いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん

文字の大きさ
上 下
2 / 57

子供と結婚

しおりを挟む
「まだ、地下水は戻ってこないのか?」
 不意に、リーンが訪ねてきて驚く。
「…ええ。何処かにヒビが入って、流れ出ているとしか、思えないわ」
 数年前から、魔女の森の地下水か減ってきている。
 雨が降っても一定以上に水位が上がらない。
 その為、生活用水が激減し、地下に貯水槽を作り、森の外で『水球』を作り出し、持ってきては水を補充している。
 とはいえ、限界があるのだ。
 リーンの『天水球』は水を圧縮させているので、大量の水が入っている為、これが有れば当分、魔女達の生活を守ることが出来る。
「…嫌な感じだな」
「そうなの」
 原因がハッキリとしないから、手の施しようがない。
「だったら、『天水球』をもう少し、置いていく『物質保管庫』」
 リーンが手をかざし、ドーナツ状の魔法陣が現れ、中心の引き出しから、『天水球』を二つ取りだし、手渡され、リーンは背を向けて王子の元に向かった。
 じっとこっちを見ていた王子は、リーンに気が有るのか、親しげに話す私を睨んで、不機嫌そうに、顔を歪めている。
 そんなつもりが無くても、これは面白い…。
 リーンは気付いているのか?
 もし、心を奪われそうになっている王子が、魔女に捕まったらリーンはどうする?
 ソフィアは楽しくなってきて、笑みを浮かべた。 
「どうした?用事は済んだから、帰ろう」
「ああ」
 リーンは王子を促して、ソフィアに背を向け、城の扉に向かった。
「リーン。気付けて帰りなさい。宴が始まるわよ」
 そして、魔女に捕まるのよ…。
「ありがとう。ソフィア」
 何も知らない二人は城の扉を出て行った。


 ソフィアは隣にたたずむ巨大な鏡に触れ、魔女の森を監視する『目』を動かし、映像を写し出した。
 『目』は森だけでなく、魔女の暮らす街全体を見ることが出来き、侵入者を見つけるためにも使われるモノだ。
 リーンと魔女との攻防が映し出され、二人は空中を移動して出入口に向かっている。
 彼女達三人なら、リーンを捕らえられるかもしれない。
 でも、この魔力は『海の魔法石』…?
 王子は封じられたものが解除されていないので、魔法が使えないはず…なのに、使えると言うことは…フールシアに会ったのか?
 だったら、彼女達だけでは、逃げられてしまうかも知れない…。
 ソフィアは立ち上がった。
 王子の足に下からつたが伸びてきて、捕まって、体制が崩れ、落ちそうな王子をリーンが捕まえて、つたを引き離そうとしている。
「もう少しなのに!」
 リーンが『空のやいば』、かまいたちで、つたを切り落とした。
 その瞬間、ソフィアは『瞬足移動』を使い、リーンの背後に移動し、ポンとリーンの背中を押した。
 それに気付いたリーンは振り返り、目を見張る。
 このままだと、逃げられてしまうの。
 逃げられてしまうと、私の楽しみが一つ減ってしまうのよ。
 ソフィアは微笑んだ。
 リーンと同じように、長い時間を生きるソフィアにとって、リーンの喜怒哀楽が、楽しみの一つになっている。
 まだ、誰も見たことの無い、リーンが見てみたい。
 これが、ソフィアが見た、リーンが変化するキッカケのスイッチだった。

 そのまま、バランスを崩した二人は、地上で待ち構える魔女の元に落ちていった。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

処理中です...