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7才と20才
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「それは解っています。自分も元に戻れるように努力します。そして俺が完全に20才に戻れば、ドロシーとの結婚を許していただけますか?」
「…ドロシーの気持ち次第だ。王太子という身分を使って自分勝手に結婚する事は、父親としても国王としても許さん。」
「そんな事は解っています。必ず彼女の気持ちを俺に向かせてみせます。」
「…よくそこまで強気で言えるな。」
「強気でいかないと、手に入らないでしょう。ドロシーは。」
「まぁ、そうだな。」
「ドロシーの前で大人になれない…と言いましたが、別人に扮せば会えるんです。」
「どういう事だ。」
「俺をアイクの影のアンドリューだと言えば、ドロシーは大人の俺と会えるんです。」
「アイク本人と認識されなければいい…という事か?」
「はい、なのでこの城で俺を見つけてもアンドリューという男なのだと、使用人に周知してもらいたいのです。」
「で、アンドリューがドロシーに好かれる…と。」
「そういう事になります…。」
「まぁいい。どんなに身分の高い女より、王太子の為に努力する子であれば妃には相応しい。」
息子はドロシーの為なら何でもやりそうだし、いい加減な性格も正せるかもしれないな…。
「しかし彼女は何があっても首を縦には振らないだろう」
「何故ですか?」
「彼女には借金があった。それも高額の。抱えた負債を彼女1人に押し付けて、両親は逃げた。何かあれば親が金を借りに来るだろう…おそらくそう思って、誰かに頼ろうとはしない。」
「そんな事は関係ない!」
「関係ないと思うのはまわりだけで、本人からすれば絶ちきれない柵だ。自分が頑張ってなんとかなるのならいい。万が一何かあっても、仕事であれば捨てていける。だが、自分が家族を作ってしまってはそうはいかない。相手に迷惑をかける。結婚をしたい、そういう気持ちを今は抱いていたとしても、最終的にはそうなる。そこを何とかする事が出来るなら、ドロシーと結婚できる。」
「……」
「人の心を動かす事ほど難しい事はない。出来る自信があるのならやればいい。」
「当然です。彼女は運命の相手ですから。7才の俺が20才の俺に連れてきてくれた人。では、城での対応の統一をよろしくおねがいします。失礼します。」
運命、息子の口からそんな言葉が出てくるとは。
・・・・
「ドロシー、今日は豆のスープがでるらしい。分けてあげてもいいぞ!」
「好き嫌いしないの。」
「おいしいからあげるんだ。」
「だったら、私の分をアイクにあげようか。」
「…夫は妻の分のご飯をたべたりしないんだ。」
ドロシーを見ていると妻を何となく思い出す。母親に似た女性をつれてくるあたり、アイクは俺に好みが似てるという事か。
「おはよう、ドロシー。」
「おはようございます。アンドリュー様。」
朝の5時。アイクが起きる前に靴を作っていると、作業部屋にアンドリュー様が入ってきた。
「今日は街に行かないのか?」
「ええ、靴を作る日なので。」
「そうか、なら見ててもいいか?」
「構いませんが、面白いものではありませんよ。」
「いいんだ。」
物凄くニコニコしてるわ。7才のアイクのニコニコ顔は成長するとこうなるのね。
アンドリュー…この人って、私にいきなりプロポーズしてきた人だよね。それを考えると、あまり一緒にいたくないかも。
また『結婚してくれ』とか言われると面倒だしね。
「アンドリュー様、アイザック様は何色の靴を好んで履いていたか、わかりますか?よく着ていた服とか。」
同じ物を持っているはずよね。
「もし靴のサイズが同じであれば、測らせてもらえませんか?」
「ああ、勿論だ。」
「ありがとうございます。」
何だかいい人そうだよね。本物の方は『性格が良くない』ってノートンが言ってたけど。
「アンドリュー様、アイザック様はどんな人なのでしょうか。」
「興味があるのか?」
「興味…というか、魔術の靴を履くような性格の人なのか。子供に戻りたいとか、子供に戻る靴を履こうとした訳がわかればいいんですが、何かしりませんか?」
「俺も、わからない。」
「そうですか…。」
一体、何をヒントにすればいいのか解らない。靴が私を連れて来た事に意味があるとすれば、それはなんなのかな。
「ドロシー」
「はい。」
「これ、あげる。」
アンドリューの手には、コロコロとチョコが2つ。
「私に?」
「疲れてるだろ。」
「ありがとうございます。」
凄い高そうだけど、食べていいんだよね。
「無理しないで、休憩も必要だから。体調管理もしないと。」
「たいちょうかんり」
アイクも言っていたわ。
「書物を読んでいたら、『好きな女性と口づけする』というのも有効じゃないかって。本当に好きな人やお付き合いしていた人を知りませんか?」
私の靴で駄目だったなら、それを試したい。
「好きな女性は、ドロシーだと思うが。」
「違うのよ。お早うもお休みのチューをしても戻らないわ。7才のアイクは『未来の記憶なんてない』って。なので、大人のアイクがよく分からないんです。」
「俺とそう変わらないよ。」
コンコン
「はい」
「ダージリンです。」
「どうぞ。」
私が戸を開けると、アンドリューをチラっと見てから私に言った。
「ドロシー様、ご両親が会いに来ております。」
「……」
最悪だわ。
「…ドロシーの気持ち次第だ。王太子という身分を使って自分勝手に結婚する事は、父親としても国王としても許さん。」
「そんな事は解っています。必ず彼女の気持ちを俺に向かせてみせます。」
「…よくそこまで強気で言えるな。」
「強気でいかないと、手に入らないでしょう。ドロシーは。」
「まぁ、そうだな。」
「ドロシーの前で大人になれない…と言いましたが、別人に扮せば会えるんです。」
「どういう事だ。」
「俺をアイクの影のアンドリューだと言えば、ドロシーは大人の俺と会えるんです。」
「アイク本人と認識されなければいい…という事か?」
「はい、なのでこの城で俺を見つけてもアンドリューという男なのだと、使用人に周知してもらいたいのです。」
「で、アンドリューがドロシーに好かれる…と。」
「そういう事になります…。」
「まぁいい。どんなに身分の高い女より、王太子の為に努力する子であれば妃には相応しい。」
息子はドロシーの為なら何でもやりそうだし、いい加減な性格も正せるかもしれないな…。
「しかし彼女は何があっても首を縦には振らないだろう」
「何故ですか?」
「彼女には借金があった。それも高額の。抱えた負債を彼女1人に押し付けて、両親は逃げた。何かあれば親が金を借りに来るだろう…おそらくそう思って、誰かに頼ろうとはしない。」
「そんな事は関係ない!」
「関係ないと思うのはまわりだけで、本人からすれば絶ちきれない柵だ。自分が頑張ってなんとかなるのならいい。万が一何かあっても、仕事であれば捨てていける。だが、自分が家族を作ってしまってはそうはいかない。相手に迷惑をかける。結婚をしたい、そういう気持ちを今は抱いていたとしても、最終的にはそうなる。そこを何とかする事が出来るなら、ドロシーと結婚できる。」
「……」
「人の心を動かす事ほど難しい事はない。出来る自信があるのならやればいい。」
「当然です。彼女は運命の相手ですから。7才の俺が20才の俺に連れてきてくれた人。では、城での対応の統一をよろしくおねがいします。失礼します。」
運命、息子の口からそんな言葉が出てくるとは。
・・・・
「ドロシー、今日は豆のスープがでるらしい。分けてあげてもいいぞ!」
「好き嫌いしないの。」
「おいしいからあげるんだ。」
「だったら、私の分をアイクにあげようか。」
「…夫は妻の分のご飯をたべたりしないんだ。」
ドロシーを見ていると妻を何となく思い出す。母親に似た女性をつれてくるあたり、アイクは俺に好みが似てるという事か。
「おはよう、ドロシー。」
「おはようございます。アンドリュー様。」
朝の5時。アイクが起きる前に靴を作っていると、作業部屋にアンドリュー様が入ってきた。
「今日は街に行かないのか?」
「ええ、靴を作る日なので。」
「そうか、なら見ててもいいか?」
「構いませんが、面白いものではありませんよ。」
「いいんだ。」
物凄くニコニコしてるわ。7才のアイクのニコニコ顔は成長するとこうなるのね。
アンドリュー…この人って、私にいきなりプロポーズしてきた人だよね。それを考えると、あまり一緒にいたくないかも。
また『結婚してくれ』とか言われると面倒だしね。
「アンドリュー様、アイザック様は何色の靴を好んで履いていたか、わかりますか?よく着ていた服とか。」
同じ物を持っているはずよね。
「もし靴のサイズが同じであれば、測らせてもらえませんか?」
「ああ、勿論だ。」
「ありがとうございます。」
何だかいい人そうだよね。本物の方は『性格が良くない』ってノートンが言ってたけど。
「アンドリュー様、アイザック様はどんな人なのでしょうか。」
「興味があるのか?」
「興味…というか、魔術の靴を履くような性格の人なのか。子供に戻りたいとか、子供に戻る靴を履こうとした訳がわかればいいんですが、何かしりませんか?」
「俺も、わからない。」
「そうですか…。」
一体、何をヒントにすればいいのか解らない。靴が私を連れて来た事に意味があるとすれば、それはなんなのかな。
「ドロシー」
「はい。」
「これ、あげる。」
アンドリューの手には、コロコロとチョコが2つ。
「私に?」
「疲れてるだろ。」
「ありがとうございます。」
凄い高そうだけど、食べていいんだよね。
「無理しないで、休憩も必要だから。体調管理もしないと。」
「たいちょうかんり」
アイクも言っていたわ。
「書物を読んでいたら、『好きな女性と口づけする』というのも有効じゃないかって。本当に好きな人やお付き合いしていた人を知りませんか?」
私の靴で駄目だったなら、それを試したい。
「好きな女性は、ドロシーだと思うが。」
「違うのよ。お早うもお休みのチューをしても戻らないわ。7才のアイクは『未来の記憶なんてない』って。なので、大人のアイクがよく分からないんです。」
「俺とそう変わらないよ。」
コンコン
「はい」
「ダージリンです。」
「どうぞ。」
私が戸を開けると、アンドリューをチラっと見てから私に言った。
「ドロシー様、ご両親が会いに来ております。」
「……」
最悪だわ。
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