結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

文字の大きさ
上 下
68 / 187

助けてほしい婚約者

しおりを挟む
「ただいま戻りました。」

「ニナっ!お帰り!マールは何か失礼な事をしてなかったかい?」
「全く。物凄く仲良くなって『また遊ぼう』って約束までしてましたから。」
「はぁ…よかった…。」

息子と教育係りだけでエドワードと会ってたんだし、伯爵も気が気じゃないよね。

本当に遊んだだけで、ニーナの事には一切触れてこなかった。調子が狂う。
何が目的なのかしら…。余計に怖いよ。



それから1週間後。
夜、私は伯爵に呼び出された。

「……へ?」

「君を息子の婚約者に…と、ヒル侯爵から申し込んで来た。」

ちょっとまって…
エドワードから必死に逃げているのに、別の婚約?冗談じゃないわ…。それならまだエドワードの方がましよ。
国との関係にヒビも入らないし。それになら爽やかだもの。

「婚約…と言っても、私は貴族ではないのですが…。」

「公爵のパーティーで君に一目惚れしたらしくてね。侯爵からは『三男だし相手に身分は求めない』と。」


三男…そりゃ上2人と扱いは違うと思うけど、それでも侯爵家の子。相手が教育係りでもいいなんて事はないよね。縁談だってあるはず。
一目惚れが嘘なら、考えられるのは伯爵との繋がり、あわよくばエドワードとリード公爵とも接触できる。
って、そんな訳がないよね。さすがに浅はか過ぎる。

こんなのあり得ないでしょ…。この国に来てから、不幸に見舞われ過ぎだわ。

お断りします…。って言うにしても、理由がいるわ。『教育係りが楽しいから…』理由にならない!!

『実は私には婚約者がいるんです』で断れる?

伯爵が断わりきれる相手なのであればいいけど…。

「返事はすぐで無くてもよろしいですか?」

「ああ、ゆっくり考えてくれて構わない。」

「ありがとうございます。では、失礼します。」

何だか無理そうだわ…。
私が断らなかったから、安心していたもの。侯爵家の三男…どこかのご令嬢と結婚すればいいのに!

助けを求められる相手は、エドワードしかいないわ。でもそんな事はしたくない。都合がよすぎるもの。
というか、『友達だから助けて…』なんて言える機会すらないわね。向こうからアクションがなければ会える相手じゃないんだから。

…どうしよう。
クール様に相談するにしても、この国にいないわ。ステーシーは?商売上、敵は作りたくないよね。


またしても孤立無援だわ。

いざとなったら逃げるしかない。けどボナースはもう無理。住み込みで働ける所じゃないと。

恩を仇で返す形になってしまうけど、伯爵ごめんなさい!
私は自由が欲しいの!楽しく暮らしたいの!

裕福な暮らしと身分が欲しいなら、エドワードの胸に飛び込んでます。
 


次の日、

早朝から職探しへ。
場所はこの前と違う街。女性が働けそうな職種が多いけど、住み込みでってなると話は別よね。
そんな上手く見つかるようなら、私は既に伯爵家を出ているわ。

とりあえず『私には婚約者がいる』っとお断りして、断れないなら出て行こうと思う。

う~ん…食堂、ウェイター。
今なら出来る気がする。


そんな日を繰り返して3日。

「……」

侯爵の息子だと思われる男性が訪ねてきた。

綺麗にしてるけれど体はヒョロヒョロでスポーツなんてする事も無さそう。23才になっても特にこれといった仕事もせず…ハッキリ言って私の大嫌いなタイプよ。

「ニナ、すまない。」

…もしかして、今日来るの知ってたとか?だったらさすがに酷すぎるよね。

「やあ、ニナ!はじめまして。」
初対面の貴方に『ニナ』って呼ばれたくないわ…。

「返事を聞かせて貰いたい。」

私、まだ貴方の名前も聞いてないんだけど…。
婚約の返事ね。
「もう少し待っていただくよう伝えておいたのですが、聞いてませんでしょうか?」

伯爵が私にが来る事をあらかじめ伝えてないと言う事は、自分では返事を出来ない相手…家柄。

「申し訳ございませんが、私はこの国の者ではありません。既に婚約者もいますのでお断り致します。」
私が言うと、相手の形相が変わった。
「俺が教育係りでもいいと言っているのに、母国へ帰るだと!!」
「ええ。」

あぁ、こういう我が儘なのも、結婚出来ない 1つね。その年で感情をコントロール出来ないなんて…。

「来月には帰ります。」
「そんな事は関係ない!」

イライラするわ。

それからはもう怒って話にならなかったのよね。
『俺はヒル侯爵家の者だ。』とか、『お前みたいな女を嫁にもらってやるんだから感謝しろ』とかね。お断りしてるのに、何で感謝しなきゃいけないのかしら。


「ニナ…申し訳ない…。」
「まさか、本人が来るとは思っていませんでしたが、お断り出来ましたので。」
「…それが、話は進んでいるようなんだ。」
「…どういう事でしょうか?返事をしたのは今ですが。」
「進んでいる…というか、『結婚する事になった』と、色々な所で言っている。どうにか結婚させたいらしい。教育係りでも君の存在は有名だ。」

エドワードと舞踏会に行ったからだよね。

「私はこの国の者で無いのです。勝手に結婚など進められても困ります。」
「……わかった。」
「では、失礼します。」

あれは、絶対わかってないわ。その場しのぎ。でなければ、今日来る事を黙っているはずがないもの。

出ていこう。
マール君をまた泣かせてしまう事になるけれど、今回はそちらの勝手な都合のせいだしね。貴族との接触は嫌だ…と言っておいたわ。婚約の話なんて論外よね。


次の日

夜が明けてすぐ、手紙を残して伯爵邸を出た。

どしゃ降りで、殆んど人がいないし視界も悪い。監視がいても見付かりにくい。逃げるにはもってこいの日ね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

運命ならば、お断り~好きでもないのに番だなんて~

咲宮
恋愛
 リシアス国の王女オルラは、母を亡くした日に婚約者が自分を捨てようとしている話を聞いてしまう。国内での立場が弱くなり、味方が一人もいなくなった彼女は生き延びるため亡命することにした。君が運命の人だと言って結婚した父も、婚約した婚約者も、裏切って母と自分を捨てた。それ以来、運命という言葉を信じなくなってしまう。「私は……情熱的な恋よりも、晴れた日に一緒にお茶ができるような平凡な恋がしたい」と望む。  亡命先に選んだのは、獣人と人間が共存する竜帝国。オルラはルネという新しい名前で第二の人生を開始させる。  しかし、竜族の皇太子ディオンに「運命の番だ」と言われてしまう。 「皇太子ディオン様の運命の番とは、誰もが羨む地位! これ以上ない光栄なことですよ」と付き人に言われるも「ごめんなさい。羨ましくも、光栄とも思えないんです。なのでお断りさせていただきますね」と笑顔で返すのだった。 〇毎日投稿を予定しております。 〇カクヨム様、小説家になろう様でも投稿しております。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

処理中です...