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非常事態の婚約者
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「マール君、今日はロンのところへ遊びに行こうか?」
マール君はコクコクと嬉しそうに頷いた。
ロンは伯爵邸の庭師。奥様が大切にしている庭の草花は全てロンが管理しているんだよね。いい腕をしてると思うわ。
何故マール君をロンのところへ連れていくか…もちろん虫を一緒に見てもらうため。朝、既にロンに言ってあるから、スコップや網をしっかり用意してくれている。
私とデクスターさんは…虫が苦手だからね。
最近マール君は観察ノートを編集して昆虫図鑑を作ってるわ。子供が描いた絵だから判断をつけられない虫もあるけど、隣に書いてある説明は物凄く綺麗な字で、難しい単語もスラリと書かれているわ…
凄いわ…マール・ラドクリフ様。
何故それを作るのか聞いてみたら『秘密』と笑顔で返ってきた。
可愛いわ…
その顔を見ているだけで、私も嬉しくなった。
「ニナ!大変よっ!!貴女一体何をしたのっ!!」
「え?あの、マール君と虫を観察に…」
「そういう事じゃないのっ!早く来てっ!」
「ちょっと、何ですか一体!?」
私の手をぎゅっと握って、マール君も一緒についてきた。
「………」
「久しぶりだね。」
そりゃ、皆焦って当たり前だわ。
「お久しぶりです。エドワード殿下」
何でいるの…。
「その子がマール君かい?」
「ええ。」
話を続けようとすると、デクスターさんがマール君を抱っこして連れて行ってしまった。
「伯爵から聞いたんだが、君は『カタサ』の言葉を使えるそうだね。」
「っ!?…教育係として学びましたから。」
これは不利な情報をつかまれてしまったわ。
「今度、大きくは無いが舞踏会を開く事になってね。実はそこにはカタサからの客人もいる。少し世間話に付き合ってくれる人を探していたんだよ。」
だから何?
「そうなのですね。殿下が開くのであれば素晴らしいものになりますわ。」
「より素晴らしいものにする為に、君を招待するよ。」
は…?
「私はただの教育係ですが…」
「だが、公爵のパーティーには来ていたね。俺が主催するものには出席出来ないと?」
この人…本当に嫌な男だわ……。
「ありがとうございます。招待頂けるなんて、とても光栄です。」
「そう、嬉しいよ。」
ここでは伯爵の手前、それ以外の返事は出来ないじゃない…。
「今回は伯爵は招待客に含まれていない。迎えを寄越すよ。」
逃げ場が無くなりました!
白旗だわ…。
伯爵がいなければ、私は誰を頼りにすればいいの?
王族に招待されるなんて、それだけで注目されるわ。しかも、恋人のいる男が招待してるのよ…。
「きっと君の知ってる人も来ると思うよ。」
何、どういう意味?
「…私の知り合いで、殿下の舞踏会によばれる者がいるとは思えませんが。」
「少なくても2人はいると思うよ。」
「…2人」
「ああ。では、また後程、招待状を送るよ。」
……ちょっと待って…知ってる人って誰なのっ!?
それがわかるって事は、私が誰だか既にわかってるって事?じゃなきゃ判断しようがないよね?
エドワードが帰る前に確認しないと…
「殿下…」
「ん?何かな?」
何…その胡散臭い余裕の笑みは…。
「その招待状には、招待客名簿はありますか?」
「なぜ?そんな事を?」
「どのような方がいらっしゃるのか、予め確認したいと思っただけです。」
「知る人がいないのであれば、見ても仕方ないよね。」
ああ言えばこう言う…。
「伯爵の顔を汚す事になりかねませんので。」
「では伯爵には送るよ。誰がくるのか聞いてみるといい。俺に招待されるような者はニナの友人にはいないのだから、個人の名前をあげて聞く事は出来ないと思うけどね。」
これは、教えるな…と、一筆添えて送るつもりね…。
「では、俺はここで失礼する。会えるのを楽しみにしてるよ。ニナ様。」
永遠に会いたくありません。
「そう仰有って頂けるなんて、私は幸せ者ですわね。」
「男なら皆そう思うよ、君は綺麗だからね。」
「お世辞でも嬉しいですわ。」
心にもない事を…その胡散臭い笑顔でよく言えたわね!
シャロンを連れていけばいいでしょ!私はいつでもどこでも2人を応援中よ。
けれどここは伯爵邸…シャロンがどうのと強気発言は出来ないわ…。私の言葉1つで大変な事になりかねないもの。
大きな馬車に乗って帰るエドワードを見送った。
邸中が『どういう関係?』と聞きたそうにはしていたけど、奥様が何等かの指示をしてくれていたんだと思う。誰も聞いてはこないもの。
部屋に戻っても考えはまとまらなかった。
誰が出席するかもわからないなんて…
確認したい!けど伯爵から名簿を見せてもらえる可能性はゼロよね。
少なくても2人って言ったわ…
それ以上いるかもしれないという事…?
私が知ってるだけじゃなく、お互い顔見知り…って事よね。
この国の知り合いなんていない。
という事は……うちの国から誰か連れて来るという事?
私とそんなに仲は良くなくても『知ってる』くらいの人を連れてくるのが1番いいよね…。
私を見て『ニーナ・サナス』だと確認が取れればいいんだもの。
行きたくないし逃げ出したい!
けど、伯爵に迷惑がかかる!
でも何故急に強気で出てきたの?この前会った時、私はニーナじゃないって確認してたよね。
…色々やらなきゃと思っていたけど、まずは保身させてもらうわ。
万が一にもニーナだと気が付かれた場合、パーティーが終わった瞬間に絶対脱出してみせる。
マール君はコクコクと嬉しそうに頷いた。
ロンは伯爵邸の庭師。奥様が大切にしている庭の草花は全てロンが管理しているんだよね。いい腕をしてると思うわ。
何故マール君をロンのところへ連れていくか…もちろん虫を一緒に見てもらうため。朝、既にロンに言ってあるから、スコップや網をしっかり用意してくれている。
私とデクスターさんは…虫が苦手だからね。
最近マール君は観察ノートを編集して昆虫図鑑を作ってるわ。子供が描いた絵だから判断をつけられない虫もあるけど、隣に書いてある説明は物凄く綺麗な字で、難しい単語もスラリと書かれているわ…
凄いわ…マール・ラドクリフ様。
何故それを作るのか聞いてみたら『秘密』と笑顔で返ってきた。
可愛いわ…
その顔を見ているだけで、私も嬉しくなった。
「ニナ!大変よっ!!貴女一体何をしたのっ!!」
「え?あの、マール君と虫を観察に…」
「そういう事じゃないのっ!早く来てっ!」
「ちょっと、何ですか一体!?」
私の手をぎゅっと握って、マール君も一緒についてきた。
「………」
「久しぶりだね。」
そりゃ、皆焦って当たり前だわ。
「お久しぶりです。エドワード殿下」
何でいるの…。
「その子がマール君かい?」
「ええ。」
話を続けようとすると、デクスターさんがマール君を抱っこして連れて行ってしまった。
「伯爵から聞いたんだが、君は『カタサ』の言葉を使えるそうだね。」
「っ!?…教育係として学びましたから。」
これは不利な情報をつかまれてしまったわ。
「今度、大きくは無いが舞踏会を開く事になってね。実はそこにはカタサからの客人もいる。少し世間話に付き合ってくれる人を探していたんだよ。」
だから何?
「そうなのですね。殿下が開くのであれば素晴らしいものになりますわ。」
「より素晴らしいものにする為に、君を招待するよ。」
は…?
「私はただの教育係ですが…」
「だが、公爵のパーティーには来ていたね。俺が主催するものには出席出来ないと?」
この人…本当に嫌な男だわ……。
「ありがとうございます。招待頂けるなんて、とても光栄です。」
「そう、嬉しいよ。」
ここでは伯爵の手前、それ以外の返事は出来ないじゃない…。
「今回は伯爵は招待客に含まれていない。迎えを寄越すよ。」
逃げ場が無くなりました!
白旗だわ…。
伯爵がいなければ、私は誰を頼りにすればいいの?
王族に招待されるなんて、それだけで注目されるわ。しかも、恋人のいる男が招待してるのよ…。
「きっと君の知ってる人も来ると思うよ。」
何、どういう意味?
「…私の知り合いで、殿下の舞踏会によばれる者がいるとは思えませんが。」
「少なくても2人はいると思うよ。」
「…2人」
「ああ。では、また後程、招待状を送るよ。」
……ちょっと待って…知ってる人って誰なのっ!?
それがわかるって事は、私が誰だか既にわかってるって事?じゃなきゃ判断しようがないよね?
エドワードが帰る前に確認しないと…
「殿下…」
「ん?何かな?」
何…その胡散臭い余裕の笑みは…。
「その招待状には、招待客名簿はありますか?」
「なぜ?そんな事を?」
「どのような方がいらっしゃるのか、予め確認したいと思っただけです。」
「知る人がいないのであれば、見ても仕方ないよね。」
ああ言えばこう言う…。
「伯爵の顔を汚す事になりかねませんので。」
「では伯爵には送るよ。誰がくるのか聞いてみるといい。俺に招待されるような者はニナの友人にはいないのだから、個人の名前をあげて聞く事は出来ないと思うけどね。」
これは、教えるな…と、一筆添えて送るつもりね…。
「では、俺はここで失礼する。会えるのを楽しみにしてるよ。ニナ様。」
永遠に会いたくありません。
「そう仰有って頂けるなんて、私は幸せ者ですわね。」
「男なら皆そう思うよ、君は綺麗だからね。」
「お世辞でも嬉しいですわ。」
心にもない事を…その胡散臭い笑顔でよく言えたわね!
シャロンを連れていけばいいでしょ!私はいつでもどこでも2人を応援中よ。
けれどここは伯爵邸…シャロンがどうのと強気発言は出来ないわ…。私の言葉1つで大変な事になりかねないもの。
大きな馬車に乗って帰るエドワードを見送った。
邸中が『どういう関係?』と聞きたそうにはしていたけど、奥様が何等かの指示をしてくれていたんだと思う。誰も聞いてはこないもの。
部屋に戻っても考えはまとまらなかった。
誰が出席するかもわからないなんて…
確認したい!けど伯爵から名簿を見せてもらえる可能性はゼロよね。
少なくても2人って言ったわ…
それ以上いるかもしれないという事…?
私が知ってるだけじゃなく、お互い顔見知り…って事よね。
この国の知り合いなんていない。
という事は……うちの国から誰か連れて来るという事?
私とそんなに仲は良くなくても『知ってる』くらいの人を連れてくるのが1番いいよね…。
私を見て『ニーナ・サナス』だと確認が取れればいいんだもの。
行きたくないし逃げ出したい!
けど、伯爵に迷惑がかかる!
でも何故急に強気で出てきたの?この前会った時、私はニーナじゃないって確認してたよね。
…色々やらなきゃと思っていたけど、まずは保身させてもらうわ。
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