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学校と寮4
しおりを挟む寮につくと案の定、私に話しかけてくる人はいない。
だと思ったから、本を持って帰って来たし、ニコルお兄様からの課題を…やる時間もあるというもの…。
窓をあけると、爽やかな風が部屋に入ってくる。街の明かりがキラキラして『1番見晴らしが良い部屋』というのも頷ける。
ここにいると禁書は探せないなぁ…。
とりあえず、早く婚約を破棄をしなければ!!けど、どうすればその気になってくれるだろう……
ん?ちょっとまって。そもそも1年後に決定するはずだった婚約指名。それをせず急に私に決まったのはなぜなんだろう?
「禁書か……」
舞踏会に招待されて禁書を読まされて、うん、これしか考え付かない。
…なら、禁書を読める女子を見つければ!!…って、どうやって?振り出しにもどる…
コンコン
「はい、どなたですか?」
ドアをあけると、そこには1人の女の人がいた。
「あなたは…確か寮長の」
名前なんだっけ……?
「サーシャ・リーベルトです。アルフォート様。これを、貴女宛に。」
「わざわざ届けてくださったんですか?ありがとうございます。」
「本来なら、各自のレターボックスに届くんですけど、これは殿下のご友人、バルガス生徒会長から『直接貴女に届けるように』と、お預かりしましたので。」
「生徒会長…」
…あのいつも殿下と一緒にいる人かな。
「それでは、言われた通り届けましたので、私はこれで失礼いたします。」
「サーシャ様!ありがとうございます!」
私がお礼を言うと彼女は何故か戸惑っていた。そしてすぐ背を向けて行ってしまった。
そんなにこの姿が怖いのかな?
赤瞳は少ないけどいる事は皆知ってる訳だし色の白い人もいるし、違うのは髪の毛が銀色ってだけじゃない?指先は誰にもみせてないから、違いって髪だけだと思うけど…。アイリーン様と私、既に2人いるんだから探せばもっと見つかる気がするんだけど。
まぁ、いっか。
「さて、勉強でもしようかな…。やっぱり嫌だな……」
でもやっていかなかったら、ニコルお兄様に怒られるよね…『ちゃんと課題をしてくるように!』って、ニッコリ笑いながら圧をかけられたし…
……頑張ろ
そして机についてすぐ、寝落ちした。
「寝ちゃってたーーっっ!!」
目が覚めて何も出来てない宿題を見て叫んだ、その声で何人の女生徒が目覚めただろう……
食堂は男女共用らしく、女子達のソワソワぶりが…すごすぎる!!
どうやってご飯を貰えばいいのかな?
声をかけるにも、私が近寄ると皆逃げて行くし…あらためて『氷雪の姫の転生した姿』って長いので勝手に略して『氷雪の姫』説のすごさを知る私。
「アイリーン様、どうなさいました?」
声をかけてきたのは、生徒会長だった。
「おはようございます。バルガス様。」
「昨日のお手紙受け取って頂けましたでしょうか?」
「はい…」
しまった…受け取ってそのまま読んでない!
「ではお返事いただけますか?」
「今すぐでないとダメかしら?」
「いえ、かまいません。」
「では、お昼にお返事いたします。」
よかったー!読んでないのバレてないよね!?
「なぜ今すぐに返事ができない?それくらいの事」
うわっ!!出たっ!!
「グレアム様、お早うございます。いつからそこにいらしたのですか?」
「ずっとだ。」
「あら、全然気がつきませんでしたわ。もしかしたら存在感がうすいのかもしれませんわね。」
「お前の目が節穴なだけだろう。」
「それはどうでしょう?」
グレアム様と私の、このやり取り……注目を集めていたらしい。ざわついていた食堂はシーンとした。
朝から1番会いたくない男に会ってしまった……っていうか、グレアム様もここで皆とご飯食べるって事?
「それにしても、元気になられましたね。アイリーン様。まるで別人のようです」
ギクッ
まさか別人疑惑浮上?ううん、ここで焦ってはダメ!相手がわかってるはずない!ここは、笑顔でのりきろう!
「有難うございます。お褒めの言葉として受けとりますわ。フフフ」
「アイリーン?どうしたんだ?」
「ニコルお兄様!!」
っ天の助け!!
私のもとへやってきたニコルお兄様は、当然1番最初にグレアム様に挨拶をする。
「お早うございます。グレアム殿下」
「ああ」
「ついでにバルガスも」
「ついでかよ」
ん?
「お兄様、生徒会長とお知り合いなんですか?」
「うん?ああ、もしかして忘れたか?俺は副会長だ。まだ、記憶がハッキリしない所もあるみたいだな。」
よしよし、と頭を撫でてくれるニコルお兄様は優しいけれど『話を合わせなさい』と言われている気がした。確かに、兄が副会長なのを妹が知らないのは不自然だもんね。
「はい。頑張って元気になりますね」
「ああ、無理せずゆっくりな。」
「おまえ…兄馬鹿も程々にしろよ。」
私達二人を見ていたバルガス様が呆れた顔をしている。
「可愛い妹を大切にしない兄がいるならお目にかかりたいもんだ。」
可愛い……。
うわぁぁ!そんな風に言われると、アイリーン様の事だとわかっていても恥ずかしいっ!
「はぁ…その兄馬鹿発言に『妹に優しくて素敵!』とか女子生徒が思うからビックリだ…」
「はぁ…俺は先に行く。」
そのやり取りを見てるのが面倒になったのか、私たちを残して先々行ってしまった。
「え!?待ってくださいっ!殿下をお1人には出来ません!!ニコル、アイリーン様、じゃあ。」
生徒会長は殿下を追いかけていった。
「あの2人と何を話していたんだ?」
「昨日、生徒会長にお手紙を頂きまして、その返事が欲しい…と。」
「その手紙には何が?」
「……」
「アイリーン?」
「お兄様、少し耳を」
「ん?」
「実は読んでいないのです」
ニコルお兄様にだけ聞こえるようにボソッと言った。
「そうか、じゃあ答えようも無かったんだな。」
「はい…」
「気にするな。朝ごはんは?もう食べたか?」
「これからです。」
「じゃあ、一緒に食べようか。」
「はい!」
やっと食事のシステムについて知ることができた。
・・・・
「殿下…先にいかないでください。一緒にいないと、俺が兄上に殴られるんですよ。その辺を考えてください。」
「だからこそだ。」
「ひっど!!この人、酷すぎる」
「うるさい」
「ハァ…で、アイリーン様を見てどうか?でしたっけ?見かけは全く違いありませんね。ただ、性格は180度違いますね……クククッ」
バルガスは笑いを堪えるのに精一杯で、先が続かない。
「ハァ…何がそんなに可笑しい?」
「いや、だって殿下にあの態度ですよ?それに女子寮でも、絡んできた女子3人相手に言い負かしたそうですし。」
「そうか」
「そうです。そして、手紙は読んでないでしょうね。」
「……」
その手紙の内容を見ていないアイリーンは、読んでいない事がバレていないと信じこんでいた。
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