上 下
16 / 22

時間の無駄3

しおりを挟む
ここまでのやり取りを見ていたギルバートが、帰っていくアイリーンを見ながらいった。

「アイリーン様って、噂とちがって…何というか……」
「ああ、か弱いお嬢様…では無いな。」
「殿下より先に席を外すなんて、前代未聞ですよ。他の国ならいざしらず……」

「少しは収穫はあったから問題はない」
「収穫?」
「ユーリという女について。」
「あぁ……いくらなんでも婚約者の前で女性の名前を出すのはどうかと思いますよ…」
「仕方がないだろう。アルフォート兄妹にしかわからない話なのだから。」
「『ユーリ』の事をですか?」
「ああ。兄の方に文を送った、その返事がこれだ」

グレアムはギルバートに返事を見せた。

「読んでも構いませんか?」

グレアムは頷いた。

「『…ユーリはアイリーンの信頼する数少ない友人。素性を知られるのを嫌がるところがあり、自分はそれ以上を知る事はない…』というような事だけ書いてある。『アイリーンの友人の素性をさらすつもりは一切ない。』と俺が理解するだろうと、わかって書いている。」

「兄妹そろって強気ですね……でも、侯爵家に出入りする人間を、何も調べずに受け入れるなんてあり得ないと思いますが……」
「アイリーン絡みだと、あの兄は絶対口をわらない。舞踏会の時も軽くかわされた。」
「そんなにしてまで、殿下がユーリにこだわる訳はなんなんですか?」
「伯爵殺人の犯人に繋がる人物かもしれない」
「どうやったらそんな答えに……1+1は5みたいになってますよ」
「…伯爵が殺された日の夕方、あの日俺はアルフォートとユーリと伯爵に出会ってる。」
「あぁ、そういえばあの時……詳しくは聞きませんでしたが、何があったんですか?」
「男の子が伯爵にぶつかって、何が気にくわなかったのか、その子を殴った上に蹴りだした。俺が止めに入る前に『ユーリ』が伯爵に飛び蹴りをいれた」
「は?飛び…蹴り…ですか?女の子が?」
「ああ、凄いだろう?見事だったぞ。」
「何を楽しそうに話してるんですか…。殿下はその時『ユーリ』の顔を見なかったんですか?」
「髪の毛でよくわからなかった。その後は背を向いていたしな…そこにニコルがきてその娘を『ユーリ』と呼んでいた」
「アルフォート侯爵子息、ユーリ、伯爵、そしてグレアム殿下が同じ時間に同じ場所にいて、『ユーリ』は定かでないが侯爵子息だけは殺される事も襲われる事もない…。確かにあやしいですけど…状況はたまたま伯爵の非道な行動を『ユーリ』が止めた…というだけで。」
「『ユーリ』を殴って、血を流させた事が事件の引き金になってるとすれば、動機になるだろう。」
「それでは殿下が襲われる動機にはなりませんよ。それに、『ユーリ』も殺されてる可能性もあるのでは?頑なに『ユーリ』の存在を隠すのもおかしい。」
「だから『ユーリ』の状況を知りたかったのだが…あの兄妹に聞いても無駄らしい」
「見張りをつけますか?」
「ああ。頼む。」
「畏まりました。」



・・・・



「ふふ、完璧っ!」

これで、どこからどうみても少年!
ハーフパンツ、ゆったりしたシャツ、キャスケット!
そして今回は、今までつけてたウィッグをバッサリショートにしてきました!

「さ、急がないと!!」
迎えがくるまで後一時間きってる!

でもどこから探せばいいの?
城は広い…もしかしたら城じゃなくて違う場所にあるって最悪の可能性もありえる…。でも、見られてまずい物とか、大切な物は絶対近くにあるはず。…たぶん。

とりあえず、今日はこの城を覚えよう。逃げ道確保も大切な事。

所々に兵士がいるのは、その側に何か大切な物とか人がいるから。にしてもピッカピカの廊下…やたらとある絵。人物画とか怖いよ。

1階に大切な物がおいてあるとは考えにくい。この前みたいに、人が集まる広間とも遠い場所。

3階から下に逃げるなら、この窓なら木に飛びうつれる。逆にこっちは…やたら守りが硬い。何か重要な物があるに違いない!外壁や屋根から回れるかも確認しないと。
あーっ!広すぎる!こんなの部屋見つけるだけでも大変!!

もうすぐ時間だ。今日はこれくらいにしておこう。

用意されていた部屋にもどって、血がついた服を…

「あれ?違うのが用意されてる……」
え?着てきた服は?……なくなってる!!
あの服弁償するってなったら、それだけで我が家は1ヶ月はご飯たべれない!!

「あのっ!っ私の服しりませんか?」

とりあえず用意されてた服をきて、その辺にいるメイドや兵士に聞きまわった。

 
「アイリーン様、侯爵邸からお迎えが来ております。」

まさか誰も服の行方を知ってるが人いないなんて……。
「はは…ありがと…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

処理中です...