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リード公爵とニーナ2

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「……公爵領の邸の近くに潜り込ませる事くらいは出来る。領内全てではないが兵士が彷徨いている。ハリソン公爵は巻き込まれている可能性の方が高い。」
「邸は拠点なだけなんですね。なるほど。」

「どうやって潜り込むか…。ハリソンの領地にわしの知り合いがいる。見つかったら
『その人を訪ねて来た』と言いなさい。名はクック、住所はシンマッド街12番地、腕にこのしるしを。」

腕に丸くて赤い1センチほどの判をおされた。
「わしの遣いは全てそれをつけて行く。樫の木の側から行くのが1番近い。」

「はい。」

「顔はスカーフを巻きなさい。そうするのが流行っているらしい。」

「あの…」
何か武器になるものを…という前に、机にコトンと短剣が置かれた。

「どこかに仕込んでおきなさい。拳銃は目立ち過ぎるが、君が使えるなら渡しておこう。」

「はい。お借りします。」

「使い方は?」

「もちろん知っています。後いくつかいいですか?…髪を止めるピンを数本とマッチと赤いインクと暖炉のすすを。」

「一体誰にこんな事を。」

「テイラー兄弟に鍛えられました。」

「あの兄弟は……。もうすぐ暗くなる。ここでゆっくり休んでから早朝にでなさい。」

「行けるところまでいって、そこで宿を取ります。」

「そうか。」

「何もかも用意して下さって、本当にありがとうございます。この分は帰ってきたら
エドワードとクリフに100倍で請求してください。」

「ふふ、そうするとしよう。気をつけて。
危険だと判断したら直ぐに帰って来なさい。」

「はい。ありがとうございます。もう1度
あの男を殴ってきます。あ!もしカタサ族の長が乗り込んできたらご免なさい!」

「…それは困ったな。」

族長は何処の国でも怖がられるのね。1度
お会いしたけど、怖い顔をしてたのは覚えているわ。

「…本当に行くのかい?死ぬかもしれないし、捕まって帰ってこれなくなるかもしれない。ここまで用意しておいて何だが…」

「大丈夫です!私の未来にエドワードが必要なのかどうか、心のままに動いてみます!では行ってきますっ!」

まだ何かあったって決まってないもの、くよくよするのは止めよう!
口は達者だし、話し合いでその場をおえるかもしれないよね。
でも人質にはなると思う。
何故今この国を狙ってきたのか…。恐らく
カタサとの水路の事だわ。ガリシナには海路がないから、足掛かりにするのに狙われた。簡単には返事は出来ない。アルデーテが配下になってしまえば、ガリシナが大きくなりすぎる。他の国も狙われる。
けれどここで返事を誤れば、武力行使されかねない。だからエドワードは行くしかなかった。


同行してくれる騎士2人から1馬身ほど後ろにピッタリくっついて、いくつかの街を馬で駆けぬけていった。夜は宿ですごし、途中何度か休憩して馬をかえていっても、次の日の夕方までかかった。


・・・・


「エドワードが必要だから助けに行くんだろうに、あの子は…。しかしあの度胸。脱帽だ。」

ノアール…彼女自身の意志で残ってしまったぞ。

エドワードにくらい訳を話せばよかったものを。何か知らんが、パーティーでニーナの顔が判らないくらいの馬鹿をやらかしてるんだから。

ノワール、寝てる場合じゃないぞ。


「さて、わしらもあの子を見習うとしようか。」
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