95 / 187
卑怯者と婚約者3
しおりを挟む
「クックさん、貴方は無理して付き合う事はないのよ。」
「嫌なら付いてきてねぇさ。サナス二等兵。」
「…死ぬかもしれないわよ。」
「俺の仕事は死と隣り合わせだ。それに、あんたの言う通りだと思ったからだ。ここが勝負どころってやつだ。」
「そう、それが今なの。」
「…もしかしてお前が『ニナ・スミス』か?」
「…ええ」
「なるほど、ハハッ、いいだろう。とことん付き合ってやる。俺の仲間が王子を追ってるだろうしな。」
…何故知っているの?そして何故笑われたの…。聞きたかったけれど兵の数が多くなってきてる。話すのも気を付けないと。
前から来た兵士が私達とすれ違う時にボソッと呟いた。
『ハリソン公爵の城の地下』…と。
どちらも立ち止まらないから、本当にすれちがっただけ。まわりは全く気がついてないわ。
「同業者、俺1人って訳じゃないさ。けど、事態は悪くなった。」
「なぜ?邸じゃなく城になっただけだわ。」
「ん~、まず距離が遠退いた。そして城の地下ってのは、拷問部屋だったり用具が置いてある場合がある。昔使っていた…とかな。」
「っ!?」
「今は城なんて不便で住んでないし、持っていても放置してる者が多い。公爵もその1人だ。だからこそ、いらない物は詰め込んである。拷問具なんてそれこそ必要ない。まぁ、持ってないと思うけど。」
「…ここからそこまでの距離は?」
「馬で15分ほどだが、俺達は夜目がきかないからな。そこまで速度はあげられない。30分くらいかかる。それに…」
クックさんが私を見た。
「私の馬術じゃ無理だとでも?あの軍馬2頭、あれで行きましょう。今日は月が明るいし、20分で着いてみせるわ。」
「その自信は何処から…」
「私の中よ。」
「………」
「クックさん、並走するわ。方向は手で示して。」
「了解、行くぞ。」
私達は出来る限り速度を上げて馬を走らせた。
この馬…普通より夜道に馴れているし、ここはでこぼこ道でもない。20分で行けるわ。
城がみえる。もう少しで着けるわね。
「クックさん、城に堀や城壁はあるの?」
「ないない、建物こそ城だが、王城や砦みたいな物とは全く違う。ただ庭があるだけ。門も何もない。突っ切るか?」
「そうします。けれど、ここで馬から1度降りましょう。話があります。」
「何か手があるのか?」
「ええ。」
私はクックさんに方法を話して、また城へむかった。
エドワードの様子を見に行くなんて、全て私の我が儘よ。軽率な行動。
『自分で動かない人を、誰も助けてはくれない』。それはそう。けれど、人を助けられる時と、国を助けてくれる時は同じにはならない。
誰かは死ぬ。
『今』じゃないと駄目なのよ。
けど、アルデーテの国民の皆様。残念な事に、私は自己犠牲なんて精神は持ち合わせてません!
『エドワードが生きてたら、私は死んでもいい…』だなんて全く思ってません!だって死にたくないもの。出来るとこまでやって、危なければ撤収よ!さっきはクリフに偉そうに言ったけど、所詮私はただの18…19才の異国の女よ。
馬で城まで駆けて行く。案の定、見張りがいる。思っていたよりは多くない。
扉に2人、後は城の角に1人ずつくらいだわ。
私達は馬を降りた。
「少し力を借りるぞ。」
クックさんが2匹の馬のおしりをおもいっきりひっぱたいた。馬は驚いて城の方へ駆けて行く。
「うわぁ!暴れ馬だ!」
「こっちもだっ!」
見張りが定位置にいなくなったのを見て、私達は城に飛び込んだ。
こんなに上手くいくなんて…罠かもしれないわ。私は最近疑り深いのよ。
城中は明るいとはいえない。真っ暗闇ではないからよかったけどね。
…こんなに大きな場所、想定外よ。
持ってきたマッチに火をつけても、遠いところまでは見えないわ。
けれど地下だと言っていたし、何処かに階段があるよね。
「嫌なら付いてきてねぇさ。サナス二等兵。」
「…死ぬかもしれないわよ。」
「俺の仕事は死と隣り合わせだ。それに、あんたの言う通りだと思ったからだ。ここが勝負どころってやつだ。」
「そう、それが今なの。」
「…もしかしてお前が『ニナ・スミス』か?」
「…ええ」
「なるほど、ハハッ、いいだろう。とことん付き合ってやる。俺の仲間が王子を追ってるだろうしな。」
…何故知っているの?そして何故笑われたの…。聞きたかったけれど兵の数が多くなってきてる。話すのも気を付けないと。
前から来た兵士が私達とすれ違う時にボソッと呟いた。
『ハリソン公爵の城の地下』…と。
どちらも立ち止まらないから、本当にすれちがっただけ。まわりは全く気がついてないわ。
「同業者、俺1人って訳じゃないさ。けど、事態は悪くなった。」
「なぜ?邸じゃなく城になっただけだわ。」
「ん~、まず距離が遠退いた。そして城の地下ってのは、拷問部屋だったり用具が置いてある場合がある。昔使っていた…とかな。」
「っ!?」
「今は城なんて不便で住んでないし、持っていても放置してる者が多い。公爵もその1人だ。だからこそ、いらない物は詰め込んである。拷問具なんてそれこそ必要ない。まぁ、持ってないと思うけど。」
「…ここからそこまでの距離は?」
「馬で15分ほどだが、俺達は夜目がきかないからな。そこまで速度はあげられない。30分くらいかかる。それに…」
クックさんが私を見た。
「私の馬術じゃ無理だとでも?あの軍馬2頭、あれで行きましょう。今日は月が明るいし、20分で着いてみせるわ。」
「その自信は何処から…」
「私の中よ。」
「………」
「クックさん、並走するわ。方向は手で示して。」
「了解、行くぞ。」
私達は出来る限り速度を上げて馬を走らせた。
この馬…普通より夜道に馴れているし、ここはでこぼこ道でもない。20分で行けるわ。
城がみえる。もう少しで着けるわね。
「クックさん、城に堀や城壁はあるの?」
「ないない、建物こそ城だが、王城や砦みたいな物とは全く違う。ただ庭があるだけ。門も何もない。突っ切るか?」
「そうします。けれど、ここで馬から1度降りましょう。話があります。」
「何か手があるのか?」
「ええ。」
私はクックさんに方法を話して、また城へむかった。
エドワードの様子を見に行くなんて、全て私の我が儘よ。軽率な行動。
『自分で動かない人を、誰も助けてはくれない』。それはそう。けれど、人を助けられる時と、国を助けてくれる時は同じにはならない。
誰かは死ぬ。
『今』じゃないと駄目なのよ。
けど、アルデーテの国民の皆様。残念な事に、私は自己犠牲なんて精神は持ち合わせてません!
『エドワードが生きてたら、私は死んでもいい…』だなんて全く思ってません!だって死にたくないもの。出来るとこまでやって、危なければ撤収よ!さっきはクリフに偉そうに言ったけど、所詮私はただの18…19才の異国の女よ。
馬で城まで駆けて行く。案の定、見張りがいる。思っていたよりは多くない。
扉に2人、後は城の角に1人ずつくらいだわ。
私達は馬を降りた。
「少し力を借りるぞ。」
クックさんが2匹の馬のおしりをおもいっきりひっぱたいた。馬は驚いて城の方へ駆けて行く。
「うわぁ!暴れ馬だ!」
「こっちもだっ!」
見張りが定位置にいなくなったのを見て、私達は城に飛び込んだ。
こんなに上手くいくなんて…罠かもしれないわ。私は最近疑り深いのよ。
城中は明るいとはいえない。真っ暗闇ではないからよかったけどね。
…こんなに大きな場所、想定外よ。
持ってきたマッチに火をつけても、遠いところまでは見えないわ。
けれど地下だと言っていたし、何処かに階段があるよね。
74
お気に入りに追加
4,762
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◯完結まで毎週金曜日更新します
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる