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俺の推理
しおりを挟む「ギル、何かわかったのか?」
突然の王子の登場に、庭で警備の指揮をしていた騎士団長ギルバートは、キョトンとしている。
「あれ?殿下…?何故ここへ?」
「お前が呼んだんじゃないのか?」
「何の話ですか、俺は本来貴方の護衛ですが、逃げ回っていたのは殿下の方でしょう。まさか、自ら捕まりにくるなんて、明日槍でも降るんじゃないですか。」
「…お前の上にだけにな。それより…警備中にニコル・アルフォートを見かけたか?」
「さらっと酷い事を…。ニコル様ですね、会ったというか、すれ違いましたよ。『殿下を見つけたら教えてください』って言ったんですが、まさか彼が殿下をここに?さすが侯爵…そんなに睨まなくても……」
「うるさい」
「まったく、逃げてた殿下が悪いんですよ、私のいない時に殿下が襲われでもしたら…ちょっと聞いてますか?」
ギルが何か言っているけど全て無視だ。他に気になる事があったからだ。
俺を見つけた時、ニコル・アルフォートは随分息があがってた。
侯爵子息に言い寄られれば、逃げるような女はここにはいない。もし誰かを探していたとすれば、おそらく俺の目の前にいたあの女だ。
俺がギルのもとへ向かう時何気なく振り返ると、アルフォートが女のいる方に歩いているのを見た。アイリーンはユーリはここにいないと言っていた。だが、それが嘘で忍びこませていたとすれば…兄であるアルフォートが探してたのがユーリである可能性が高い。
「チッ!」
無理にでも振り返らせるんだった。
「殿下、舌打ちとかやめてくれます?私は別に何もしてませんよ。」
この前もそうだ。
アルフォートは大切そうに抱きしめて、俺に顔を見えないようにしていた。あの日、何故か侯爵邸だけ何事もなかった。伯爵は殺され、俺も部屋に来た何者かに殺されかけた。あまりに強く捕まえる事もできず、ヤツは3階の窓から逃げた。
それがあの女に関わりがあるのなら?
だがこれは全て、さっき見た後ろ姿の女がユーリだと仮定しての話だ。何一つとして証拠もない。
アルフォートは俺をみつけてギルのもとへ帰るように伝えに来て、怪我をした女を見て近づいた。ただそれだけかもしれない。
「はぁ…」
「今度はため息ですか、何かあったんですか?」
「別に」
「あ、もしかして好きな人ができた……って冗談です。」
好きな女などてはない。
王族に愛だの恋だの、くだらない感情は必要ない。所詮、国を強固なものにするために結婚し、子供をつくる。仕事のようなものだ。
ただ、もう一度会ってはみたかったのかもしれない。身分にこだわらずに、血をながしてでも大の男に立ち向かっていった娘に。
あの後ろ姿を見た時、気づけば追いかけてしまった自分の行動は、だからなのだろう。
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