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助けてほしい婚約者2

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馬車に乗る時は、雨はましになった。
「おじさんオギにお願い。」
「了解。」

馬車を何度か乗り換えて、『カペット村』という小さな村にいくつもりなんだけれど、宿があるか心配だわ。

「ねぇ、おじさん。カペット村に宿はある?」

「ないと思うねぇ。小さな村だから。」

「では、その手前の街でおろしてくれるかしら。」

「あいよっ!」



・・・・


「エドワード、ラドクリフ伯爵が至急会いたいそうだ。通していいか?」

「ああ。…『ニナが逃げた』っという内容だと思うのは俺だけか?」
「確実にそうだろ。」
「監視は?」
「連絡は入っていない。」
「捜索準備を。この前の姿絵も用意して、足りないなら追加で描かせてくれ。」
「もう、手配済みだ。」
「そうか…」

マール君の教育係りだけじゃなく、ボナースでも働けるようにすれば喜ぶと思ったんだがな…

「ラドクリフ伯爵。至急…とは、何があったんです?」

「ニナが…家からいなくなってしまったんです。」

案の定…

「どうして急に?」
「…それが、ニナに婚約の申し込みが」
「…婚約?その相手は。」
「…ヒル侯爵の三男のマリオ様です。」

なるほど、伯爵からすれば断るのは難しい。

「ニナは断ったんです。『自分はこの国の者ではない』『婚約者がいる』と言って。しかし、既に侯爵が『息子がニナと結婚する』と吹聴しておりまして…」

他国の女、婚約者がいる。その言葉に驚いたが、侯爵の行動への苛立ちはそれに勝《まさ》った。

「本人の意思なく…そんな行動を?」
「…はい。」

ふざけるな…俺の婚約者だぞ…。
とりあえず、今はニナの居場所だ…

「ニナが頼る場所はあるのか?ボナース以外で。」

「聞いた事がありません。」

「そうか…。」

「申し訳ございません!」

大きく頭を下げる伯爵に、申し訳なくなった。

「気にしないでくれ。こちらが無理を言ったまで。それに『教育係りを嫁に』…と、侯爵が言うなんて、予想出来る事じゃない。」

「ニナは……」

「此方で探そう。この件に対して伯爵が害を被る事があれば、全て俺が対処する。一先ず侯爵には俺から言っておこう。それから、マール君には『俺とニナは一緒に仕事に行ってるから、帰ってきたら遊ぼう』…と言っておいてほしい。」

でなければ、また泣き止まない。



伯爵が帰った後、すぐに捜索を開始させた。

「はぁ…どうしてすぐに逃げるって発想になるんだ…もうすぐ夜だぞ。まぁ、宿ぐらいとるだろうが。」
「あのはこの国に来た時から1人だ。助けてくれる人がいないなら、出来るのは逃げる事だけだ。」

「…とりあえず侯爵を呼べ、今すぐにだ。無理ならそのマリオとかいう奴でいい。夜中であっても連れて来い。」
「エドワード、落ち着け。」
「落ち着いてる。」
「落ち着いてないだろ。侯爵を呼んで何を言うつもりだ?『俺の婚約者だ』とでも言うのか?」
「そうは言わない。ただ、腹が立って仕方がない。俺のニーナだ。」
「…それは婚約者としてか?それとも個人的な独占欲か?」
「は?」
「『俺のニーナ』だっていう意味だよ。どう思って言ったんだと聞いてる。」
「さぁ、ただ腹が立っただけだ。」
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