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見当違いの捜索隊

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 いろいろ乗り越えてやっと休み…

クール様は『伯爵邸にいるなら…』という
条件でこの国にいる事を許してくれたけれど、ルールを無視したら強制送還の可能性もあるよね…。

でも、気が付かれなければ大丈夫!
たぶん……
何事も前向きに考えなきゃ!

よし!今日も元気に仕事探しよ!
またあの騎士がいるかも知れないから、眼鏡をかけていこう。変装の初歩!


う~ん…
 紹介所の仕事には、男性の募集が多い。
力仕事が半分以上で、性別、経験、
学歴不問…とはなっているけれど、女性に出来るレベルではないし。

料理人募集…何もできない。
役立たずでクビになる危険性があるよね。
妹はお菓子を作ってたけど、私はクール様とカールと乗馬で競ってたり、剣術を習ったり、兵法読まされたり…思い返せば本当に『弟』的扱いしか受けていないじゃない。『これからは女でも強くなくてはいけない!』とか言って…。これが今の私の逞しさに繋がっているのね。

う~ん。
通訳はどうかしら。この前は伯爵邸てなんとかなった訳だし…。でもあれはクール様の補助があったからだよね。
通訳…3つ言語が話せたとしても、通訳として正式に雇ってもらえる条件は総合点。私の成績は普通なのよね。なので、仕事に出来るレベルじゃない。

「はぁ…」
今日も何も進展なしかぁ…

それにしても…何だかさっきから視線感じるんだよね。

たぶん気のせいではないと思う…。
私は結構長い間掲示板を見ていた。まわりは入れ代わり立ち代わりしている。だから、
気がついたていたのよ。私がここにいる間ずっと同じ場所にいた男に。
今、私が動いて初めて向こうも動いた。
尾行した事がない人なのね…。

きっとあの私服の騎士の仲間よ。
私をここで待っていたんだわ。
しれっと話しかけてみよう。私が婚約者だと気が付いてる可能性があるのか調べないと。

「私に何かご用かしら?」
「はは、気がついてましたか。」
「ええ。声をかけて下さるのをお待ちしてましたのよ。」
私がニコっと笑うと、相手は愛想笑いを返してきた。
「それで、どうしましたか?」
「…ここでは話しづらいので、よろしければ何処かお茶でも飲みながら、」
ここで断らない方がいいよね。
相手が聞きたい事を全て話せば、これからは追いかけて来ないはずだわ。
「わかりました。参りましょう。」


……聞いてないわよ。

「あの、私はこの男性とお話するために来たのですが…何故違う男性と話す事になるのかしら?」

この人、騎士じゃないでしょう…。
もう、立ち振舞いが違うもの。隙が見られないし、客人に対するマナーも…これでも本人は雑にしてるつもりなんでしょうけど。
何より、着ているものは高級だしね。そこまで気が回らなかったのね。これが彼の普通のレベルなんだから。

一体どういう人なの…?私服の騎士との繋がりはない人なの?

「申し訳ありません。どうしても貴女とお話をしてみたかったものですから。」
「ふふ、なら直接声をかけて下さればいいのに。」
「勇気が出ませんでしたので、友人に頼んだんです。失礼な事をしてしまいましたね。」

本当に失礼だわ。

「そうだ、お名前をお伺いしてもよろしいですか?私はサム、サム・エバンスと申します。」

「私はオリビア・スミスと申します。」

ニナという偽名すら、隠すべきよね。どこから情報が漏れるかわからないもの。

「綺麗なお名前ですね。」

「ありがとうございます。貴方も素敵ですよ。」

「有り難うございます。」

手強そうだわ。



「………」
「………」

何故誘った方が何も話しかけてこないの……礼儀でしょう!

「…失礼ですが…私にお話があって誘ったのですよね…?そうでないなら、私は帰りますが…」

「待ってください!実は貴女に聞きたい事があるんです。」
「…何かしら?」
「以前、花を摘んでいた時に『妹を探さしている男』に会いませんでしたか?」

やはり、私服の騎士と繋がりはあったのね。

「ええ、覚えております。何かあったのですか?」

何か情報を掴んだとか…マール君誘拐犯人にされて、牢へ入れられたのが私だとか…

「その妹は私の婚約者なんです。」
「……婚約者?」
「はい、いないと聞いてからずっと探してまして…」
……まさか、この人…王子ではないよね…。それだったら最悪だわ。
けれど私が今日ここに来ると知っていた訳ではないんだから、王子が待ち伏せてる事はないよね。

ほんの5分程前に席についたばかりだけれど、長居は無用だわ。

「そう、とても心配でしょう。その方はどのような女性なのですか?」

どこまで知っているか…それだけは探らないと、ここに来た意味がない。

「…わかりません…。1度もお会いした事がないんです。」

ええ、知ってます。

「婚約者なのでしょう?会った事がないだなんて…。」

「…父が私の知らぬ間に進めていたらしく、話が行き届いていませんでした。先日初めて婚約者がいる事も何か事件に巻き込まれてる事も発覚したのです。」

よくもまあ…ぬけぬけと。私を放置しておいて知らなかったで済ませるつもり?
でも、私の事を何も知らないとわかった今、この人と喋る事はもうないわね。

「そう、今納得できましたわ。泣きながら花を摘んでいる女性を見た事があります。おそらく、その子が『貴方の婚約者』なのでしょうね。」

「泣いていた…?」

「ええ、酷く窶れていました。『婚約者』に会いに来て貰えなければ、女として自信も無くすでしょうし…。私なら耐えられず、命を絶ってしまうかもしれません。」

少し焦りが見えてきたわ。窶れていた…なんて聞けばそうなるわよね。『もう、死んでいるかもしれない』と、怯えればいいのよ。

「…どうして妹を探してる男に伝えなかったのですか?」

「兄だと言う確信も持てませんでしたので。あまりにも容姿が違いましたから。」

「どんな容姿だったのか、教えて貰えませんか?」

「とても綺麗なブロンドで、目はグリーンに近い気がしましたが、泣きはらした目をしていましたので。」

「…そうですか。ありがとうございます。」

「いえ、お役に立たかはわかりませんが、早く見つかるといですね。では、私はこれで失礼致します。」

私はペコリと頭を下げてお店をでた。

これでもっと私を見つけるのが難しくなるはずよ。
さっき言った特徴は、妹なのよね。
私は栗色の髪で青色の目だもの。有難い事に、この国では何処にでもいるわ。
永遠に探し続ければいいのよ。

ブロンドの緑の目をした、ニーナ・サナスをね。

気になるのは、あの男の人がどれだけ王子と近い存在か…よ。
それによって、今後の動きを考えなくてはいけないもの。
公爵のパーティーに共するレベルの人だって事もあるよね。偽名に偽名を重ねたかいがあったわ。何かあれば『双子です』で済ませてみせる!
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