いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん

文字の大きさ
上 下
5 / 57

20才の記憶

しおりを挟む
「アイクは20才だった時の事は憶えてる?」
「…?オレは7才だ、未来の記憶なんてないぞ?」
「そうなんだ…」

本当に7才に戻ってるんだ…。我が儘過ぎでしょ。

「今日はもう遅いから寝るぞ。」
遅いって…まだ20時…。子供時間に付き合うの?
「……どろしー」
「はい。」
何だかもじもじしてるけど…
「どうしたの?」
「おっ、おやすみのちゅーだ!」

私にチュッと小鳥みたい口づけして、勢いよくシーツにもぐってしまった。

…私の初めての口づけは、『おやすみのちゅー』で終わってしまった…。

我が儘で生意気だけど、何だか一生懸命で可愛い子だわ。

10分くらいするとアイクの寝息が聞こえてきた。シーツをアイクの顔までずらしてから、私は部屋を出た。

「あ…」

そこには私の宿敵『ノートン』がいた。
この男さえいなければ……。

「はぁ…アイクが『ドロシーは可愛い』って言うから、どんな女かと思ったが、普通…」

ふつー?
普通…私の見ため?
うん、それは認めよう。
身長158cm、黒の髪で茶色の目。細くも太くもない。スタイルも特に良くない、胸なんか特に。そして美人でもない。

けれどそんな事を言われる筋合いはない!

「そんな貴方は普通以下ね。」

面倒だから部屋に戻ろ。少しくらいの音で目覚める子じゃないしね。

「ちょっと待て…」
「いやよ。」

部屋に入ろうとすると、腕をグイっとつかまれた。

「っ!?」
「俺はアイクの護衛だ。何かあったら殺す。」
「…殺すならあの子でしょ。私は口づけされたのよ。『おやすみのちゅー』よ。20才なら大問題だわ。」
「まだ7才のガキのする事だろ。」
「そうね。貴方が彼を護れなかったから、靴を履いちゃったんだしね。私に偉そうにしないで。いつでも追い出してくれていいわよ。私は家に帰りたいんだしね。」

言い返す事が出来ないよね。私を連れつきたのは王子で、私を留めてるのは王様なんだから。

「では、失礼します。」

今度こそ私は部屋にはいった。

スヤスヤ眠る男の子。

何で呪いの7つ道具のような靴を履いたの…。姿絵を見せられたけど、本当にあれはこの子なの?私の夢を見たからって住んでる家までわからないよね?

魔法をとく方法、きっと靴を作る事。靴職人の私につくれと…。靴は作るけれど、そんな馬鹿みたいな魔術とか出来ないわ。
ここは絵本の中じゃないんだから…。

「魔術だなんて本当に馬鹿みたいな話ね」
「そう、馬鹿みたいな話だ」
「…っ!?」


何?部屋にアイク以外誰もいないよね?そばにあるのは靴だけ。もしかして、この靴が魔術の靴?これが話してるの?

「靴職人のドロシー」
「…何かしら」
「怖がらないとは、さすがだな」
「さすがも何も、靴が喋ってるだけじゃない。くだらない。」
「そのくだらない靴に、アイザックは殺されるんだ。」
「…?ただ子供になっただけじゃない。」
「このまま小さくなり続ける。」
「…どういう事?」

王様はそんな事一言も言ってなかったのに…。

「7才から始まってる。今のアイザックがそうだ。今から6,5…と小さくなって、やがて死ぬ。」
「…っ!?」
「これはドロシー、お前にだけ言っておく。他言すればアイザックはその場で死ぬ。」
「ふざけないでよ…魔術だか何だかしらないけど、人を殺せるはずないじゃない。」

あまり大きな声は出せない。もしアイクが起きてしまったら、この会話を聞かれる。そうなれば死ぬかもしれない。

「子供になった、それで信じられないか?」
「……」

13年で20才になる…そう思ってるのはまわりだけで、あと7年しかないってこと?…7年で0才、その時はまだ生きてるの?
簡単に考え過ぎてた…。お金の問題じゃない!アイクの命がかかってる!

「靴を作れば何とかなるの…?」
「その為にお前を呼んだ。アイザックの夢でな。」

それも魔術の1つだったのね…。20才のアイクには好きだった子がいたかもしれないのよ。何だか腹が立ってきたわ。

「どんな靴を作ればいいわけ?」
「それは解らない」
「は?自分の事が解らないの?」
「履く馬鹿が今までいなかったからな。」
「………」
「別にアイザックを殺したくない訳でも、殺したい訳でもない。どうすれば元に戻るのか、興味があるだけだ。7つ道具おれたちで賭けてる。戻るか戻らないか。俺は戻るに賭けた。ドロシー頼んだぞ。」
「ちょっと持って…って……もう喋らないよね。」

賭け事のために靴は喋ったの…?

今の話が本当なら、アイクは死んじゃうんだ…。
ううん、死なせないわ!!
私がここに呼ばれたのは、可能性があるからなのよ!!

「…ん……?なんだ?もう朝なのか?」
「アイクっ!今の話、聞いてた!?」
「話?」

よかった…。聞かれてなかったのね。

「…どろしー…おはようのちゅーだ」
「……」

またしても…
2度目は『おはようのちゅー』

「アイク、まだ夜なの。まだ寝てていいよ。」
「そうなのか?……じゃぁ…ねる…」

アイクは私の手をギュッと握ってすぐに寝た。

20才のアイクがどんな子だったかは知らないけど、この子が死なないように明日から大量に靴を作るわ!!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

処理中です...