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可哀想なクリフ様
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私…2ヶ月放置されてたのに、今はとても忙しいと思うのは気のせいかしら…。
部屋でぐったりしているとコンコンと小さなノックが聞こえる。
これはマール君がノックをした音。
ドアを開けると、満面の笑みで昆虫図鑑を持っている。そういえば今日家族3人で出かけるって言ってたっけ。買ってもらったのかな。
「どうぞ」
部屋にいれて上げると、マールくんはソファーに座ってニコニコしている。
一緒に見よう…って事だとは思うの。けど今回のは、世界の蝶々。
泣きそうだけど、マール君の笑顔が眩しすぎて断れない。
『買い物楽しかった』
「そう、よかったね。何してきたの?」
『ご飯食べて、変なお菓子も買ってきた。明日食べよう』
「そうだね。」
変って何…?
ちょっと不安ではあるけれど、それはそれで楽しみ。
こんな風にゆったりとした時間をもっと過ごしたい。私が憧れる生活の1つ。贅沢だけどね。
マール君が楽しそうに指差す先に、恐ろしい模様のついた蝶が…どういう反応をすればいいかわからない…。
教育係として…頑張らないと!
『今度は一緒に買い物に行こうね』
「うん、一緒にいこうね。」
あぁ…和む!!
マール君がうつらうつらし始めたので、お部屋まで抱っこして行くと、ちょうど奥様が部屋の前にいた。
「またニナのところへ行ってたのね。」
「図鑑を見せに来てくれました。」
「そうだったの。」
マール君をベッドに寝かせて、その場をさろうとすると奥様に声をかけられた。
「ニナ、こんな時間までありがとう。」
「いえ、私も楽しいので。あ、そうだ…」
私はマール君が『買い物楽しかった』と書いたページを開いて見せた。
「ご機嫌でしたよ。」
「……」
え……?とても良い事だと思ったけど、何だか奥様が泣きそうだわ!?
マール君が寝ているからあまり声を出せないしっ、どうしたらいいの?
「ニナが来てくれて本当によかったわ。」
「…ぁの…」
ついに泣かせてしまった!!
私はか弱い女性に弱い…!
目を赤くした奥様と一緒に部屋を出ると、外で待っていた侍女が驚いて私を見た。
何かしたの!?
っと言いたげだったので、首を大きく横にふった。
2人を見送った後、急いで部屋にもどった。
伯爵邸へ来てまだ2ヶ月もたってないのに、既に2度も奥様の涙を見てしまうとは……
敵意を向けられると強く図太く対応できるのに、泣かれるとどう対処していいかわからないなんて…。
シャロンも実は繊細で、泣いたりしたらどうしよう。…それはないか。
あの王子はシャロンとどうなりたいのかしら…。私としては2人が結婚してくれるとありがたいのだけど…。
私を放置している間に、結婚しようとか行動しなかったのかな。
私は貴方達を応援します。っていう方面でどんどん後押ししていけばいいのかもしれない。
まぁ、1番可哀想なのはクリフだわ。仕事も山ほどあると思うのよね。それでも誰よりも私を見つけるのに必死だもの…。
オリビアが言った『窶《やつ》れてた、私なら死ぬかもしれない』…あれ、ちょっときつく言い過ぎたかも。
『死んでたらどうしよう』って、それで必死なんだと思う。姿絵の特徴を見ればオリビアが言ってる女性と別人なのはあきらか。
けど『女性は放っておけばそうなるものだ!』…って罪悪感。彼だけはニーナが死ぬ前にって思いがある気がする…。だからこそ、どうしても私がニーナである事を願ってる。
だから…しつこい…。
・・・・
「はぁ…」
クリフはため息をついた。
もう第一歩目から踏み外した俺が悪い。
どんなに命令されていたとしても、カバーするのが俺の役目…務めだった。
ニーナ様以外の邸にいた3人も探してはいるが…事件に巻きこまれているならあの3人も一緒にいてもおかしくはない。
もしこのまま見つからなかったら…1番怖いのはそれだ。
『みつかりません』
親はどう思う?生死がはっきりせず、『いない』のは、1番苦しむだろう。
もう不甲斐なさに押し潰されそうだ。
とりあえず、日程調整だ。水曜日の仕事を終えエドワードに時間をつくる。視察は先延ばしでいい。
コンコン
「入るぞ。」
ノックをしても返事は聞かなかった。
「ニナのところへ?」
「そうだ。」
「違うと言うだけだっただろ?」
「…水曜日に会う約束を取り付けた。」
「わかった。水曜日、父上の具合が良ければ確認のために連れていく。あの姿絵のイメージでは確認は取れない。」
「…シャロン同席…。それが条件だ。」
「なぜだ?」
「知らん。その方が『やり込めやすい』と思ったんだろう。見くびられてるだけだ。
俺も、お前も。」
「……」
「シャロンがいない時のニナは、少しだけだが感情が見えた。お前の胡散臭いものの言い方に腹を立てていた。だが、パーティーの時と同じ、シャロンを攻撃すれば先に感情的になるのはエドワード、お前だ。」
「…そうだな」
「何故そこまであの女にこだわる?何かあるのか?昔のように俺とお前がただの幼馴染みであれば『勝手にしろ』ですむ。が、今は違うだろ。何故答えない。…なら質問を変える。ニーナを嫌だと拒む理由はなんだ?」
「ニーナは…俺の妹かもしれないからだ。」
「…………は?」
「母親は違うはずだ。だが妹である可能性が捨てきれない。お前も言っていただろ。1%でも不安があれば、それは正解じゃない。」
「どこからそんな馬鹿げた話を聞いた…」
「ニーナをこの国に迎える…と聞いた時、俺は反対した。わざわざ連れてくるリスクを考えれば、この国の娘でいいと。説得にも行った。だが一向に話を聞かなかった。理由を聞いても答えない。ただ、子供の時に聞いた事を思い出した。『ニーナとお前は家族だ』と。」
「それは、最終的に『ニーナと結婚して家族になる』という事じゃかいのか?」
「そうだと思うさ!でも違ったらどうする?一緒に過ごしていれば、跡継ぎをと言われるだろう。ニーナも引くに引けなくなる!理由を聞くまではどうにも出来ない。」
「…陛下がそんな馬鹿な事をするわけがないだろう。自分のもとへ取り戻そうとはしても、お前の婚約者になどするはずもない。」
「そうだ。そんな愚かな事をするよう人じゃない。でも怖くないか?人なんて何を考えてるか、家族だとしてもわからないんだから。」
部屋でぐったりしているとコンコンと小さなノックが聞こえる。
これはマール君がノックをした音。
ドアを開けると、満面の笑みで昆虫図鑑を持っている。そういえば今日家族3人で出かけるって言ってたっけ。買ってもらったのかな。
「どうぞ」
部屋にいれて上げると、マールくんはソファーに座ってニコニコしている。
一緒に見よう…って事だとは思うの。けど今回のは、世界の蝶々。
泣きそうだけど、マール君の笑顔が眩しすぎて断れない。
『買い物楽しかった』
「そう、よかったね。何してきたの?」
『ご飯食べて、変なお菓子も買ってきた。明日食べよう』
「そうだね。」
変って何…?
ちょっと不安ではあるけれど、それはそれで楽しみ。
こんな風にゆったりとした時間をもっと過ごしたい。私が憧れる生活の1つ。贅沢だけどね。
マール君が楽しそうに指差す先に、恐ろしい模様のついた蝶が…どういう反応をすればいいかわからない…。
教育係として…頑張らないと!
『今度は一緒に買い物に行こうね』
「うん、一緒にいこうね。」
あぁ…和む!!
マール君がうつらうつらし始めたので、お部屋まで抱っこして行くと、ちょうど奥様が部屋の前にいた。
「またニナのところへ行ってたのね。」
「図鑑を見せに来てくれました。」
「そうだったの。」
マール君をベッドに寝かせて、その場をさろうとすると奥様に声をかけられた。
「ニナ、こんな時間までありがとう。」
「いえ、私も楽しいので。あ、そうだ…」
私はマール君が『買い物楽しかった』と書いたページを開いて見せた。
「ご機嫌でしたよ。」
「……」
え……?とても良い事だと思ったけど、何だか奥様が泣きそうだわ!?
マール君が寝ているからあまり声を出せないしっ、どうしたらいいの?
「ニナが来てくれて本当によかったわ。」
「…ぁの…」
ついに泣かせてしまった!!
私はか弱い女性に弱い…!
目を赤くした奥様と一緒に部屋を出ると、外で待っていた侍女が驚いて私を見た。
何かしたの!?
っと言いたげだったので、首を大きく横にふった。
2人を見送った後、急いで部屋にもどった。
伯爵邸へ来てまだ2ヶ月もたってないのに、既に2度も奥様の涙を見てしまうとは……
敵意を向けられると強く図太く対応できるのに、泣かれるとどう対処していいかわからないなんて…。
シャロンも実は繊細で、泣いたりしたらどうしよう。…それはないか。
あの王子はシャロンとどうなりたいのかしら…。私としては2人が結婚してくれるとありがたいのだけど…。
私を放置している間に、結婚しようとか行動しなかったのかな。
私は貴方達を応援します。っていう方面でどんどん後押ししていけばいいのかもしれない。
まぁ、1番可哀想なのはクリフだわ。仕事も山ほどあると思うのよね。それでも誰よりも私を見つけるのに必死だもの…。
オリビアが言った『窶《やつ》れてた、私なら死ぬかもしれない』…あれ、ちょっときつく言い過ぎたかも。
『死んでたらどうしよう』って、それで必死なんだと思う。姿絵の特徴を見ればオリビアが言ってる女性と別人なのはあきらか。
けど『女性は放っておけばそうなるものだ!』…って罪悪感。彼だけはニーナが死ぬ前にって思いがある気がする…。だからこそ、どうしても私がニーナである事を願ってる。
だから…しつこい…。
・・・・
「はぁ…」
クリフはため息をついた。
もう第一歩目から踏み外した俺が悪い。
どんなに命令されていたとしても、カバーするのが俺の役目…務めだった。
ニーナ様以外の邸にいた3人も探してはいるが…事件に巻きこまれているならあの3人も一緒にいてもおかしくはない。
もしこのまま見つからなかったら…1番怖いのはそれだ。
『みつかりません』
親はどう思う?生死がはっきりせず、『いない』のは、1番苦しむだろう。
もう不甲斐なさに押し潰されそうだ。
とりあえず、日程調整だ。水曜日の仕事を終えエドワードに時間をつくる。視察は先延ばしでいい。
コンコン
「入るぞ。」
ノックをしても返事は聞かなかった。
「ニナのところへ?」
「そうだ。」
「違うと言うだけだっただろ?」
「…水曜日に会う約束を取り付けた。」
「わかった。水曜日、父上の具合が良ければ確認のために連れていく。あの姿絵のイメージでは確認は取れない。」
「…シャロン同席…。それが条件だ。」
「なぜだ?」
「知らん。その方が『やり込めやすい』と思ったんだろう。見くびられてるだけだ。
俺も、お前も。」
「……」
「シャロンがいない時のニナは、少しだけだが感情が見えた。お前の胡散臭いものの言い方に腹を立てていた。だが、パーティーの時と同じ、シャロンを攻撃すれば先に感情的になるのはエドワード、お前だ。」
「…そうだな」
「何故そこまであの女にこだわる?何かあるのか?昔のように俺とお前がただの幼馴染みであれば『勝手にしろ』ですむ。が、今は違うだろ。何故答えない。…なら質問を変える。ニーナを嫌だと拒む理由はなんだ?」
「ニーナは…俺の妹かもしれないからだ。」
「…………は?」
「母親は違うはずだ。だが妹である可能性が捨てきれない。お前も言っていただろ。1%でも不安があれば、それは正解じゃない。」
「どこからそんな馬鹿げた話を聞いた…」
「ニーナをこの国に迎える…と聞いた時、俺は反対した。わざわざ連れてくるリスクを考えれば、この国の娘でいいと。説得にも行った。だが一向に話を聞かなかった。理由を聞いても答えない。ただ、子供の時に聞いた事を思い出した。『ニーナとお前は家族だ』と。」
「それは、最終的に『ニーナと結婚して家族になる』という事じゃかいのか?」
「そうだと思うさ!でも違ったらどうする?一緒に過ごしていれば、跡継ぎをと言われるだろう。ニーナも引くに引けなくなる!理由を聞くまではどうにも出来ない。」
「…陛下がそんな馬鹿な事をするわけがないだろう。自分のもとへ取り戻そうとはしても、お前の婚約者になどするはずもない。」
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