結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

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本編後の小話 全19話

脱走

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クリフとマーガレット様の間には、女の子がいる。

「クリフにこんなに可愛い子がいるなんて、想像つかないわ。」

私の指をキュっと握りしめてくるのが、なんとも言えず可愛らしいわ。
エドワードだっていておかしくないんだよね。ううん、王様だったならいるはずなのよ。25才なんだもの。

「ニーナ様」
「はい、何でしょうか?」
「くっついてみた?」
「はい…。けれど恥ずかしくて…。」

何だか女性扱いされるのは恥ずかしいというか…。今まで『好きじゃない』とか言い張ってたんだもの。
そうだ!出掛ければ何か変わるかも知れないじゃない!距離が近くなるかもしれないわ。


・・・・


「エドワード!明日午後はお休みだよね?脱走しましょう!」
「……」
「嫌なら別に…」
「うん、嫌じゃないよ。」
「本当っ!?じゃあ着ていく服を決めましょう!エドワードは青が好きだし青っぽいお洋服で、私は…何でもいいわ。」
「何でも良くはない。」
「ボナースに行く時のような服でいいわよ。」
「…そうだね、じゃあいつもと似た感じで、これを着たらいい。」
「うん、そうね。」

明日がんばろう!



次の日

「あんな所に抜け穴があるだなんて。」
「昔見つけたんだ。脱走して怒られたけど。」
「王子がいなくなったら大問題よ。」
「けど、今日はいいだろ。」
「ええ。」

歩いていると見た事のない物もいくつかあるんだよね。その中でも気になるのが1つ。

「ねぇ、あれは何?」

黒くて三角形の物が沢山並んでいるけど、私の国には無かったわ。

「あれは帽子だ。」
「帽子?あれが?」
「最近、魔法使いの絵本が流行ってるから、子供達に人気があるんだよ。」
「そんな絵本があるのね。ボナースにはないから知らなかったわ。」

どんな人でも入館できる図書館が幾つかあれば、本を買えない人でも読めるよね。もし学校に行けない子でも、本があれば…

「ニーナ、何を考えてるんだ?」
「…べつに、何でもないわ。」
折角脱走して楽しもうと思ってるのに、考えるなら後にしないと。
「ゆっくり城下を見て回った事が無かったけど、綺麗なところね。」
「気に入った?」
「ええ。」
「そう、嬉しいよ。」
「ねぇエドワード、これを2人で買わない?」
私が指差したのは硝子玉のついた指輪。
「…欲しければ本物を」
「そういう事じゃなくて、脱走記念によ。高い物ならいらないわ。」
「おっ!お二人さん何にする?うち店のは硝子だけど細工がいいから綺麗だよ。」
「そうね、エドワードはどれがいい?私はあの水色のにするわ。」
「俺はあの青いのがいいかな。」


城に着くと、クリフが恐ろしい形相で抜け穴の前に立っていた。

「どこ行ってたんだっ…、2人とも。」

私達がいないのを知って、クリフが呼ばれたんだよね…。お休みなのに申し訳無い事をしてしまったわ。

「今度行くなら、俺には言っていけ。」

そう言って、私達を放って城の方へ歩いていった。

「…許してくれるのね。もっと怒られるかと思ったけど、意外だわ。」
「あれはマーガレットといる時間を減らされたくなくて言ってる。俺達に気を使っている訳でもなんでもない。」
「素敵な事だわ。家族といるのは大切な時間よ。」
「君も俺と一緒にいたい?」
「楽しかったらね。」
「今日は楽しくなかった?」
「…楽しかったけど。」

…何だか答えるように誘導されてるわ。

「さて、クリフにも怒られた事だし、部屋まで送るよ。」
「ふふ、クリフに怒られる所までが脱走なのね。」
「あいつは昔から俺を怒るのが癖なんだ。」
「何それ。」

ムスっとしている顔は何だか可愛い。

「今日はありがとう。」

当分2人だけで出かけるのは無理だよね。まぁ、無理を言っては駄目ね。エドワードは忙しいんだもの。

「ニーナ。顔を上げて。」

ん?

「…っ!?」

何気無く言われた通りにすると、口付けされた。

「夕食は、逃げずに食べにくる事。それから、これは2人きりの時に渡すから。」

そう耳元で言ってから、2人で買った指輪を持って行ってしまった。

「……」

恥ずかしい!!
夕食なんて絶対無理よ!!

恥ずかしいけど、逃げてばかりもいられないよね…。う~ん…。
           



今頃部屋にこもって…
『夕食なんて絶対無理!』
とか思ってるにちがいない。

いろいろ強いるつもりはないが、いい加減あれでは困る。進展するように仕向けていこう。


エドワードは指輪を見ながら思った。
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