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ニーナとボナース院

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 仕事を探すのって大変だよね。何でもやってみないと!って思うけど、何でもいいって決めちゃうのは駄目だよね。

『解雇』っていう恐ろしいものがあるもの!

1人で暮らすなら、中途半端に決めてしまっては命とりよ。
しばらくは出来る事を頑張るのよ!
けれど今、私が最優先しているのはボナース院!


『魔の水曜日』から次の休み。
私は早速ボナース院へ行く事にした。

とても人通りが多いとか、沢山家があるという訳でもない。
街外れにある院に今日は歩いて来てみてのだけど。
…失敗だったわ。
歩いて1時間だと聞いていたけど、かるく1時間以上かかったもの。

帰りは馬車に来てもらうよう言っておいてよかった。10ニードル上乗せだけどね。

目の前には赤い扉。
「すみませーん!」
…やっぱり今日も出てこないわ。これって良くないよね。どんなに忙しくても、客人を無視するのは職務怠慢よ。

けど今日は泥団子を投げられないだけ…
「っきゃ!!」

…やっぱり洗礼を受けたわ。
もちろんこの前の男の子。

「君、卑怯な真似はよしなさい。女相手に。」
「うるさい泥棒!帰れっ!」
あの子、誰かが来る度に泥団子を投げるのかしら…。
訪ねても誰も出てこないのは院長がいる事が左右しているのだとしても、泥団子はよくないわ。
近所の人達が訪ねて来なくなるし、これじゃ孤立しちゃうわ。

『ボナースにいるだけで、何もしてなくても犯人にされる』と言っているんだから、悪印象はもっての外だわ。

「ねぇ、今日も院長はいないの?」
「うるさい!泥棒にはおしえない!」

きっとこの子にとって大人は敵なんだわ…。私は18才だけど…。それでも成人してるしね。

男の子のいる窓に近づくと、バタンと閉められた。


今日もジョセフィーヌちゃんが出てきてくれないかしら。
市場で会った子は、借りを返す…って言って話をしてくれたけど、他の子とは全く話せなかったし、今日は院長の話を聞きたいんだけどね。

皆で食べようとクッキーまで持って来たけど…
『お菓子をあげるから戸を開けて…』なんて、ちょっと院の子達を馬鹿にしてる感じがするから言えないし…。
気を回しすぎかもしれないけど。

仕方がないわね。

ドンドンドンッ
「スミマセーーンっ!伯爵からお届け物でーす!お留守でしょうかー!」

ここまで1時間以上もかけて歩いてきたんだもの、そう簡単には引き下がるつもりはないわ!

何度も戸を叩くと、この前話をしたミラノさんという女性がムスっとした顔で出てきた。

「…何か?ああ、この前の…ここに来たって事は、伯爵から何か返事をもらってきてくれたのかい。」
「とりあえず、中に入れてもらえませんか?お茶をしながら、お話したいので。みんなの分のお菓子も持ってきましたから。」

「…入んな。」
「はい。」

15人分のクッキー、結構高かったわ。
ここの行き来だけで全財産がなくなってしまうんじゃないかしら。

今日の出費を取り返すくらいの情報は得て帰らなきゃ!

院長の事
誰がお金を届けてくるのか、
受け取りの控えがあるのか、
受取のサインはいつも誰がしているのか、
届く日はいつなのか、
いつから金額が減ったのか、
何ヵ月分なのか。
最低でもこれだけは聞かないと、来た意味がないよね!
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