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卑怯者と私3

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公爵の城から出て、1度クックさんの家へいって、エドワードの傷を治療してから王城へ帰って来た。

「そんなに怒らなくても良いだろ。」
「クール様は全部知ってたの!?軍が
エドワードを助けにくるって!」
「あ~怒るなって。俺もこんな事をするなんて知らなかったんだから。」
「…クール様も知らなかったの?」
「見事に一杯食わされたんだ。これはニーナがどう動くかで左右されたんだ。」
「私?」
「何も言わずに帰ってきた場合は、助けるかどうか悩んでたらしい。帰って来ないから『未来の王妃』に手を貸せ。だってさ。」
「カタサの長は?怒ってたんだよね?」
「事の経緯を話したら、アルデーテに味方して戦えって。」
「…族長、強いね。」
「本当に…。」

「けど、どうやって私がここにいるのを知ったの?」
「リード公爵が遣いをよこした。軍を動かしたのは公爵だ。」

「私…無駄に怖い思いをした気がするわ。
最初から私がいなくても、何もかも上手くいってたんじゃない。」

「公爵だって、この話は知らなかった。ニーナが奮闘するのを見て、何もしなかった事を恥じてたよ。」

「手伝ってくれたわ。それに私は死んでないもの。」

「………」

「エドワードも生きてるし、叩けたし、個人的にはスッキリしてるわ。まだクリフを叩けてないけどね。」

「……それは怪我が治ってからにしてやれ。」

「仕方ないわね。」

「ところで、兵服に入ってたこの赤いインクと煤はなんだ?」

「それは、怪我人に扮して乗り込む時用で、煤は暗闇で戦う時や目潰しに役立つ気がしたの。けど、使わなかったわ。」
「……。」
「クール様は今からまたお仕事?」
「俺はこの後始末があるから。おとなしくニーナはここにいなさい。いいな。」

クール様は私の頭をポンポンとしてから、
部屋をでていった。

エドワードにも同じ事をされたわ。2人にとっては、私は子供なのね。

コンコン
「はい」
「エドワードだ、入ってもいいか?」
「ええ、どうぞ。」

私は扉を開けて迎え入れた。


「…起きても大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。」
「最初から助けを求めていたら、そんな姿にはならなかったのよ。」
「…直ぐに遣いを送った。だからここまで
早く対応してくれた。」
「ならもう少ししてから話に行けばよかったんじゃないの?」

「ニーナがここに残るとは思わなかったからね。援助は期待できないかな…と思って。」
「私がそんな弱い女に思ったの?」
「全く。」

それはそれで複雑だわ。

「ニーナは俺の事、本当は好きなの?」
「べつに好きじゃないわ。だから、嘘も本当もないでしょう。」
「けど、未来の王太子妃だと言ってた。」
「…貴方いつからはっきり聞こえてたの?」
「『役者は揃った…』くらいからかな。」
「ほぼ最初からじゃない!何でもっと早く
対応しないのよ!」
「身体は完璧に動けてた訳ではないし。」
「私、死ぬかもしれなかったのよ!」
「……ごめん、ごめん。」
「いいわ、貴方が死ななかったんだから。
さすがに死人は殴れないもの。」
「…………。ところで、『役者は』って何の事をいってたんだ?」
「カールのふりをして勝手にパーティーについて行って、あの卑怯者をなぐったのよ。エドワードが手を出さないのに、一方的に殴ってたから男らしくないと思って。」
「『この卑怯者』って言ったのは聞こえてたけど、すぐ気を失ったから。」
「今日また卑怯者を殴れてスカッとしたわ。」
「俺は何故叩かれたの?」
「貴方の命の恩人への扱いが酷すぎだからよ。」

「本当に酷い扱いをした、申し訳ない。」

「あのまま貴方がずっと会いに来なくて、
家財を盗まれたりしなければ、私は働いていたはずよ。お互いその方がよかったんだと思うわ。」
「俺には会いたくなかった?」
「何を言ってるの。それは貴方の方でしょう。婚約者に会いに来ない王子様。」

「……君が妹なんじゃないかって思って、
会うのが怖かったんだよ。」
「妹じゃないわよ…何を思ったら私が
ノワール陛下の隠し子になるのよ。」
「昔『ニーナとお前は家族だ』と言ってたのを思い出したんだよ。」
「…何を思ってそんな事を?最近なんだよね?私がエドワードの命の恩人だって気がついたの。」
「だから謎なんだ。それにシャロンも俺達の事を知ってるようだ。」
「シャロンが?」
「金持ちの所にヒョイヒョイのりかえて行くから、そこで何か聞いたのかもな。」
「…そんな彼女が好きだったんでしょう。」
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