私はただの身代わりで、婚約者ではありません

シンさん

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家族会議

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 次の日

アルフォート侯爵家では家族会議が開かれている。

議題は、『婚約』と『結婚』について。

私は婚約有力候補、ではなく、婚約者に決定していた。結婚の話すら進められる。


「なぜこのような事になったのかはわかりませんが、私は後11ヶ月後にいなくなるので、アイリーン様に婚約を引き継ぐ事になります。よろしくおねがいします。」

あれ?何か空気が…変な感じになってない?

「……ユーリ…アイリーンは今、意識がないんだ。」

ここへきて初めてのアイリーン様情報…

「えーーっ!!」
「すまない…」
「っすまないっじゃなくて、大丈夫なんですか!!まさか病気ですか!?」
「病気…いや、それも私達にはわからないんだ。」
「わからない?」
「…おそらく禁書を読んでしまったからよ。意識をなくしたのは。」
奥様が泣きそうになりながら話してくれた。

「貴族の間では、あなたのような特徴のある子は忌み嫌われるのよ…アイリーンもその例外じゃなかったわ。」

忌み嫌われる…外見だけで?酷くない?村でそんな事言う人いなかったよ。

「銀髪で赤い瞳、真っ白な肌、そして貴女も、指先は紫でしょう?」

「そうですけど…『たぶんあまり血がうまく行きとどいてないんだろう』って、『髪の毛も肌も色素が薄くて色が白いだけ、赤い瞳は私の曾祖母もそうだった』って、村長は言ってました。」

「……そう、きっとその村長は頭のよい人ね。」

「?」
医者でも何でもないですよ。まぁ村では一番の権力者だけど…。

「その村長は、ユーリが嫌われる事なく村で暮らせるように、あらかじめ皆に信じさせようとしたんだ。赤い瞳の存在くらい知ってるだろうし…色素が薄いっていうのも信じさせやすい。産まれてすぐそう説明していれば、指先は病気って事にすれば、それをあやしいと思わない。」

酒癖の悪い村長が…そんな事を?過大評価もいいところですよ、ニコルお兄様!

「……ところで…なんですけど、それが、どういう事なのでしょうか?」
話が見えないんですけど…。

「アイリーンやユーリのような特徴の人をもつ娘は『氷雪の姫の転生した姿』…国に害なす存在。と言われているんだ。」

 …なにそれ?
 ……どこのおとぎ話?

「馬鹿な話だと思うだろ?」
「えっ!?いや、そんなことは……」
思ってるけど…。

相変わらず顔に出やすいと、ニコルお兄様に笑われた。

「害を…一体何をするからそう言われるんですか?」

聞くとニコルお兄様が首を横なふった。

「誰も知らない…ただそう言われているだけ。本当に、馬鹿な話なんだよ…」

ニコルお兄様の拳に力がはいって、震えている。

「…アイリーンは産まれた瞬間から忌み嫌われて、生きていてもいいのかと悩み、心を病み食事もろくにとれないギリギリのところで生きていたのに……っそんな状態の時に禁書を開けと言われたんだっ!!」

ダンッッ

ニコルお兄様は怒りにまかせて、テーブルをなぐった。こんな感情的になる人だなんて、想像もつかない。

「あの、侯爵様。禁書っていうのは実際どんな物の事をいうのですか?」

連れてきた理由の1つ『禁書を読んでしまったから…』だけど、それがどんな物なのか、全てを知ってるわけじゃない。

「魔法のような本だよ…。読めない者には開けない…我が国では禁書とはそういう本の事をいう。世に出回るのを禁止して、王族が管理している。」

「けど、誰にでも読めない本なんて、誰も買わないのではないですか?世に出回るのを禁止…って、そんなことしなくても。」

「……でもユーリ、君は読めた」

ニコルお兄様が私を見て言った。

「……アイリーン様も?」
「ああ、けど本を開いた瞬間、意識がなくなった。もう3ヶ月ほどたつよ。」
3ヶ月も…
「私は何ともない…」
「ああ、何か知らないか?本を開いた時に、何か起こったとか、気を失ったとか、何でもいい!!」
どうしよう…私には何も起こらなかった…。みんな私なら何かわかるんじゃないか…って思ってる。
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