81 / 187
王子が悪い男2
しおりを挟むボナースに2人を送った後、俺は聞いた。
「…クリフ、来週ニーナに会って何をするつもりだった?」
「エドワードがニーナと話していた件を進めようとしただけだ。」
「婚約破棄か…」
「その話があった事を俺は聞いてない。わざとか?」
「……そうだ。」
「悪いが出来る所まで話は進める。」
「しなくていい。」
「『婚約は破棄するつもりだ』と言ってなかったか?」
「…妹だった場合だ。」
「ありえないだろうが、先手は打たせてもらう。陛下がなかなか真実を言わなければ間に合わないかもしれない。だから最悪の事態に備える。」
「クールに言うか?」
「それが1番効率的だ。家督を継がずに働く変人は、家名も仕事も超一流だからな。」
「俺には敗ける。」
「……張り合うな。」
「ニーナは妹じゃない。」
「俺だって思ってるさ。『家族』という言葉を聞かなかった事にして、冷静に考えよう。陛下はニーナと何処かで会った事があるのか?可能性はパーティーだ。」
「そうは言っても、他国の要人を招いたり招待される場で、子供が来ていても王公族くらいでだ。伯爵が子供を連れて来れるような場じゃない。」
「なら何処でニーナの存在を知った?」
「…そこが怖い所なんだ。わざわざ探すという行動をとるのに、理由が見当たらない。」
「はぁ…。陛下は何故会ってくれないんだ?」
「それが解るなら苦労はしない。」
今日1日の仕事を今から片付けないといけないし、頬は叩かれるし、良い事がない。
「悪い男とは俺の事か…?」
「それしか無いだろ。今のお前はボナースの子達の敵だ。」
「……」
自業自得ではあるが。『悪い男』って言い方酷くないか…。
・・・・
最近、週2日は泊まりでマール君のもとへ来る事になって、さらに毎日が楽しいわ。相変わらず『虫』には悩まされ中だけれどね。
「ニナ、ちょっといいかい?」
「はい。」
伯爵に呼ばれるなんて、何かしら。
「この前の水路の話が今回まとまりそうでね。是非また通訳をしてほしい。」
どう考えても役に立ってるとは思わないけど…、水路を増やすって大きな仕事だし成功してほしいわ。
「私でお役に立てる事があるのなら、お手伝いさせて頂きます。」
「有り難う。」
「日は、いつでしょうか?」
「明日なんだ。急にすまないね。」
明日って急すぎる…。
とりあえず、失敗しないようにしなきゃ。クール様がいれば、きっと大丈夫だよね。
次の日
会議は伯爵邸ではなく、別の場所で行われる。それは別に構わないのよ。けど、私の問題はそこではないの。
「ボナースの件、本当にありがとうございました。エドワード王太子様。」
どうして貴方がいるのよ。
「いや、当然の事をしたまで。本来はこちらが謝るべきだ。」
「お気遣い感謝いたします。」
「また経過を伝えるよ。ところで、伯爵は何処にいるかわかる?」
「いえ…さっきまではいたのですが。今日はエドワード様も会議にご出席ですか?」
「ああ、おそらく今年の我が国最大の利をもたらす事業がこれだ。それくらい大事な場だからね。」
そんなに凄い話を何となく通訳してたなんて…。相手がクール様でよかった!
「まあ、クール・テイラーを連れてる時点で相手が本気なのはわかる。伯爵は取引には向いているが駆け引きには弱い。こちらも本気を出すなら今日だ。ちょっと頑張ってみるよ。」
…不覚にも少し格好いいと思ってしまったわ。
85
お気に入りに追加
4,762
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◯完結まで毎週金曜日更新します
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる