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メイド長と婚約者3

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「何を根拠に…」

「…何が違うって、筆跡よ。」

「貴女にそんなもの解るわけがないでしょう。」

「用紙の全ての字を判断しろと言われれば難しいけれど、そこに書かれている伯爵のサインを見ればわかるわ。サインだけは絶対他の人に書かせたりしない。本人が見れば一目瞭然よ。」

はじめからこの用紙が本物なら、偽造のサインなんて必要ない。


エイダ本人が何も知らないなんて事もあり得ない。受取書を伯爵に渡すのはエイダなんだから…。

「貴女はこれを見せても驚かなかった。この存在を知ってるかどうか、私はそれを試したのよ。」

筆跡…前に受取の控えを2枚持って帰った。その時気付いたのよ。

残り2人の男は、エイダが口を割れば解るよね。

「明日伯爵の所へ行くわ。その時までに私に勝つ算段、…この先をどうするか決めるといいわ。…あと、お金は全額置いていきなさい。」

エイダは青ざめて帰っていった。

多分、今日にでも邸からでていくでしょうね…。エイダは…。


「ニナ…」

院長には言わなきゃ…

「私はラドクリフ伯爵のご子息、マール君の教育係をしています。理由があってここに逃げ込んで来たのですが、帰る時が来てしまいました。」

「……」

「私が教育係である事は、皆に言わないで下さい。」

「ああ、わかった。それにしても、さっきは格好よかったよ。」

院長にクスクス笑われた。

「そうでしょうか…」

可愛げがないとも言えるけど…

「あっ!休憩!院長、休憩です!お茶を入れるの手伝ってください!」

「え?ああ…」

「私は皆を呼んでくるので!」

バタバタと駆けているニナを見て

「強い…」

と、院長は思った。



その日の夕食。

またパンとスープだけだったけれど、今月からは以前のように色々食べられるよね。

「皆、聞いてほしい事があるの。」

「なーにー?」
「おかわりか?」
皆クスクス笑いながら話している。これを言うのはとても辛い。

「明日、ここを出る事になったの。」

「……」
「……何で?」
「オレたちのことキライになったのか?」

「そうじゃないの。」

「イヤ!ずっとここにいてよ!」
「勉強も、もっと教えてよ。」
「そうだよ!変な奴からだって皆でまもるから。」

「ありがとう。けど絶対また来るから、そんな悲しい顔はしなくていいのよ。」

「ぜったい?…ほんとう?」

「ええ、何があったって来るわよ。」

そのうち脱走するつもりだしね!

この子達もだけど、マール君の事が気になって仕方ないし、1度帰らないと!
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