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やってしまった
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やってしまった…。
気を付けるようにしてたのに……あってるかどうかもわからない言葉で、必死に話してたのに……!!
このまま図書室に…ううん、このまま女子寮へ帰ろう!!
寮なら男子はこない!!とりあえず今は言い訳を考えよう…。
あっ!!お兄様をあの場に残してきてしまった!絶対あの二人に質問されてるはず。
だって……
『最後の方は破られていて、結末はわからないけど、でもきっとハッピーエンドだって思う!ううん、絶対そう!だって、お姫様は強かったもん!!』
…って、これどう言い訳するの…。侯爵のご令嬢が殿下の前で、この喋り方はないよね。
寮に着いた。
生徒は1人もいないと思っていたのに、共有部屋に寮長のサーシャ・リーベルトさんがいた。今日は授業はないのかな?
「こんにちわ。リーベルト寮長。」
「アルフォート様!?お早いですわね。もしかして体調がすぐれませんか?顔が青いですが。」
「いえ、そうでは無いのですが…少し考え事がありましたので、部屋でゆっくりすれば答えがでるかもしれない…と思ったのです。」
明日の朝までに、きょうの失態の言い訳を。
「そうですか。長い間休学してましたので、まだ本調子では無いのかと心配いたしました。」
「もう大丈夫です。心配してありがとうございます。」
その時、カランカランと鐘がなった。
「誰かしら?この時間に…私は誰が来たのか確認いたします。アルフォート様は念の為お部屋へ。」
今のは誰かが女子寮に訪ねて来た時にならす鐘って事なのかな?寮長が言うように、こんな時間に…だよね。
女生徒ならここに入ってくるのに鐘なんてならさないし、先生だって誰もいない時間だってしってる訳だし。
暫くして寮長が戻ってきた
「アルフォート様」
「はい。」
「お兄様…ニコル・アルフォート様がお見えです。女子寮に通す訳にはまいりませんので、外でお待ち頂いております。」
「お兄様が…!?」
「はい」
「ありがとう。行ってくるわ」
怒られるのを覚悟して!!
ドアをそっとあけると、3メートルほど離れた所に、美しいお姿が見える。
「ニコルお兄様…」
「アイリーン、やっぱり帰ってた。」
「すみません……私…」
「いいよ。気にしてない。大丈夫、2人は何とか言いくるめたから。これからは多少のボロが出ても、何とかなるよ。」
「本当ですかっ!?」
「ああ、でも1度戻ろうか。ここじゃ誰が見てるかわからないからね。」
「誰が見てる…?」
「大丈夫。」
ニコルお兄様が優しく笑ってくれるから、なんだか安心した。
・・・・
「行ってしまいましたね。2人とも」
「……」
「アイリーン様が殿下の前であんな喋り方をするなんて。しかもかなり元気に…。」
「ああ」
「しかし、ニコは…恐いですね。ただ『前と別人みたい』って言っただけですよ?」
「…いや…完璧によまれていた。」
「何をですか?」
「さっきのやりとりだ。」
「…殿下は意識が無くなる前のアイリーン様に何度お会いしたんですか?…まさか本当に1度だけ。ハァ…そうなんですね…。」
バルガスはグレアムの様子を見て、事実なのだとわかった。
「ニコの逆鱗に触れましたね。」
「あの娘が婚約相手に選ばれるとは思っていなかったからな。」
「たしかに、未来の王妃様を皆から嫌われてる女性にするとは思えませんよね。」
「父上は一体何を考えてるのか…」
「でも、これでニコに何を聞いても、言われても、反論も質問も出来なくなりましたよ。」
…さっきニコルに言われた言葉に、俺は反論できなかった。
「最近のアイリーンは、意識を失う3ヶ月前と別人のようだ」
ただそう思っただけで、別に深い意味を込めて言った訳でもなかった。けれどアルフォートはそれを言うのを待っていたようだった。
「殿下、貴方はアイリーンについて何か言う資格を有して無いのでは?」
「何故?婚約者の事を知る資格はないと?」
「ええ、1度しか会った事のない妹の何を知って『昔と違う』と?そのような事を何故言えるのか、私には理解できかねるもので。」
そう言って、アルフォートは出て行った。
『お前が何を思ったとしても、あれがアイリーンだ。口出しするな…』
というところだろう。
雰囲気が違う、性格が違う、そんな事をならべても、会ったのはたった1回きり。
家族の前ではどうだったのか、親しい友人の前では?もしかしたら、今のような感じだったのかもしれない。
『お前に妹の事を言われるだけで、虫酸がはしる。』と、ニコルの目が物語っていた。
産まれた時から理不尽に扱われるアイリーン、それを1番近くで守ってきたのがあの兄だ。
禁書のせいで意識を失っていたとなれば、俺への怒りは尋常じゃないはずだ。
妹が婚約者になった事も、家柄の手前首を縦にふるしかなかっただろうが、アイリーン本人より兄の方が『婚約破棄』をさせたいはずだ。
「今のアイリーン様が別人のよう。そんなに拘る事でもないかと思いますけど。グレアム様も、今くらい元気な方がいいのでは?」
結婚相手としては、その通りだ。
ニコル・アルフォートも、俺がそこに拘りをもつとは思ってないだろう。だが釘を指しにきた。
妹の為と…他の何か…?
「けど、やはりあんな子では無かったように思います。」
「おそらく誰が見てもそう思う。だが、もう否定はできない。例えどんな事をする娘であってもな。」
「そりゃそうですね。殿下に言える事は、『わかりません』だけです。」
悔しいがその通りだ。
もし本人じゃないのでは?と疑問を抱く時が来たとしても、俺は何も言えない。
気を付けるようにしてたのに……あってるかどうかもわからない言葉で、必死に話してたのに……!!
このまま図書室に…ううん、このまま女子寮へ帰ろう!!
寮なら男子はこない!!とりあえず今は言い訳を考えよう…。
あっ!!お兄様をあの場に残してきてしまった!絶対あの二人に質問されてるはず。
だって……
『最後の方は破られていて、結末はわからないけど、でもきっとハッピーエンドだって思う!ううん、絶対そう!だって、お姫様は強かったもん!!』
…って、これどう言い訳するの…。侯爵のご令嬢が殿下の前で、この喋り方はないよね。
寮に着いた。
生徒は1人もいないと思っていたのに、共有部屋に寮長のサーシャ・リーベルトさんがいた。今日は授業はないのかな?
「こんにちわ。リーベルト寮長。」
「アルフォート様!?お早いですわね。もしかして体調がすぐれませんか?顔が青いですが。」
「いえ、そうでは無いのですが…少し考え事がありましたので、部屋でゆっくりすれば答えがでるかもしれない…と思ったのです。」
明日の朝までに、きょうの失態の言い訳を。
「そうですか。長い間休学してましたので、まだ本調子では無いのかと心配いたしました。」
「もう大丈夫です。心配してありがとうございます。」
その時、カランカランと鐘がなった。
「誰かしら?この時間に…私は誰が来たのか確認いたします。アルフォート様は念の為お部屋へ。」
今のは誰かが女子寮に訪ねて来た時にならす鐘って事なのかな?寮長が言うように、こんな時間に…だよね。
女生徒ならここに入ってくるのに鐘なんてならさないし、先生だって誰もいない時間だってしってる訳だし。
暫くして寮長が戻ってきた
「アルフォート様」
「はい。」
「お兄様…ニコル・アルフォート様がお見えです。女子寮に通す訳にはまいりませんので、外でお待ち頂いております。」
「お兄様が…!?」
「はい」
「ありがとう。行ってくるわ」
怒られるのを覚悟して!!
ドアをそっとあけると、3メートルほど離れた所に、美しいお姿が見える。
「ニコルお兄様…」
「アイリーン、やっぱり帰ってた。」
「すみません……私…」
「いいよ。気にしてない。大丈夫、2人は何とか言いくるめたから。これからは多少のボロが出ても、何とかなるよ。」
「本当ですかっ!?」
「ああ、でも1度戻ろうか。ここじゃ誰が見てるかわからないからね。」
「誰が見てる…?」
「大丈夫。」
ニコルお兄様が優しく笑ってくれるから、なんだか安心した。
・・・・
「行ってしまいましたね。2人とも」
「……」
「アイリーン様が殿下の前であんな喋り方をするなんて。しかもかなり元気に…。」
「ああ」
「しかし、ニコは…恐いですね。ただ『前と別人みたい』って言っただけですよ?」
「…いや…完璧によまれていた。」
「何をですか?」
「さっきのやりとりだ。」
「…殿下は意識が無くなる前のアイリーン様に何度お会いしたんですか?…まさか本当に1度だけ。ハァ…そうなんですね…。」
バルガスはグレアムの様子を見て、事実なのだとわかった。
「ニコの逆鱗に触れましたね。」
「あの娘が婚約相手に選ばれるとは思っていなかったからな。」
「たしかに、未来の王妃様を皆から嫌われてる女性にするとは思えませんよね。」
「父上は一体何を考えてるのか…」
「でも、これでニコに何を聞いても、言われても、反論も質問も出来なくなりましたよ。」
…さっきニコルに言われた言葉に、俺は反論できなかった。
「最近のアイリーンは、意識を失う3ヶ月前と別人のようだ」
ただそう思っただけで、別に深い意味を込めて言った訳でもなかった。けれどアルフォートはそれを言うのを待っていたようだった。
「殿下、貴方はアイリーンについて何か言う資格を有して無いのでは?」
「何故?婚約者の事を知る資格はないと?」
「ええ、1度しか会った事のない妹の何を知って『昔と違う』と?そのような事を何故言えるのか、私には理解できかねるもので。」
そう言って、アルフォートは出て行った。
『お前が何を思ったとしても、あれがアイリーンだ。口出しするな…』
というところだろう。
雰囲気が違う、性格が違う、そんな事をならべても、会ったのはたった1回きり。
家族の前ではどうだったのか、親しい友人の前では?もしかしたら、今のような感じだったのかもしれない。
『お前に妹の事を言われるだけで、虫酸がはしる。』と、ニコルの目が物語っていた。
産まれた時から理不尽に扱われるアイリーン、それを1番近くで守ってきたのがあの兄だ。
禁書のせいで意識を失っていたとなれば、俺への怒りは尋常じゃないはずだ。
妹が婚約者になった事も、家柄の手前首を縦にふるしかなかっただろうが、アイリーン本人より兄の方が『婚約破棄』をさせたいはずだ。
「今のアイリーン様が別人のよう。そんなに拘る事でもないかと思いますけど。グレアム様も、今くらい元気な方がいいのでは?」
結婚相手としては、その通りだ。
ニコル・アルフォートも、俺がそこに拘りをもつとは思ってないだろう。だが釘を指しにきた。
妹の為と…他の何か…?
「けど、やはりあんな子では無かったように思います。」
「おそらく誰が見てもそう思う。だが、もう否定はできない。例えどんな事をする娘であってもな。」
「そりゃそうですね。殿下に言える事は、『わかりません』だけです。」
悔しいがその通りだ。
もし本人じゃないのでは?と疑問を抱く時が来たとしても、俺は何も言えない。
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