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ニーナとエドワード3
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「ニーナっ!!」
病室に駆け込んできたのはクールだった。
「ニーナの容態はっ!?」
「弾は今取り出しましたが、ここにくるまでに出血が酷く…助かるみこみは限りなく低いです…。」
「…っふざけんな!何とかしろよっ!お前医者だろっ!!」
「クール、よせ。」
カタサの長にとめられた。自分の責任を人にぶつけようとしているからだ。
「すみません。」
「ニーナが撃たれるとは、わしらも迂闊《うかつ》だった。ガリシナの作戦を失敗に終わらせたのはニーナなのだから、狙われる事も十分にありえた。」
「ええ…俺が馬鹿でした。こんな簡単な事に気が付かないなんて…。エドワードには…伝えますか?」
「いいや、止めておこう。時期じゃない。
奴も王になる男、今踏み外せば台無しになる。」
「…そうですね。俺もそう思います。
レオン、ニーナの事は誰が知ってる?」
「曲者がいるのは言いましたが、ニーナ様の事は何も。ここに連れてきたメイドと騎士には箝口令《かんこうれい》を。」
「よかった。あまり知られたくない。今から『ニーナは帰った』…と殿下に説明にいく。何か聞かれてもそれで押し通せ。」
「承知しました。」
ニーナは心配だが付きっきりにもなれない。
「レオン、後は頼んだ。」
「はい。」
エドワードには言わない方がいい。
そうなのは分かる。
だが、伝えてやりたい。
けれど、アイツは王になる。もう婚約者もニーナじゃない。
今この状態を知れば、頭に血がのぼって復讐しか考えなくなる可能性もある。
後から聞いてもそうなるだろう。
エドワードはニーナを気に入ってる。一緒にいるならニーナがいいと思ってたはずだ。
このまま帰ったという事にしておこう。生死は問わず、ニーナがどうであっても結果は
伝えない。これからずっと。
・・・・
「城中が騒がしいが、何かあったのか?」
「誰か忍びこんでいるようで、今捜索しています。狙いは殿下です。気を付けてください。」
いつもより青い顔をして、クールが俺に言った。
「わかっている。……ニーナは?どうしているんだ?」
俺が狙われるならニーナも狙われるんじゃないか?婚約者だと知られている。
すでに婚約者が変わった事などは知らないはずだ。
「今日の朝、城を出ました。」
「ニーナは、帰ったのか…」
「『挨拶できなくてごめんなさい』と伝えてほしいと言われました。」
「そうか…。」
その方がいい。
俺は多分『帰らないでくれ』と言ってしまう。この国にいてくれさえすれば会いに行ける…という、卑怯な事を考えた。
彼女以外と結婚する事になるのに。
ニーナが好きか、そんなのはよく分からない。ただ、一緒にいたいと思った、その相手はニーナだっただけだ。
もう逃げてるんじゃない。だから追いかける事も出来ない。
手放す時がくるなんて、考えなかった…
・・・・
3日たったがニーナは意識がもどらない。日に日に窶れていく。
もうこれ以上は難しいと言われた。
大量に出血しても、こうして生きている。必ず目を覚ます……、俺は信じてる。
「マリア叔母様、少しお休み下さい。俺が見ています。この部屋にベッドを用意させましたので。」
「クール…ありがとう。でも心配で眠れないの。ニーナは…うちの子が何故撃たれるの…。どんなに頭をさげられても、行かせるべきじゃなかった。」
「……」
撃たれたのは、アルデーテの弱味がニーナだと思われたからだ。
渦中に巻き込まれてしまった。
このまま体力が減り続ければ、死ぬ…。
1番危険な時に、守ってあげられなかった…。
犯人は捕まらない。まだニーナとエドワードを狙ってるはずだ。
病室に駆け込んできたのはクールだった。
「ニーナの容態はっ!?」
「弾は今取り出しましたが、ここにくるまでに出血が酷く…助かるみこみは限りなく低いです…。」
「…っふざけんな!何とかしろよっ!お前医者だろっ!!」
「クール、よせ。」
カタサの長にとめられた。自分の責任を人にぶつけようとしているからだ。
「すみません。」
「ニーナが撃たれるとは、わしらも迂闊《うかつ》だった。ガリシナの作戦を失敗に終わらせたのはニーナなのだから、狙われる事も十分にありえた。」
「ええ…俺が馬鹿でした。こんな簡単な事に気が付かないなんて…。エドワードには…伝えますか?」
「いいや、止めておこう。時期じゃない。
奴も王になる男、今踏み外せば台無しになる。」
「…そうですね。俺もそう思います。
レオン、ニーナの事は誰が知ってる?」
「曲者がいるのは言いましたが、ニーナ様の事は何も。ここに連れてきたメイドと騎士には箝口令《かんこうれい》を。」
「よかった。あまり知られたくない。今から『ニーナは帰った』…と殿下に説明にいく。何か聞かれてもそれで押し通せ。」
「承知しました。」
ニーナは心配だが付きっきりにもなれない。
「レオン、後は頼んだ。」
「はい。」
エドワードには言わない方がいい。
そうなのは分かる。
だが、伝えてやりたい。
けれど、アイツは王になる。もう婚約者もニーナじゃない。
今この状態を知れば、頭に血がのぼって復讐しか考えなくなる可能性もある。
後から聞いてもそうなるだろう。
エドワードはニーナを気に入ってる。一緒にいるならニーナがいいと思ってたはずだ。
このまま帰ったという事にしておこう。生死は問わず、ニーナがどうであっても結果は
伝えない。これからずっと。
・・・・
「城中が騒がしいが、何かあったのか?」
「誰か忍びこんでいるようで、今捜索しています。狙いは殿下です。気を付けてください。」
いつもより青い顔をして、クールが俺に言った。
「わかっている。……ニーナは?どうしているんだ?」
俺が狙われるならニーナも狙われるんじゃないか?婚約者だと知られている。
すでに婚約者が変わった事などは知らないはずだ。
「今日の朝、城を出ました。」
「ニーナは、帰ったのか…」
「『挨拶できなくてごめんなさい』と伝えてほしいと言われました。」
「そうか…。」
その方がいい。
俺は多分『帰らないでくれ』と言ってしまう。この国にいてくれさえすれば会いに行ける…という、卑怯な事を考えた。
彼女以外と結婚する事になるのに。
ニーナが好きか、そんなのはよく分からない。ただ、一緒にいたいと思った、その相手はニーナだっただけだ。
もう逃げてるんじゃない。だから追いかける事も出来ない。
手放す時がくるなんて、考えなかった…
・・・・
3日たったがニーナは意識がもどらない。日に日に窶れていく。
もうこれ以上は難しいと言われた。
大量に出血しても、こうして生きている。必ず目を覚ます……、俺は信じてる。
「マリア叔母様、少しお休み下さい。俺が見ています。この部屋にベッドを用意させましたので。」
「クール…ありがとう。でも心配で眠れないの。ニーナは…うちの子が何故撃たれるの…。どんなに頭をさげられても、行かせるべきじゃなかった。」
「……」
撃たれたのは、アルデーテの弱味がニーナだと思われたからだ。
渦中に巻き込まれてしまった。
このまま体力が減り続ければ、死ぬ…。
1番危険な時に、守ってあげられなかった…。
犯人は捕まらない。まだニーナとエドワードを狙ってるはずだ。
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