結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

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王子様の脱走

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あの噂から3日。

「どうして貴方がここに。」
「ちょっと用があってね。」

私が今いるのは、放置されていたよ。
クリフに『別邸に行くように』って言われた時おかしいと思ったのよね。こんな罠が
あっただなんて。ここで求婚なんてされたら
逃げられないわ。

「私はこれを運べと言われただけなので、これで失礼します。」

「待って!」
「っ!?」
部屋を出る時、エドワードに腕を掴まれた。
「賭けは俺が勝った。違う?」
賭け…そういえばしたわ。『2人きりで会う。』
「わかりました。」
負けたんだから仕方ないよね。

椅子も何もないので、私達は出窓のサンに
腰かけた。

「ソラト君は元気?」
「はい。」
ソラトの事、気にしてくれてたんだ。
「よかった。エドガーの調査も始めたし、
全ての領主に内部捜査する命令はしてあるから。」

それってエドガーの事だけじゃなくて、この国の警察全てって事になるよね。その場だけ治めて終わり、そんな風になるのかと思った。

「ありがとうございます。」
「君の為ではないよ。俺達の怠慢のせいで
冤罪がいくつあったか…。取り返しがつくものでもないけどね。」
「でも、これからは良くなっていきます。」
「そう願うよ。また平手打ちをくらうのは
勘弁だ。」
「ごめんなさい。」
クスクス笑ってくれてはいるけど、許されない事よね…。
「ニナは料理下手なの?」
そういえばソラトが言ってたっけ…
「…味覚音痴では無いわ。」
「2人で会ったら絵を描いてもらおうと思ってたけど、この状況じゃ無理か。」
絵…。
「あれはソラトが大袈裟に言ってるだけよ。」
「ソラト君の言ってた『悪い男』ってまさか俺じゃないよね?」
聞いてるけど、もう本人はわかってるよね。
「王太子様で間違いありません…。」
「………」
「無理やり舞踏会に連れていったり。」
「あれは強引だったと、反省してないでもない。」
「何ですか、その言い方。」
「反省してるよ。事件に巻き込んでしまったし。」
「犯人をあんなに風に蹴ってよかったのですか?」
「駄目だな。でも君が掴まれてるのを見たら、無性に腹がたったから仕方がない。」

仕方ないですませていいのかしら…。

「君は何故会場からいなくなったんだ?」

「知り合いに似ていた人がいたので追いかけたんです。」

「似た人?…それはどこの誰だかわかる?」
「えっと…」
ここにいたメイド…って言った方がいい?
ほぼニーナだって解ってるんだし。
「…君の存在を知ってた人か。」
「はい。」
「そうか、見つかるといいな。」
「はい。」
見つかっても手鏡は帰って来ないと思うけど、望みを捨てるつもりはないわ。
「…殿下はこんな所にいて大丈夫なんですか?」
「駄目だな。」
「では早く帰らないと。」
「折角逃げてきたのに、そんな簡単に帰るのもつまらないだろ。」
「逃げたんですか?そんな事したら…」
「君だって逃げ回ってたのに?」
それを言われると何も言えないわ。



「馬車に乗るまで送るよ。」
「いえ、そんな事をすれば見つかってしまいます。」
「そうなんだが…」
「また来ますよ。…クリフ様が。」

…ニーナじゃなくクリフなのか…。

「…君が来てよ。」

何故私が…?と、聞こうと思ったけれど、聞けなかった。
初めて私だけに『胡散臭い笑顔』以外で笑ってくれたから。

「もう来ません!!さよなら!」
「え…。」

何だか恥ずかしくて、逃げ出してしまった。
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