結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

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メイド長と婚約者

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次の日

本日の授業科目は数学と音楽。

歌をうたうとストレス発散にもなるし、楽譜を見て音符を覚えたりできる。後は何か楽器でもあれば…なんて贅沢だよね。

そろそろ1時間、休憩だわ。
お湯を沸かしにキッチンに来ると、裏口から院長の声がする。
何だか必死だわ…。


「どうしても伯爵に1度お会いしたいんですっ!」
「だからさぁ、言ってはいるけど無理なんだよ。」

そうだ、今日が支援金を持ってくる日ね。持ってきるのは小さくてヒョロっとした男。あれがショーンね。きっとエイダもいるよね。

私がいる間に絶対何とかしないと。信頼の厚いエイダがお金を盗んでいるなんて、絶対に信じて貰えないもの。
けれど、私の味方の方が力が強いという事を思い知るべきね。

「院長、サインする書類を見せて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ああ、ニナ。これだよ。」

…本当にペラペラの紙ね。よくこんな物を堂々と持って来れたものだわ。
貴族なんてプライドの塊よ。伯爵もそれは例外じゃない。人目に触れる可能性のある物に絶対手を抜くはずがない。大切な書類に安物の用紙を使っているのを見られただけで、ラドクリフ家は笑い者にされるわ。それくらい、メイド長なのに気がつかないのかしら。
きっとボナースの人にはわからないって、たかをくくってたのね。
けれど、もと伯爵令嬢の私に、その辺りの知識で勝てるはずがないのよ。

窓から見えたのはやはりエイダ。まさか盗みを働くのが彼女だとは思いたくなかったんだけど…。簡単にお金を手に入れられる方法を知ってしまったら、もうやめられないわね。

「ありがとうございます。」

私が返すと院長はサインをして、また私はそれを受け取った。

「この用紙は私が直々に持って行くわ。面白い事になりそうね。楽しみだわ。」

「は…?何を意味の解らない事を。」

少しオドオドしだしたわ。やはり、本物ではないわね。この用紙は。

「そんな事出来るはずないだろう。お前なんかが伯爵に会えるはずがない。」

「あら、そうかしら?だったら、『ニナ・スミスが持っていく』と、エイダに伝えてくれるかしら。そう言えば彼女には通じるわ。」

「………」

私がそう言うと、男は怯んでエイダのもとへかけていった。

話を聞いても焦る様子はない。さすがはメイド長。ちょっとした事でオロオロはしていないわ。信じたくはないけど、彼女がボスね。

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