いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん

文字の大きさ
上 下
12 / 57

偶然をめざせ

しおりを挟む
「……ん~」
「アイク、眠いの?」

いつも元気に私を起こすのに、今日は起きない。もしかして昨日の夜、私を探しにきたからかな…。
「辛かったら寝てていいよ。」
「ん~」
「どうしたの?」
私にキュっ抱きついて離そうとしない。

「ダージリンさん。私はアイクといますので、食事はまた後でにします。」
「かしこまりました。では、そのようにお伝えいたします。」
「お願いします。」

ダージリンさんが部屋を出たときには、アイクは私にしがみついたまま寝ていた。

どうしたのかな…。怖い何か夢でも見てるのかな。

「ノートン、『変な男』って誰だと思う?」

「変な男?何の脈絡もなく言われてもわからん。」

「『ドロシーが変な男にとられる』って言ってたじゃない。その男が誰だか心当たりない?」

「…ないな。」

「そう。」
私はそのままアイクと一緒にベッドに入った。やっぱり母親が恋しいのかもね。20才じゃなく7才なんだし。
私も眠いし、寝よう。

2人が寝息をたてているのを見てノートンは思った。

今アイクを起こすとどうなるんだ?

やってみる価値はありそうだな。

「アイク」
小さな声で呼んで、ツンツンと顔をつついてみた。
ドロシーは眠りが深い。何かあってもなかなか起きないとメイドは言っていた。

「アイク……嘘だろ…」
「……ノートン、奇跡が起きているぞ。」
起きたアイクは20才の姿だ。
「どんな仕組みだ。簡単すぎるだろ。」
「…何でもいい。」

…抱き締めてもいいよな。駄目だ、目を覚ましてしまったら変態扱いされる。…目を覚ましても俺は子供に戻らないのか、試してみるのも悪くはないな。

「ドロシー…」
「……」
「ドロシーーっ」
「ん~…」
「起きなぞ、ノートン。おはようのチューとやらをすれば起きるか?」
「変態だと言って、出ていくぞ。」
「毎日2回はしてるんだから、いいだろ。」
「それは子供だから許されるんだ。今しようとすれば俺は止めるぞ。相手は18才なんだから、男に寝ている間に口付けされたなんて知ったら泣くぞ。」
「俺は7才の子供ではなく、20才の男としてドロシーに会いたいんだ。」
「仕方がないだろ。そもそも子供にならなければドロシーはアイクと会うことはなかったんだから。」
「…それはやっぱり運命じゃないか?」
「…おまえ」
「そうは言うけど、子供になるなんてありえない。だが子供の俺が『ドロシーと結婚する』と城に連れてきて、大人の俺がドロシーを好きになる。奇跡だぞ…。」
「お前のそのポジティブさが奇跡だ。」


「ノートン、まずい眠くなってきた…。駄目だ…耐えられない。」
アイクは眠ると一瞬で子供にもどった。そしてドロシーが目をさました。
「…ノートン、私の事を呼んだ?」
「いや、俺は呼んでない。」
「そうなの?何だかな耳もとで『ドロシー』って声が聞こえたわ。」
「アイクだろ。」
子供の声じゃなかった気がするんだけど…。ノートンと話しているとアイクがパチっと目を覚ました。
「ドロシー!」
「アイク、もう大丈夫?」
「ふむ。もう元気だ。…明日から一緒に寝る事にする!」
「結婚してないから別々って言ってたのに?」
「今ドロシーがオレのベッドに入ってきてるんだから、ドロシーはオレと一緒に寝たいと思ってるんだぞ。」
「…ふふ、そうだね。」
アイク可愛い。お母さんに甘える子供ってこんななのかな。

「アイクは陛下ににて、髪が綺麗な金髪だね。」
「ドロシーは黒くて可愛いぞ。母上も黒い髪だったらしい。絵で見た…。」
「そう。」
王妃様を見たことないんだもん、さみしいよね。
「将来、子供は黒髪の女の子がいいな。」
「…こども?」
「結婚する前に子供がいたら駄目なんてきまりはないぞ。」
「…アイクは…どうすれば子供が出来るのか…知ってるの?」
「ん?教えられるからな。」
「……」
王子様の教育って、この年でそんな事までするの?まぁ、何才で学ぶのか…なんて、決まりはないけど。
…20才のアイクは、好きな人との子供が欲しいと思っていたのかもしれないよね。
アイクの夢を叶えるためにも早く大人になるように、頑張らないと!


子供がほしい……。アイク…大人になって同じ事を言い出すんじゃないだろうな…。

確かめなければ…と思うノートンだった。



靴は作ってみたけど、もどるかな…。出来るだけ素材も形も『魔術の靴』に寄せてみたんだけど。
この靴作った人ってすごいわ…。凄く難しかったもの。
靴を作った人が魔術をかけたわけではないと思う。…ってなると、結局靴を作ってもムダなの?

「アイク、靴を作ったから履いてみてくれる?」
「おお!ドロシーからのプレゼントか!」

ニコニコして靴を履くアイクに変わった様子はない…。

「何か変わった事はない?」
「ん?何が変わるんだ?」
「ううん、嬉しいかな、と思って。」
「嬉しいぞ。」

やっぱりダメだった…。
アイクの顔を見てるのが辛くなってくる。この靴じゃダメだった…。諦めたらダメよ!後何百足だって作ってみせる。

次はアイクの好きな人探しよ!靴は夜中でもつくれるんだから!

アイクのお昼寝の時間に、私はこっそり部屋をでた。


「アイザック様と仲のよかった方をご存じありませんか?」

仲のいい人なら、アイクの好きな人を知ってるかもしれない。

「仲のいい…、ノートン様くらいじゃないかしら。」

ノートン…誰に聞いても同じだわ。彼が知らないのに、誰が知ってるっていうの。
可愛いふわふわのワンピースや、綺麗なブラウスにスカート…。この街では女性がズボンをはく事はあまりないのね。

こんな可愛い子達の中から1人を見つけ出すなんて…。

・・・・

「ノートン、ドロシーはどこだ?」

目を覚ますとドロシーはいなかった。

「知らん。街に行ったんじゃないか。たまには遊びたいだろうし。」
「ドロシーを1人で外出させたのか?」
「彼女は靴職人なだけで、護衛する対象じゃないからな。」
「俺の婚約者だという時点で護衛対象だろ。早く助けにいくぞ!!」
「助けにって…」
俺達は急いで街におりた。

「どこにいるのか見当はつかないか?」
「わかるわけないだろ、俺に。」

約に立たない護衛だ…。

「…俺の役目はドロシーを見つけることじゃないからな。言っておくが。」
「そんな事はわかっていても、お前しか頼れる奴がいないんだから仕方ないだろ。」
「はぁ…、その辺りのカフェにでもいるんじゃないか?」
ノートンめ、適当だな…。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...