41 / 187
非常事態の婚約者
しおりを挟む
「マール君、今日はロンのところへ遊びに行こうか?」
マール君はコクコクと嬉しそうに頷いた。
ロンは伯爵邸の庭師。奥様が大切にしている庭の草花は全てロンが管理しているんだよね。いい腕をしてると思うわ。
何故マール君をロンのところへ連れていくか…もちろん虫を一緒に見てもらうため。朝、既にロンに言ってあるから、スコップや網をしっかり用意してくれている。
私とデクスターさんは…虫が苦手だからね。
最近マール君は観察ノートを編集して昆虫図鑑を作ってるわ。子供が描いた絵だから判断をつけられない虫もあるけど、隣に書いてある説明は物凄く綺麗な字で、難しい単語もスラリと書かれているわ…
凄いわ…マール・ラドクリフ様。
何故それを作るのか聞いてみたら『秘密』と笑顔で返ってきた。
可愛いわ…
その顔を見ているだけで、私も嬉しくなった。
「ニナ!大変よっ!!貴女一体何をしたのっ!!」
「え?あの、マール君と虫を観察に…」
「そういう事じゃないのっ!早く来てっ!」
「ちょっと、何ですか一体!?」
私の手をぎゅっと握って、マール君も一緒についてきた。
「………」
「久しぶりだね。」
そりゃ、皆焦って当たり前だわ。
「お久しぶりです。エドワード殿下」
何でいるの…。
「その子がマール君かい?」
「ええ。」
話を続けようとすると、デクスターさんがマール君を抱っこして連れて行ってしまった。
「伯爵から聞いたんだが、君は『カタサ』の言葉を使えるそうだね。」
「っ!?…教育係として学びましたから。」
これは不利な情報をつかまれてしまったわ。
「今度、大きくは無いが舞踏会を開く事になってね。実はそこにはカタサからの客人もいる。少し世間話に付き合ってくれる人を探していたんだよ。」
だから何?
「そうなのですね。殿下が開くのであれば素晴らしいものになりますわ。」
「より素晴らしいものにする為に、君を招待するよ。」
は…?
「私はただの教育係ですが…」
「だが、公爵のパーティーには来ていたね。俺が主催するものには出席出来ないと?」
この人…本当に嫌な男だわ……。
「ありがとうございます。招待頂けるなんて、とても光栄です。」
「そう、嬉しいよ。」
ここでは伯爵の手前、それ以外の返事は出来ないじゃない…。
「今回は伯爵は招待客に含まれていない。迎えを寄越すよ。」
逃げ場が無くなりました!
白旗だわ…。
伯爵がいなければ、私は誰を頼りにすればいいの?
王族に招待されるなんて、それだけで注目されるわ。しかも、恋人のいる男が招待してるのよ…。
「きっと君の知ってる人も来ると思うよ。」
何、どういう意味?
「…私の知り合いで、殿下の舞踏会によばれる者がいるとは思えませんが。」
「少なくても2人はいると思うよ。」
「…2人」
「ああ。では、また後程、招待状を送るよ。」
……ちょっと待って…知ってる人って誰なのっ!?
それがわかるって事は、私が誰だか既にわかってるって事?じゃなきゃ判断しようがないよね?
エドワードが帰る前に確認しないと…
「殿下…」
「ん?何かな?」
何…その胡散臭い余裕の笑みは…。
「その招待状には、招待客名簿はありますか?」
「なぜ?そんな事を?」
「どのような方がいらっしゃるのか、予め確認したいと思っただけです。」
「知る人がいないのであれば、見ても仕方ないよね。」
ああ言えばこう言う…。
「伯爵の顔を汚す事になりかねませんので。」
「では伯爵には送るよ。誰がくるのか聞いてみるといい。俺に招待されるような者はニナの友人にはいないのだから、個人の名前をあげて聞く事は出来ないと思うけどね。」
これは、教えるな…と、一筆添えて送るつもりね…。
「では、俺はここで失礼する。会えるのを楽しみにしてるよ。ニナ様。」
永遠に会いたくありません。
「そう仰有って頂けるなんて、私は幸せ者ですわね。」
「男なら皆そう思うよ、君は綺麗だからね。」
「お世辞でも嬉しいですわ。」
心にもない事を…その胡散臭い笑顔でよく言えたわね!
シャロンを連れていけばいいでしょ!私はいつでもどこでも2人を応援中よ。
けれどここは伯爵邸…シャロンがどうのと強気発言は出来ないわ…。私の言葉1つで大変な事になりかねないもの。
大きな馬車に乗って帰るエドワードを見送った。
邸中が『どういう関係?』と聞きたそうにはしていたけど、奥様が何等かの指示をしてくれていたんだと思う。誰も聞いてはこないもの。
部屋に戻っても考えはまとまらなかった。
誰が出席するかもわからないなんて…
確認したい!けど伯爵から名簿を見せてもらえる可能性はゼロよね。
少なくても2人って言ったわ…
それ以上いるかもしれないという事…?
私が知ってるだけじゃなく、お互い顔見知り…って事よね。
この国の知り合いなんていない。
という事は……うちの国から誰か連れて来るという事?
私とそんなに仲は良くなくても『知ってる』くらいの人を連れてくるのが1番いいよね…。
私を見て『ニーナ・サナス』だと確認が取れればいいんだもの。
行きたくないし逃げ出したい!
けど、伯爵に迷惑がかかる!
でも何故急に強気で出てきたの?この前会った時、私はニーナじゃないって確認してたよね。
…色々やらなきゃと思っていたけど、まずは保身させてもらうわ。
万が一にもニーナだと気が付かれた場合、パーティーが終わった瞬間に絶対脱出してみせる。
マール君はコクコクと嬉しそうに頷いた。
ロンは伯爵邸の庭師。奥様が大切にしている庭の草花は全てロンが管理しているんだよね。いい腕をしてると思うわ。
何故マール君をロンのところへ連れていくか…もちろん虫を一緒に見てもらうため。朝、既にロンに言ってあるから、スコップや網をしっかり用意してくれている。
私とデクスターさんは…虫が苦手だからね。
最近マール君は観察ノートを編集して昆虫図鑑を作ってるわ。子供が描いた絵だから判断をつけられない虫もあるけど、隣に書いてある説明は物凄く綺麗な字で、難しい単語もスラリと書かれているわ…
凄いわ…マール・ラドクリフ様。
何故それを作るのか聞いてみたら『秘密』と笑顔で返ってきた。
可愛いわ…
その顔を見ているだけで、私も嬉しくなった。
「ニナ!大変よっ!!貴女一体何をしたのっ!!」
「え?あの、マール君と虫を観察に…」
「そういう事じゃないのっ!早く来てっ!」
「ちょっと、何ですか一体!?」
私の手をぎゅっと握って、マール君も一緒についてきた。
「………」
「久しぶりだね。」
そりゃ、皆焦って当たり前だわ。
「お久しぶりです。エドワード殿下」
何でいるの…。
「その子がマール君かい?」
「ええ。」
話を続けようとすると、デクスターさんがマール君を抱っこして連れて行ってしまった。
「伯爵から聞いたんだが、君は『カタサ』の言葉を使えるそうだね。」
「っ!?…教育係として学びましたから。」
これは不利な情報をつかまれてしまったわ。
「今度、大きくは無いが舞踏会を開く事になってね。実はそこにはカタサからの客人もいる。少し世間話に付き合ってくれる人を探していたんだよ。」
だから何?
「そうなのですね。殿下が開くのであれば素晴らしいものになりますわ。」
「より素晴らしいものにする為に、君を招待するよ。」
は…?
「私はただの教育係ですが…」
「だが、公爵のパーティーには来ていたね。俺が主催するものには出席出来ないと?」
この人…本当に嫌な男だわ……。
「ありがとうございます。招待頂けるなんて、とても光栄です。」
「そう、嬉しいよ。」
ここでは伯爵の手前、それ以外の返事は出来ないじゃない…。
「今回は伯爵は招待客に含まれていない。迎えを寄越すよ。」
逃げ場が無くなりました!
白旗だわ…。
伯爵がいなければ、私は誰を頼りにすればいいの?
王族に招待されるなんて、それだけで注目されるわ。しかも、恋人のいる男が招待してるのよ…。
「きっと君の知ってる人も来ると思うよ。」
何、どういう意味?
「…私の知り合いで、殿下の舞踏会によばれる者がいるとは思えませんが。」
「少なくても2人はいると思うよ。」
「…2人」
「ああ。では、また後程、招待状を送るよ。」
……ちょっと待って…知ってる人って誰なのっ!?
それがわかるって事は、私が誰だか既にわかってるって事?じゃなきゃ判断しようがないよね?
エドワードが帰る前に確認しないと…
「殿下…」
「ん?何かな?」
何…その胡散臭い余裕の笑みは…。
「その招待状には、招待客名簿はありますか?」
「なぜ?そんな事を?」
「どのような方がいらっしゃるのか、予め確認したいと思っただけです。」
「知る人がいないのであれば、見ても仕方ないよね。」
ああ言えばこう言う…。
「伯爵の顔を汚す事になりかねませんので。」
「では伯爵には送るよ。誰がくるのか聞いてみるといい。俺に招待されるような者はニナの友人にはいないのだから、個人の名前をあげて聞く事は出来ないと思うけどね。」
これは、教えるな…と、一筆添えて送るつもりね…。
「では、俺はここで失礼する。会えるのを楽しみにしてるよ。ニナ様。」
永遠に会いたくありません。
「そう仰有って頂けるなんて、私は幸せ者ですわね。」
「男なら皆そう思うよ、君は綺麗だからね。」
「お世辞でも嬉しいですわ。」
心にもない事を…その胡散臭い笑顔でよく言えたわね!
シャロンを連れていけばいいでしょ!私はいつでもどこでも2人を応援中よ。
けれどここは伯爵邸…シャロンがどうのと強気発言は出来ないわ…。私の言葉1つで大変な事になりかねないもの。
大きな馬車に乗って帰るエドワードを見送った。
邸中が『どういう関係?』と聞きたそうにはしていたけど、奥様が何等かの指示をしてくれていたんだと思う。誰も聞いてはこないもの。
部屋に戻っても考えはまとまらなかった。
誰が出席するかもわからないなんて…
確認したい!けど伯爵から名簿を見せてもらえる可能性はゼロよね。
少なくても2人って言ったわ…
それ以上いるかもしれないという事…?
私が知ってるだけじゃなく、お互い顔見知り…って事よね。
この国の知り合いなんていない。
という事は……うちの国から誰か連れて来るという事?
私とそんなに仲は良くなくても『知ってる』くらいの人を連れてくるのが1番いいよね…。
私を見て『ニーナ・サナス』だと確認が取れればいいんだもの。
行きたくないし逃げ出したい!
けど、伯爵に迷惑がかかる!
でも何故急に強気で出てきたの?この前会った時、私はニーナじゃないって確認してたよね。
…色々やらなきゃと思っていたけど、まずは保身させてもらうわ。
万が一にもニーナだと気が付かれた場合、パーティーが終わった瞬間に絶対脱出してみせる。
595
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
必要ないと言われたので、私は旅にでます。
黒蜜きな粉
ファンタジー
「必要ない」
墓守のリリアはある日突然その職を失う。
そう命令を下したのはかつての友で初恋相手。
社会的な立場、淡い恋心、たった一言ですべてが崩れ去ってしまった。
自分の存在意義を見失ったリリアに声をかけてきたのは旅芸人のカイだった。
「来る?」
そうカイに声をかけられたリリアは、旅の一座と共に世界を巡る選択をする。
────────────────
2025/10/31
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞をいただきました
お話に目を通していただき、投票をしてくださった皆さま
本当に本当にありがとうございました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる