結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

文字の大きさ
上 下
94 / 187

卑怯者と婚約者2

しおりを挟む
『背筋を正せ、歩幅は大きく、前を向け、
出来るだけ声をだすな、キョロキョロするな』

これがクックさんからの注意点。

その注意を守って、私達は邸を通りすぎて
30mほど先にある塔に向かった。煉瓦造りの円柱の建物。逃げられるような高さじゃないわ。

建物の入り口には見張りがいるのにズンズン進んで行くし…。堂々としすぎな気がする。

「交代だ。」
「ああ、やっとかぁ。半日何もせず立ってるのは辛い。お前らもがんばれよ。」
「ああ。お疲れさん。」

「…なぜ怪しまないの?」
「全員の顔なんて覚えてないし、夜に顔なんかハッキリ見えてない。1時間くらい早く来ても、交代したいから喜んで代わる。」

何て情けないの…。こちらとしては嬉しいけど。

ものすごく簡単に入れた…。
階段をかけ上がって様子を伺うけれど、
月明かりしか無い部屋に誰がいるのかなんてわからない…。

「おい、ランプも持たずに危ないだろ。」

後を追いかけてきたクックさんに怒られた。

「エドワード、クリフ、いる?」
「ニーナ様…?」
「クリフ?」

声のする方に明かりを照らすと、クリフと
レオンがいた。足を鎖で繋がれてるし、傷だらけじゃない!
「っ2人も一体どうしてこんな事に!レオンはこんな大ケガ…大丈夫なのっ?……ねぇ?エドワードはどこにいるの?」

「解らない…。さっきエドワードだけ連れていかれた…。」
「話し合いをしている訳ではないの?」
「我々はそのつもりで来たが、向こうはそうじゃないらしい。話など最初から聞く事もなく、いきなり閉じ込められた。エドワードを守ってレオンはこんな…」
「何か条件があったから来たんでしょう?
既に戦争の準備はしている…とか、脅されたの?」


「そうです…戦になれば侵略されて、奪われた土地に住む民が奴隷のような扱いを受ける。今までのガリシナはそうしてきた。それを許す事は出来ない。だからといって、相手の要求を全てのむわけにもいかない…。」

…軍事国家はいくつかあるけれど、全てが
同じじゃない。ガリシナが最悪なだけ。


相手は最初から話なんてする気はなかったのよ。
『話し合えばいい』なんて、何で言ったの…。何を言っても話を聞かない人や通じない人を、今までどれだけ見てきてそんな事が言えたんだろう。

このままではエドワードは殺されてしまう。ううん、絶対に殺されるわ。さらし首にでもされてしまう。

絶対にそんな事はさせないわ!

だからと言って、何か出来る力なんて私にはない…。
いいえ、そんな事はないわ!今の私はガリシナの軍服を着て兵士としているんだから。

「クックさん、この制服の持ち主、階級は何かしら。」
「そのバッジ、残念ながら二等兵だな」
「では私はサナス二等兵ね。」
「何をするつもりだ?」
「ガリシナ兵として、どうどうと邸に入るのよ。」

「ニーナ様!っ何を馬鹿な事を!」
「サナス二等兵よ。敬語もいらないわ。
不自然だもの。」
「…馬鹿な事はするな。」
「クリフ、私にはやるべき事が2つあるのよ。まず、エドワードの様子を確認、殺されそうなら救出!そして、ガリシナの坊ちゃんとエドワードを殴る。拳じゃこっちも痛いから、平手打ちで済ませるわ。」
「何を言ってるんだ…」
「あ!クリフもじゃない。私を放置するというエドワードの愚行を軌道修正しなかったのは職務怠慢よ。」
「……それは自分でも思う。」
「そう、なら後で覚悟しなさい。」
「………」
「ねぇ、待っていれば誰かが助けてくれる、世の中そんなに甘くないわよ。自分で動かない人を、誰も助けてはくれないの。この国で得た教訓よ。」
「…死ぬぞ。」
「クリフ、何もしなければ生きていられるかもしれないわ。けど話も聞かないような相手なのよ。貴方は信用できるの?このままじゃ国民全てが奴隷にされかねないわ。」

「……」

「成り行き任せなんて嫌よ。勝利は自分で
勝ち取るの。では行ってくるわ。エドワードの首が飛ぶ前にね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...