でいられると思う?」
「俺が知るわけないだろう。小さくなってる本人が解らないんだから。」
「まぁ、そうだな。」
そう長くは大人ではいられないはずだ。でなければ、7才の俺は自分に記憶がないのに気が付く。寝てると思ってるから不思議に思ってないんだ。
「ノートン!早速ドロシーに会いに行くぞ!」
「早速すぎるだろ。」
「仕方がないだろ。俺には時間がないんだから。」
俺達はすぐに馬車にドロシーの家へむかった。
着いたのは小さな家だった。
「ここか?」
「そうだ。」
すぐにノックをしようとしたが、俺はその手を止めた。ドロシーの大きな声が聞こえたからだ。
『借金ばかり作ってないで、ちょっとは働きなさいよっ!』
『偉そうにするんじゃないっ!!』
「……」
「……」
ノートンと目が合った。言いたい事は同じだろう。
「ノートン、10分ほどたってから行こう。今行けばドロシーを傷つけてしまう。」
俺達にあんな口論は聞かれたくないはずだ。
「ドロシーを城に引き取っては駄目なのか…?」
「駄目だ。」
「だよな。」
「アイク、あれはドロシーの本当の親じゃない。」
「っそうなのか!?」
「ああ、ドロシーの家系に黒髪はいないらしい。」
「なら何処かで拐われた可能性が高いな。」
「そうなる。」
「はぁ…、ドロシーは可愛いからな。変な虫が付かないうちに城に連れ戻さないと。」
「お前も変な虫の1人だろ。」
ノートン…、なんて嫌な奴だ…。
「10分…そろそろいいか。」
俺達はまたドロシーの家へ向かった。
「…ノートン、今すぐにカーテンを買いに行け。中が透けない物をだ。」
「何だ、急に。」
「窓からドロシーが丸見えだ。」
どうみてもカーテンはついていないし、かわりになるような物は恐らくないはずだ。
「わかった。」
・・・・
コツコツ
ん?
音のする方を見ると、窓の外にアンドリュー様がいた。
「こんにちは。アンドリュー様、もしかしてアイクの事で来てくれたんですか?」
「え、ああ。そうなんだ。どうなったかと思って。」
「陛下が説得してくれました。」
『約束のちゅー』はさせられたけど。
「…ドロシー」
「はい。」
「辛い事があれば、俺に言わないと駄目だぞ。」
「え?」
「あ、その…この街になれてないなら色々大変だろうし、困った時はお互い様だからな。」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ、約束だ。」
「ふふ…」
「何を笑ってるんだ?」
何だか大人になったアイクが言ってるみたいで面白かった。
私を送ってくれたのは別の人。女性の衛兵。
家に近づくにつれて憂鬱になる。
「送って下さってありがとうございました。」
「命令ですので。では、失礼します。」
冷たくて言い残して馬車は帰っていった。
私が下ろしてもらったのは、少し家から離れた場所。城からの馬車に乗ってるのを見られたら、絶対に面倒な事になるしね。
ガチャ
戸を開けて目に入ってきた物。綺麗な食器、テーブルに乗った高級な食材。
「これ、どうしたの…?」
「食べる物もなかったし、食器も足りなかったから、買っておいたの。」
「そんなお金何処に…」
まさかっっ!!
私は作業部屋へ急いだ。
バンッ
「…嘘でしょ」
予想通り、作業場に置いてあった物がなくなっていた。
まだ道具はある。でも、革は全部ない。アイクが履くんだし、物凄く高級な物よ。それを…
「革を売ったの…?」
「ああ、お金が無かったから。」
「……ここまでクズだとは思わなかったわ。あれは私の物じゃない。靴を作る為に預かった物よ。」
説明してダージリンさんに新しいものを用意してもらわないと…。折角城を出たのに、情けない。
「借金ばかり作ってないで、ちょっとは働きなさいよっ!」
「偉そうにするんじゃないっ!!」
「は?偉そう?」
「そうだ。私達はお前の親だ。子供が持っている物を管理して使って何が悪い。」
「この前まであった借金はどうやって返したの。また同じ方法でお金を稼げばいいじゃない。」
駄目だ…。何を言ったって通じない。たった1日家にいなかっただけで、こんな事になるだなんて…。3日家を空けたらどうなるの…?
…助けてほしいのはアイクだけじゃない。私だってそうだよ。でも逃げ道なんてない。きっと、結婚して家族を作っても蛭のように離れない。お金が底をつくまで絶対。どこまでもついてくる。私に寄生する親という物体。
お金を使うだけ使って、また借金ができたら逃げる。そしてお金をどこかでかりて、私はまた売られる。そんな未来がまってる気がする。
あの人達にとって、私はいつまでも金になる物、そんな存在。
いつまで続くの…。
…すぐにでも縁を切りたい。
「私は作業部屋で寝泊まりするから、2度と入ってこないで。」
革はないけど、作りかけの靴は3足残ってる。とりあえず、これを完成させて持って行こう。
今度城に行くのは4日後。その間に聞き込みもしないと。
少し遠い所まで行ってみよう。王都は広すぎる。
どうやったら元に戻るのか…。一体何が正解なのかわからない。どうすればいいのか、あの靴だって解ってなかった。正解なんて誰も知らない。
「アイク起きろ」
ドロシーが出ていくとアイザックは大人になった。
「なぁ、どういう仕組みだ?いつまで大人の姿でいられると思う?」
「俺が知るわけないだろう。小さくなってる本人が解らないんだから。」
「まぁ、そうだな。」
そう長くは大人ではいられないはずだ。でなければ、7才の俺は自分に記憶がないのに気が付く。寝てると思ってるから不思議に思ってないんだ。
「ノートン!早速ドロシーに会いに行くぞ!」
「早速すぎるだろ。」
「仕方がないだろ。俺には時間がないんだから。」
俺達はすぐに馬車にドロシーの家へむかった。
着いたのは小さな家だった。
「ここか?」
「そうだ。」
すぐにノックをしようとしたが、俺はその手を止めた。ドロシーの大きな声が聞こえたからだ。
『借金ばかり作ってないで、ちょっとは働きなさいよっ!』
『偉そうにするんじゃないっ!!』
「……」
「……」
ノートンと目が合った。言いたい事は同じだろう。
「ノートン、10分ほどたってから行こう。今行けばドロシーを傷つけてしまう。」
俺達にあんな口論は聞かれたくないはずだ。
「ドロシーを城に引き取っては駄目なのか…?」
「駄目だ。」
「だよな。」
「アイク、あれはドロシーの本当の親じゃない。」
「っそうなのか!?」
「ああ、ドロシーの家系に黒髪はいないらしい。」
「なら何処かで拐われた可能性が高いな。」
「そうなる。」
「はぁ…、ドロシーは可愛いからな。変な虫が付かないうちに城に連れ戻さないと。」
「お前も変な虫の1人だろ。」
ノートン…、なんて嫌な奴だ…。
「10分…そろそろいいか。」
俺達はまたドロシーの家へ向かった。
「…ノートン、今すぐにカーテンを買いに行け。中が透けない物をだ。」
「何だ、急に。」
「窓からドロシーが丸見えだ。」
どうみてもカーテンはついていないし、かわりになるような物は恐らくないはずだ。
「わかった。」
・・・・
コツコツ
ん?
音のする方を見ると、窓の外にアンドリュー様がいた。
「こんにちは。アンドリュー様、もしかしてアイクの事で来てくれたんですか?」
「え、ああ。そうなんだ。どうなったかと思って。」
「陛下が説得してくれました。」
『約束のちゅー』はさせられたけど。
「…ドロシー」
「はい。」
「辛い事があれば、俺に言わないと駄目だぞ。」
「え?」
「あ、その…この街になれてないなら色々大変だろうし、困った時はお互い様だからな。」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ、約束だ。」
「ふふ…」
「何を笑ってるんだ?」
何だか大人になったアイクが言ってるみたいで面白かった。
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