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王子様とクール様
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ついに舞踏会の日。
これ…ものすごく高級なドレスだよね…。
着てるだけでも恐ろしいわ。破れたりしたら弁償って事にならないわよね?
「ニナ様、支度が整いましたので、こちらでエドワード殿下をお待ち下さい。」
そう言って、ささっと皆下がってしまった。
コンコン
「エドワードだ。開けても構わないか?」
「はい…どうぞ。」
一応ドレスを借りるんだからお礼を言わなきゃ駄目よね。
「素敵なドレスをご用意下さり、ありがとうございます。」
「よく似合っているね」
「ふふ、ありがとうございます。」
絶対思ってないよね。この胡散臭い笑顔!
私の正体を知りたいんでしょうけど、
絶対最後までニナ・スミスでやり過ごしてみせるわ!
「では、行こうか。」
「え…一緒に会場に行くんですか?」
「その為に迎えに来たんだが、何か問題でも?」
「いいえ。」
問題ありすぎよっ。私は目立ちたくないの!
…そんな事、王子相手に言えないよね。
私達が一緒に会場に入ると、皆の会話が1度止まった。
シャロンをつれてくるのを期待してた人もきっといるよね。噂の恋人を。
他の女性を連れてくるにしても、侍女を連れてくるなんて…。下手したら恋人疑惑が浮上するよね。それだけは絶対嫌よ。
それにしても、私が知っている人って誰なの?今が出席者を確認する最高の機会だわ。
くるりと見渡すと本当にクール様がいた。
クール様…ものすごく顔がひきつってる…。
「あまり余所見はよくないよ。ニーナ。」
「…私はニナだと何度申し上げれば信じて頂けるのですか。」
「さあ。」
この余裕の笑み…本当に気付かれてる?
大丈夫だよね。ここに私の家族でもいないかぎり……いないよね…?
「君は…踊れる?」
「え…?」
ここで踊れないって言ってもいいのかしら。侍女ってダンスくらい出来るものなの?教育係は?…出来ると言った方が無難だよね。
「…一応は」
「そう、よかった。では一曲お相手願えますか?」
「ええ、よろこんで…」
笑顔よ!例え侍女でもラドクリフ伯爵の名を背負ってるんだから!
踊れるけど…中央で私達が踊るのを披露する…なんて、聞いてないわよ。
踊り始めて暫くして耳元でボソッと呟かれた。
「やっぱり来たね」
「やっぱり?」
「クールだよ。」
「…っ!?」
「『ニナ』が出席するって聞いたら、絶対来ると思ったよ。」
…どういう事?
「クール様がいらっしゃるのですか?」
「ああ、こちらからは招待状は出していないけど、やっぱり彼なら簡単だったみたいだね。ここに来るくらい。」
「そんな事が出来る人だなんて凄いですわね。」
「彼が君の知る人の1人だよ。」
「ええ…伯爵の家で2度ほど顔をあわせましたから。」
「ニーナ・サナス、君の幼馴染み。だよね。」
「私はニナ・スミスです。」
…最初から『知ってる人』にクール様が含まれていた。こんなの予想してなかったわ…。
ステーシーはクール様と仲が良いから予想は出来る。けどこの人は違う。クール様の性格を把握して行動を予想してた…?
でも、『伯爵の侍女がいるから来るだろう』なんて想像、普通しないよね?という事は、クール様は別の誰かに会いに来ている…。それがニーナで、行方不明の事も全部知ってるだろう…って予想した事になるよね。
ううん、きっと嘘よ。偶然来たのを見つけて、上手く言ってるだけよ…。
「…殿下はどうしてニーナ様を探してるのでしょうか。」
「この前君に言われた通りだからだよ。」
「…婚約者と妹ですか?」
「そう、婚約者の方のね。俺に妹はいないから。」
まさか、本当の事を言ってくるなんて!本当に私がただのニナだったらどうするつもり。もしかして妹という存在を否定する為かしら…。
「侍女の私が婚約者だなんて。面白い事をおっしゃるのですね。」
私が言うと、胡散臭い笑顔で返してきた。
何で急に強気で攻めてくるの?この前までと別人じゃない。
「ダンスが終わったら、招待客に挨拶に行く。君も付いてきて。」
「はい。ご一緒いたします。」
一人一人に顔を見せるつもりね。必ず名前を名乗らないといけないもの。
私を知っている人に嘘はつけない。それが普通だよね。けど私はニナ・スミスを貫き通すわ。
……一体誰に合わせるつもりなのかしら。
とても不思議なのは、ここまで考える人が、私を放置していたら大変な問題になると何故思わなかったの?
それに何故シャロンみたいな人と付き合おうと思ったのかしら…。
言い方はよくないかもしれないけど、あの女は我が儘を聞いてくれるお金持ちなら誰でもいいんだと思うのよね。
でなければ、招待されてないパーティーに着飾ってくる必要は無いもの。王子が自分に興味を持たなくなった時の為に、誰か探したかったはずよ。
もしかして、あまり上手くいってないのかしら、この2人。
それは駄目よっ!!
子を産んでもらうまでは別れないで…!王妃として頑張ってください!貴女の思うままにしてください。
シャロンじゃなくてもいいの。エドワードが誰かを好きになって、『ニーナなんていらない』って思ってくれればいいのよ。
この際世継ぎとまでは言わないわ。
エドワードが『好きな女性と結婚したいから、王位は誰かに譲ります!』って言うくらい好きな人をつくって貰えば、めでたく婚約解消!
私はこの国で楽しく暮らせるんだよね。
そうよ…。人を放置するような人だもの、
責任感もなく投げ出すかもしれない。
…けれど、私の存在意義によって話は変わって来るよね。
私の国でもそれがわからない…と言ってるなら、クール様からも情報は入らない。
「…ナ、ニナ」
「…っはい。何でしょうか?」
「君は考え事をしながらでも踊れるほど慣れてるんだね。」
「…え?」
「何度か話しかけたけど、気がつかなかったみたいだから。」
「申し訳ございません!曲に合わせるのが
精一杯でしたので、気がつきませんでした。」
本当に…全然気づかなかったわ…。
ダンスも終って、私達は何人かに挨拶に行く。
絶対、誰がなんと言おうとしらばっくれる!
私は『ニナ・スミス』よ。
これ…ものすごく高級なドレスだよね…。
着てるだけでも恐ろしいわ。破れたりしたら弁償って事にならないわよね?
「ニナ様、支度が整いましたので、こちらでエドワード殿下をお待ち下さい。」
そう言って、ささっと皆下がってしまった。
コンコン
「エドワードだ。開けても構わないか?」
「はい…どうぞ。」
一応ドレスを借りるんだからお礼を言わなきゃ駄目よね。
「素敵なドレスをご用意下さり、ありがとうございます。」
「よく似合っているね」
「ふふ、ありがとうございます。」
絶対思ってないよね。この胡散臭い笑顔!
私の正体を知りたいんでしょうけど、
絶対最後までニナ・スミスでやり過ごしてみせるわ!
「では、行こうか。」
「え…一緒に会場に行くんですか?」
「その為に迎えに来たんだが、何か問題でも?」
「いいえ。」
問題ありすぎよっ。私は目立ちたくないの!
…そんな事、王子相手に言えないよね。
私達が一緒に会場に入ると、皆の会話が1度止まった。
シャロンをつれてくるのを期待してた人もきっといるよね。噂の恋人を。
他の女性を連れてくるにしても、侍女を連れてくるなんて…。下手したら恋人疑惑が浮上するよね。それだけは絶対嫌よ。
それにしても、私が知っている人って誰なの?今が出席者を確認する最高の機会だわ。
くるりと見渡すと本当にクール様がいた。
クール様…ものすごく顔がひきつってる…。
「あまり余所見はよくないよ。ニーナ。」
「…私はニナだと何度申し上げれば信じて頂けるのですか。」
「さあ。」
この余裕の笑み…本当に気付かれてる?
大丈夫だよね。ここに私の家族でもいないかぎり……いないよね…?
「君は…踊れる?」
「え…?」
ここで踊れないって言ってもいいのかしら。侍女ってダンスくらい出来るものなの?教育係は?…出来ると言った方が無難だよね。
「…一応は」
「そう、よかった。では一曲お相手願えますか?」
「ええ、よろこんで…」
笑顔よ!例え侍女でもラドクリフ伯爵の名を背負ってるんだから!
踊れるけど…中央で私達が踊るのを披露する…なんて、聞いてないわよ。
踊り始めて暫くして耳元でボソッと呟かれた。
「やっぱり来たね」
「やっぱり?」
「クールだよ。」
「…っ!?」
「『ニナ』が出席するって聞いたら、絶対来ると思ったよ。」
…どういう事?
「クール様がいらっしゃるのですか?」
「ああ、こちらからは招待状は出していないけど、やっぱり彼なら簡単だったみたいだね。ここに来るくらい。」
「そんな事が出来る人だなんて凄いですわね。」
「彼が君の知る人の1人だよ。」
「ええ…伯爵の家で2度ほど顔をあわせましたから。」
「ニーナ・サナス、君の幼馴染み。だよね。」
「私はニナ・スミスです。」
…最初から『知ってる人』にクール様が含まれていた。こんなの予想してなかったわ…。
ステーシーはクール様と仲が良いから予想は出来る。けどこの人は違う。クール様の性格を把握して行動を予想してた…?
でも、『伯爵の侍女がいるから来るだろう』なんて想像、普通しないよね?という事は、クール様は別の誰かに会いに来ている…。それがニーナで、行方不明の事も全部知ってるだろう…って予想した事になるよね。
ううん、きっと嘘よ。偶然来たのを見つけて、上手く言ってるだけよ…。
「…殿下はどうしてニーナ様を探してるのでしょうか。」
「この前君に言われた通りだからだよ。」
「…婚約者と妹ですか?」
「そう、婚約者の方のね。俺に妹はいないから。」
まさか、本当の事を言ってくるなんて!本当に私がただのニナだったらどうするつもり。もしかして妹という存在を否定する為かしら…。
「侍女の私が婚約者だなんて。面白い事をおっしゃるのですね。」
私が言うと、胡散臭い笑顔で返してきた。
何で急に強気で攻めてくるの?この前までと別人じゃない。
「ダンスが終わったら、招待客に挨拶に行く。君も付いてきて。」
「はい。ご一緒いたします。」
一人一人に顔を見せるつもりね。必ず名前を名乗らないといけないもの。
私を知っている人に嘘はつけない。それが普通だよね。けど私はニナ・スミスを貫き通すわ。
……一体誰に合わせるつもりなのかしら。
とても不思議なのは、ここまで考える人が、私を放置していたら大変な問題になると何故思わなかったの?
それに何故シャロンみたいな人と付き合おうと思ったのかしら…。
言い方はよくないかもしれないけど、あの女は我が儘を聞いてくれるお金持ちなら誰でもいいんだと思うのよね。
でなければ、招待されてないパーティーに着飾ってくる必要は無いもの。王子が自分に興味を持たなくなった時の為に、誰か探したかったはずよ。
もしかして、あまり上手くいってないのかしら、この2人。
それは駄目よっ!!
子を産んでもらうまでは別れないで…!王妃として頑張ってください!貴女の思うままにしてください。
シャロンじゃなくてもいいの。エドワードが誰かを好きになって、『ニーナなんていらない』って思ってくれればいいのよ。
この際世継ぎとまでは言わないわ。
エドワードが『好きな女性と結婚したいから、王位は誰かに譲ります!』って言うくらい好きな人をつくって貰えば、めでたく婚約解消!
私はこの国で楽しく暮らせるんだよね。
そうよ…。人を放置するような人だもの、
責任感もなく投げ出すかもしれない。
…けれど、私の存在意義によって話は変わって来るよね。
私の国でもそれがわからない…と言ってるなら、クール様からも情報は入らない。
「…ナ、ニナ」
「…っはい。何でしょうか?」
「君は考え事をしながらでも踊れるほど慣れてるんだね。」
「…え?」
「何度か話しかけたけど、気がつかなかったみたいだから。」
「申し訳ございません!曲に合わせるのが
精一杯でしたので、気がつきませんでした。」
本当に…全然気づかなかったわ…。
ダンスも終って、私達は何人かに挨拶に行く。
絶対、誰がなんと言おうとしらばっくれる!
私は『ニナ・スミス』よ。
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