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オレは王子様だから
しおりを挟む「ドロシー!ご飯だ!!」
「ん…、後で食べる……、もう少し寝かせて」
「だめだ!オレはドロシーと食べるんだ!」
出た…、我が儘……。
昨日は魔術をとく靴を調べて寝不足なのよ。
「ドロシー様、こちらへ。」
アイクと同じ部屋であっても、着替えは見えないように仕切りのカーテンがある。
「…これ着るんですか?」
ヒラヒラのレースやリボンがついたワンピース。この服で靴を作るの…無理よね。まぁ、朝ごはんの時だけ着ておけばいいわ。すぐに靴を作って、20才にもどってもらわないと、アイクが死んじゃう。
「アイク、行こうか。」
「……」
すぐにでも朝食を食べたい感じだったのに、何かあったのかな?
「…迷子にならないように、手をつないてやる!」
「……」
顔が真っ赤だわ。
この子、可愛い。みんながほのぼの見てるのが解る気がするわ。でも、まわりから見ていれば…の話よ。
振り回されてる私は疲れるの。
手を繋いで歩いている私達の後ろに、『失礼な男ノートン』が付いてくる。
アイクといると必然的にこの男と一緒にいる事になるのね…。
「ドロシーっ!こっちだっ!!」
アイクにグイグイ引っ張られて到着したのは、沢山の料理が机に並んだ大きな部屋。
「……」
「何でも好きな物を食べていいぞ!いっぱい用意させたからな!」
いっぱいすぎるわよ…。
「ドロシー、大変だろうが付き合ってやってくれ。」
「はい…」
王様も一緒に食べるの?私…マナーとか知らないんだけど…。
「ドロシー、残さず食べるんだぞ!自分で言ってたんだからな。」
確かに私はそう言ったけど、それは嫌いな物を残さず食べなさい…って事よ。
アイクはカタカタと椅子を引きずってきて、私の横にピッタリとくっつける。これはどうしてなのかわからないけど、会った日から食事の時は絶対こんな風にするんだよね。
「ドロシー、これが食べたい。」
「自分でとりなさい。」
「嫌だ。」
「嫌だじゃないの、それくらい自分でするようにしなさい。」
「オレは王子だから自分でしないんだ。」
「私は庶民なので、自分のものは自分でとるし、アイクのは取らない。」
「む~、仕方ない。夫は妻に優しくしないといけないから、ドロシーのもオレがとる。」
取ってくれたもの…バナナとリンゴ…。美味しいけどね…。
もうちょっと考えようよ。
バナナとリンゴ以外にもパンとサラダを食べたけど、初めて食べたわ…こんな柔らかい白いパン。
「ごちそうさまでした。ほら、アイクも言いなさい。」
「ごちそう」
「さまでした。でしょう。」
「オレは王子だから、そんなの言わない。」
「…私はそんな事も言えない人と結婚しないわ。」
「…さまでした。」
「良くできました。」
「オレはドロシーの夫だからな。これくらい簡単だ。」
「ふふ、そうだね。」
私が魔術をとかないと、この可愛い子が後7年しか生きられないなんて…。そんなの絶対ダメっ!
さて!早速靴をつくるわ!用意を…
「ドロシー、街へ行くぞ!」
…絶対言うと思ったわ。
「アイザック様、今日は1日お勉強です。20日さぼった分は、お勉強の量が増えます。ドロシー様、失礼致します。」
「あ、こらっ!はなせっ!」
髭眼鏡さんとノートンがアイクを無理やり連れていった。
よかった…。あまり時間をとられちゃうと困るんだよね。
部屋に戻って、すぐに資料を読んだ。
『魔術道具は7つ、子供に戻ってしまう靴はその中の1つで最も危険なもの。』
この一文が気になるんだよね…。『誰も履いた事がない』って、子供になる靴が自分で言っていたわ。なのに、7つ道具の中で何故最も危険だと言い切れるの?
それって履いた事がある人が本当はいて、私は靴に嘘をつかれてる、もしかしたら靴を作った本人が言ったとか…。作った人はもう亡くなってるだろうし、靴はもう話はしてくれないよね。
アイクはどれくらい前から7才になったのかな…。私の所にくる往復は少なくても20日、その前から夢を見て私を好きだと言っていたなら1ヶ月くらい前?
もっと詳しく教えてもらわないと元に戻すなんて無理だわ。
コンコン
「ダージリン」でございます。
髭眼鏡さんだわ。
「どうぞ」
「ドロシー様、陛下がおよびです。」
「陛下から…」
これは、詳しく聞けるチャンス!
初めて会った時とは違う、こじんまりした部屋にソファーで対面で話をするだなんて、庶民には耐えられない!けど聞かないとっ!
「アイク…アイザック王子はどのくらい前から子供になったのでしょうか?」
「半年ほど前だ…」
半年も前なの…
「私達も何がなんだか…。本当にアイクなのかもわからない…、ダージリンの事を『急におじいさんになった』とか、城の中を迷わずに歩く。子供の時好きだった本、他にも色々、アイクだとしか思えない事をしている。そうなると考えられるのが『子供にもどる靴』だった。子供になった日から、何故か君を好きだと言ってた。」
「何故、靴を履いたのですか?」
「わからん。息子の事をこんな風に言うのも酷いとは思うが、我が儘で問題ばかり起こす、本当に愚かな息子だ。今の状態のほうが城はのんびりしていて、皆も働きやすいようだ。」
「……」
どんなに酷い事をする息子でも、子供が死ぬなんて、父親には耐えらるはずない。
「王妃様は…」
「…アイクを産んだ時に。」
「申し訳ありません。立ち入った質問をしてしまいました…。」
「いや、いいんだ。それに、アイクは君を女の人として好きだというよりも、母親のように思ってるかもしれない。」
そういって、私に1枚の姿絵を見せてくれた。そっくりではないけど、特徴は似ている。
「君を見た時にそう思った。」
「私に甘えたいんですね。」
「ああ。母親がいなくて寂しかったアイクが楽しそうに『けっこん』なんて言ってるのが可愛くてね。けれど、7才の王子ではなく20才の王太子、このまま放っておく訳にも…だから、君を無理やり連れてきてしまった。申し訳ない。」
「そんな、借金もなくなりましたし!気になさらないで下さい!必ず20才にもどしてみせます!!」
「ふふ、ありがとう。君は性格も妻に似てる。」
借金取りから逃げ回ってた私に似てる…どんな方だったんだろう…。
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