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優しくはない王子

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「ニナに逃げたられただと?」

俺はレオンに聞き直した。

「はい。一緒にいた護衛を撒いて…申し訳ございません。」
「伯爵の所には?」
「帰っていませんでした。」
「手のあいてる兵はニナ・スミスの捜索。それからステーシー・ブラウンが運営している店は全部おさえろ。」

「承知しました。では、失礼致します。」

パタン

レオンがいなくなって暫くして、窓からの景色を見た。

もう夜だ。
どこか行く宛があればいいが…。まぁ俺から逃げるにしても、行く宛もないのに逃げるような愚かな女では無いはずだ。
今日の様子を見ていれば、俺を嫌っているのはわかるが、他にも見つかりたくない理由がある気もする。

男…がいれば逃げられるな。その男の家に逃げ込まれていれば、今の時点では見当もつかない。
それに、俺から逃たい理由にもなる。

「はぁ…」
シャロンのような簡単な女であれば、すぐに見つけられるのだが。金があるところにだけよって行く。
まぁ、そこを利用しようと付き合ったが、何の役にも立たなかった。今じゃ邪魔でしかない。

俺に悪評がたてば、それだけでよかった。


ここは弟が継ぐべき国だ。

だが、ここまで頑なに俺に継がせようとするのは計算外だった。国が傾きすぎれば本末転倒だ。

ニーナも王位も何をどうしたものやら。

妹…本当にそうなのだろうか。
その辺りを確かめたいが…。連れてきた本人が病気だ。
父上は面会できないほど病状がよくないとは聞いていないが。

妹でないのであれば、この際結婚でもなんでもしよう。だが、結婚してから兄妹だとわかってしまえば、ニーナが可哀想なだけだ。もし子供がいればなおのこと。

2ヶ月放置…
もし好意を寄せてしまえば怖い、だから会わなかったのもある。一目で惚れてしまう事などないだろうが…。

…面倒な事に、俺はニーナを面白いと思い始めている。何か言えばスマートに対応するが、俺にはむきになっているようにしか見えない。それが面白い。俺に返してくるあの胡散臭い笑顔も面白い。
どんな気持ちであれ、興味を抱いている。


ニーナが好きになる男…。どんな者か見てみたいものだ。

・・・・

「ねえ、ニナさん。どうしてここに来たの?」
「そのお洋服可愛いね。」
「抱っこして。」

どういう事かしら…。意外にも子供たちが話しかけてくるのだけど。
これがリト君の言ってた、『私を嫌ってない子達』…15人中6人…予想以上に多い!!

抱っこ。そう言うのはマール君くらいの女の子。
「もうすぐご飯食べ終わるから、それまで待っててね。」
「はぁーい。」
「あっ!じゃあオレも!」
「わたしも!」

抱っこすると人気者になるのかしら…。

「はい、おしまい、」
…疲れた。舞踏会からの逃走、掃除、抱っこ。

「おねぇちゃん、これ読んで。」

「…うん。」

渡されたのはマール君が好きだった絵本。

マール君、淋しいがってないといいけど…。

そう思いながら、本を読んであげた。

…5冊も読まされるなんて思わなかったわ。

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