19 / 57
黒髪2
しおりを挟む
その夜。俺は陛下に呼び出された。
「ノートン、話してくれるか?」
「はい。ドロシーの祖父母、両親ともに黒髪はいないという事です。そこにドロシーのような黒髪の娘が産まれる事はありません。黒髪の家系が全てそうであるなら、ドロシーの両親は別にいるかと思われます。」
「別に…とは、心当たりはあるのか?」
「これは望みの薄い可能性だと理解して聞いて下さい。ドロシーは何処か近隣国の姫君ではないかと…。」
「何故そう思う?」
「ドロシーは子供の頃願っていたそうです。『本当は私はお姫様で、誘拐されてこき使われてる所を王子様が助けてくれる』…と。それを聞いた時に思いました。」
「助けるのがアイクだと?」
「…戯れ言だと思われても仕方がありません。ですが、靴を履いた途端に『ドロシーと結婚する』と言って、家まで知っていました。共にいた私は正直なところ驚きました。家を言い当てる前に、『ドロシーはこの角を曲がってくる』と言い、本当に曲がって来て私にぶつかりました。ちょうど金貸しに追われて捕まりそうになってた時にです。」
「……」
「子供に戻る事だけでも信じられない事です。ただ、信じられない事は起こりうるのではないかと…。ドロシーが姫なら、アイザック様は助ける王子です。王太子になる前の、7才の王子。」
「1度調べてみよう。近隣に遣いをやる。」
次の日
「アイク、お話聞いてくれる?」
「いやだ。」
「どうして?」
「おしえない。」
私が『出ていく』って言うのを聞きたくないんだ。
「アイク、私は街で靴を作るお仕事がしたいの。」
「だめだぞ。夫婦は一緒にくらすんだ。」
「でもそれくらい出来ないと、王子様とは結婚は出来ないよ。結婚したいから街に行くんだよ。」
「…いやだ。だめだ!」
…抱きついて離れなくなっちゃった。
「坊っちゃん。本当なら結婚するまで城では暮らせないんですよ。」
「父上には何も言われなかった!」
「アイクの靴を作って届けるから会えないわけじゃないし、会いたい時はノートンと会いに来てね。」
「いやだっ!母上だっていない。父上はお仕事だから沢山会えない!ドロシーがいたら寂しくない!!これからずっとずっと一緒にくらすんだ!けっこんして2人で幸せになるんだっ!!」
アイク…、やっぱりお母さんがいなくて寂しかったんだ。さすがにそれを聞くと、ノートンも何も言えなくなるよね。
「アイク、我が儘を言ってはいけない。ドロシーにもやりたい事があるんだから。」
私とアイクが話している所に、国王様が来てそう言った。
「父上…」
「こうしよう。ドロシーは週に3回は城で泊まって、後は靴屋をする。」
「……」
「会いたい時は会いに行けばいい。」
「…お勉強があるから会えない。」
どうしたらいいかな…。私が何を言っても聞いてくれなさそうだし。
「アイクの8才の誕生日までだ。それくらいなら我慢できるだろう?」
「……」
「アイク、8才になったら結婚に近づくんだよ。私が靴屋をすれば更に近付くの。週3日だったら駄目かな?」
「…じゃあ…『やくそくのちゅー』をしてくれたら、がまんする。」
…ここで、約束のちゅーって。
「私からするの?」
「そうだぞ。1度もしてもらってないぞ。」
国王様の前でするのは何だか気が引ける。この場合は国王じゃなくて、アイクのお父様の前なのが辛い。
私はほっぺにチュっとしてみた。
「む、お口じゃないぞ。」
「女の子からはほっぺでいいの。ね、ノートン。」
「え?…ああ。そうだな。」
ノートンもいきなりこんな話をふられても困るよね。
「…そうなのですか?父上?」
「そうだよ。」
「んー、父上が言うなら。」
王様が笑いそうになってる!!
ノートンも同じような反応だったわ。20才のアイクを知ってると、こういう反応になるの…?
こんなに素直でいい子が、どんな20才になったのかな…。
「じゃあ、また来るね。」
「ああっ!!ドロシー、待ってくれ!」
ここでドロシーに帰られると、アイクが大人になれない!
「アイザック様がお昼寝するのを見てから送っていく。」
「む、俺も送っていくぞ!」
「駄目です。ドロシーがいなくなってからあまり寝ていなかったので寝てください。ドロシーもそうした方がいいと思うだろ?」
「…え?私はどちらでも。」
ノートンが必死だわ。何かあるのかしら。
「じゃあ、一緒にお昼寝だな!」
「うん、そうだね。」
嬉しそうなアイクを見ると私も嬉しくなるし、よけいに苦しくなる。
沢山靴を作って、好きだった人も探さないと。靴がアイクを選んだなら、それが何故なのか知りたいけど…もう喋ってはくれないよね。
アイクの誕生日までには、あの人達を何とか仕事につかせて家に帰ってもらわないと!
「ノートン、話してくれるか?」
「はい。ドロシーの祖父母、両親ともに黒髪はいないという事です。そこにドロシーのような黒髪の娘が産まれる事はありません。黒髪の家系が全てそうであるなら、ドロシーの両親は別にいるかと思われます。」
「別に…とは、心当たりはあるのか?」
「これは望みの薄い可能性だと理解して聞いて下さい。ドロシーは何処か近隣国の姫君ではないかと…。」
「何故そう思う?」
「ドロシーは子供の頃願っていたそうです。『本当は私はお姫様で、誘拐されてこき使われてる所を王子様が助けてくれる』…と。それを聞いた時に思いました。」
「助けるのがアイクだと?」
「…戯れ言だと思われても仕方がありません。ですが、靴を履いた途端に『ドロシーと結婚する』と言って、家まで知っていました。共にいた私は正直なところ驚きました。家を言い当てる前に、『ドロシーはこの角を曲がってくる』と言い、本当に曲がって来て私にぶつかりました。ちょうど金貸しに追われて捕まりそうになってた時にです。」
「……」
「子供に戻る事だけでも信じられない事です。ただ、信じられない事は起こりうるのではないかと…。ドロシーが姫なら、アイザック様は助ける王子です。王太子になる前の、7才の王子。」
「1度調べてみよう。近隣に遣いをやる。」
次の日
「アイク、お話聞いてくれる?」
「いやだ。」
「どうして?」
「おしえない。」
私が『出ていく』って言うのを聞きたくないんだ。
「アイク、私は街で靴を作るお仕事がしたいの。」
「だめだぞ。夫婦は一緒にくらすんだ。」
「でもそれくらい出来ないと、王子様とは結婚は出来ないよ。結婚したいから街に行くんだよ。」
「…いやだ。だめだ!」
…抱きついて離れなくなっちゃった。
「坊っちゃん。本当なら結婚するまで城では暮らせないんですよ。」
「父上には何も言われなかった!」
「アイクの靴を作って届けるから会えないわけじゃないし、会いたい時はノートンと会いに来てね。」
「いやだっ!母上だっていない。父上はお仕事だから沢山会えない!ドロシーがいたら寂しくない!!これからずっとずっと一緒にくらすんだ!けっこんして2人で幸せになるんだっ!!」
アイク…、やっぱりお母さんがいなくて寂しかったんだ。さすがにそれを聞くと、ノートンも何も言えなくなるよね。
「アイク、我が儘を言ってはいけない。ドロシーにもやりたい事があるんだから。」
私とアイクが話している所に、国王様が来てそう言った。
「父上…」
「こうしよう。ドロシーは週に3回は城で泊まって、後は靴屋をする。」
「……」
「会いたい時は会いに行けばいい。」
「…お勉強があるから会えない。」
どうしたらいいかな…。私が何を言っても聞いてくれなさそうだし。
「アイクの8才の誕生日までだ。それくらいなら我慢できるだろう?」
「……」
「アイク、8才になったら結婚に近づくんだよ。私が靴屋をすれば更に近付くの。週3日だったら駄目かな?」
「…じゃあ…『やくそくのちゅー』をしてくれたら、がまんする。」
…ここで、約束のちゅーって。
「私からするの?」
「そうだぞ。1度もしてもらってないぞ。」
国王様の前でするのは何だか気が引ける。この場合は国王じゃなくて、アイクのお父様の前なのが辛い。
私はほっぺにチュっとしてみた。
「む、お口じゃないぞ。」
「女の子からはほっぺでいいの。ね、ノートン。」
「え?…ああ。そうだな。」
ノートンもいきなりこんな話をふられても困るよね。
「…そうなのですか?父上?」
「そうだよ。」
「んー、父上が言うなら。」
王様が笑いそうになってる!!
ノートンも同じような反応だったわ。20才のアイクを知ってると、こういう反応になるの…?
こんなに素直でいい子が、どんな20才になったのかな…。
「じゃあ、また来るね。」
「ああっ!!ドロシー、待ってくれ!」
ここでドロシーに帰られると、アイクが大人になれない!
「アイザック様がお昼寝するのを見てから送っていく。」
「む、俺も送っていくぞ!」
「駄目です。ドロシーがいなくなってからあまり寝ていなかったので寝てください。ドロシーもそうした方がいいと思うだろ?」
「…え?私はどちらでも。」
ノートンが必死だわ。何かあるのかしら。
「じゃあ、一緒にお昼寝だな!」
「うん、そうだね。」
嬉しそうなアイクを見ると私も嬉しくなるし、よけいに苦しくなる。
沢山靴を作って、好きだった人も探さないと。靴がアイクを選んだなら、それが何故なのか知りたいけど…もう喋ってはくれないよね。
アイクの誕生日までには、あの人達を何とか仕事につかせて家に帰ってもらわないと!
1
お気に入りに追加
549
あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

結婚が決まったそうです
ざっく
恋愛
お茶会で、「結婚が決まったそうですわね」と話しかけられて、全く身に覚えがないながらに、にっこりと笑ってごまかした。
文句を言うために父に会いに行った先で、婚約者……?な人に会う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる