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婚約者が消えた
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ガシャーン
むなしく響くのは、牢が閉まる音。
「私が一体何をしたっていうの?」
「ラドクリフ伯爵の子息を誘拐しておいて、よくそんな口がきけるな。一体仲間はどこにいる!」
私は無実。折れるつもりは一切ないんだから!
一昨日、家から全て財産を持ち逃げされて、昨日ずぶ濡れになりながら買い物をして、その時見つけた子を助けたら、今日は牢獄に一直線。あまりにも酷い!
1度言ってみようかしら。『私は王太子の婚約者です』って。せめてこんな時くらいは役に立ってくれるといいんだけど。
「ねぇ貴方達。私を誰だと思っているの。エドワード王太子の婚約者よ。」
…………
…………
「ワハハッ!馬鹿じゃないのかこの女!」
「嘘つくなら、ばれない程度のにしとけよ。」
…やっぱりそうなるよね。逆の立場なら私だって信じないもの。
そう思ったから『ニーナ・サナス』って名乗らなかったんだもの。名は簡単に名乗っては駄目。危険よ。
それにしても、ここまで来ても泣かない私って…
自分がこんなに強く逞しい女だなんて、初めて気がついた。
「はぁ…」
喉がかわいたし、お腹もすいた…けど、何時間たっても水一滴すら出ないのよね……
この国って警察ですらこんな残念な人しかいないの?
王子が婚約者に1度も挨拶に来ないんだもの、そんな国の警察はこのレベルでも納得だけどね。
バタバタバタッ
急に沢山足音がしたと思ったら、5人も監守が私の所へ走ってきた。
1人はここの署長か何かだと思う。制服が物凄く綺麗で繊細な作りをしてるし。
「何なの、急に…」
「たっ!大変申し訳ございません!!」
「今すぐに出てください。ちょっとした手違いだったんです!」
「…っ伯爵には…そのように……伝えておりますので」
伯爵?
「ラドクリフ伯爵?」
「……っすみません。あの!大変申し訳ありませんでした!!」
「その…私達は…間違えただけで……」
これってマール君が説明してくれたんだよね、私の事。もしくは質屋のお兄さん?
…なるほど、私の事をろくに取り調べもせずに牢に入れた事がばれたら、ご免なさいじゃ済まないよね。
息子を助けた女を冤罪で捕まえた…なんて。街の噂にでもなれば、伯爵の顔に泥をぬるようなもの。
「伯爵が来てくださったのですね。では、私は本当の事をお話ししなくては失礼ですよね。」
「っっ!!」
この際、めちゃくちゃ脅してやる!
「取り調べは一切せず、水一滴すら与えられなかった事も、しっかりお伝えしておきますね。」
「…あの、それは…」
「警察は皆を守るものですもの、今のレベルはこれです。と、伯爵も知るべきでしょうし。」
これくらい脅しておけば、これからは真面目に働くよね。…たぶん。
「お嬢さん!大変申し訳ない事をしてしまった!まさか牢に入れられてるとは…。」
伯爵は深々と謝ってくれた。
「いえ、ラドクリフ伯爵、ありがとうございました。疑いははれたようなので、私はこれで失礼致します。」
「お嬢さん、待ってくれないか」
もういいから、さっさと帰して…。私はお水を買いに行きたいの!
とは、伯爵相手に言えるわけもないよね…
「…何でしょうか?」
「お詫びといってはなんだが、家に招待したい。マールもとても感謝していて、ぜひ君に会って礼を言いたいらしい。」
「………」
「来てくれないだろうか」
行きたくないのが本音だけど、行けばご飯は食べられる…わよね。
「ええ。私もマールくんの元気な姿を見たいと思っていましたの」
1人で暮らす為に、体力はつけておかないとね!
お屋敷までは1時間くらいかかるらしい。
伯爵を前にして寝るなんて失礼すぎる!とは思ったよ、思ったんだけど…ご免なさい、もう睡魔に勝てません。
「わっっ!」
馬車から降りると、すぐにマール君が抱きついてきた。
「マールくん、お家に帰れてよかったね」
私がそう言うと、マール君はニッコリ笑って頷いた。
「よく来てくれましたね。さぁ、こちらへ。」
案内されたのはお風呂で、その後は綺麗な洋服に着替えされられた。たぶんこれも持て成しの1つなんだろうけどさ、私の服はちゃんと返してくれるんだよね?
全てが悪い方向へ向かっているのを考えると、もう何にも油断は禁物だよね。
ここは伯爵家、危険な事は起こらないと思うけど、何があるかわからないもの!気を引き締めなくちゃ!!
「マールを助けてくれて、本当に感謝するわ。ありがとう。」
「いえ、そんなお礼を言われるほどの事はしておりません。」
ご飯に水とビスケットしか出せなかったしね…
「そうだ、お嬢さん。まだ名乗っていなかったね。私はマールの父のアドルフだ。君は?」
え~と…本名は明かしたくないのよね。貴族との繋がりは出来るだけ経ちたい。王子に見つけられる可能性が高くなるもの。それだけは避けたいし。
「ニナ、ニナ・スミス…です。」
私にはこの国に友人もいないし、名前を知る人なんてゼロに等しいんだから、この人達には偽名かどうかすらわからないはず。
「ニナか、良い名だね。」
「ありがとうございます。」
偽名ですけどね。
「さぁ、話は食べながらにしましょう!」
「はい」
ですが、…何故かずっと私の膝の上にいるマール君を何とかする気はないのね…
ご機嫌で私の膝の上に座っているのを見て、伯爵夫妻も当然のように喜んでいる理由を教えてください…。
むなしく響くのは、牢が閉まる音。
「私が一体何をしたっていうの?」
「ラドクリフ伯爵の子息を誘拐しておいて、よくそんな口がきけるな。一体仲間はどこにいる!」
私は無実。折れるつもりは一切ないんだから!
一昨日、家から全て財産を持ち逃げされて、昨日ずぶ濡れになりながら買い物をして、その時見つけた子を助けたら、今日は牢獄に一直線。あまりにも酷い!
1度言ってみようかしら。『私は王太子の婚約者です』って。せめてこんな時くらいは役に立ってくれるといいんだけど。
「ねぇ貴方達。私を誰だと思っているの。エドワード王太子の婚約者よ。」
…………
…………
「ワハハッ!馬鹿じゃないのかこの女!」
「嘘つくなら、ばれない程度のにしとけよ。」
…やっぱりそうなるよね。逆の立場なら私だって信じないもの。
そう思ったから『ニーナ・サナス』って名乗らなかったんだもの。名は簡単に名乗っては駄目。危険よ。
それにしても、ここまで来ても泣かない私って…
自分がこんなに強く逞しい女だなんて、初めて気がついた。
「はぁ…」
喉がかわいたし、お腹もすいた…けど、何時間たっても水一滴すら出ないのよね……
この国って警察ですらこんな残念な人しかいないの?
王子が婚約者に1度も挨拶に来ないんだもの、そんな国の警察はこのレベルでも納得だけどね。
バタバタバタッ
急に沢山足音がしたと思ったら、5人も監守が私の所へ走ってきた。
1人はここの署長か何かだと思う。制服が物凄く綺麗で繊細な作りをしてるし。
「何なの、急に…」
「たっ!大変申し訳ございません!!」
「今すぐに出てください。ちょっとした手違いだったんです!」
「…っ伯爵には…そのように……伝えておりますので」
伯爵?
「ラドクリフ伯爵?」
「……っすみません。あの!大変申し訳ありませんでした!!」
「その…私達は…間違えただけで……」
これってマール君が説明してくれたんだよね、私の事。もしくは質屋のお兄さん?
…なるほど、私の事をろくに取り調べもせずに牢に入れた事がばれたら、ご免なさいじゃ済まないよね。
息子を助けた女を冤罪で捕まえた…なんて。街の噂にでもなれば、伯爵の顔に泥をぬるようなもの。
「伯爵が来てくださったのですね。では、私は本当の事をお話ししなくては失礼ですよね。」
「っっ!!」
この際、めちゃくちゃ脅してやる!
「取り調べは一切せず、水一滴すら与えられなかった事も、しっかりお伝えしておきますね。」
「…あの、それは…」
「警察は皆を守るものですもの、今のレベルはこれです。と、伯爵も知るべきでしょうし。」
これくらい脅しておけば、これからは真面目に働くよね。…たぶん。
「お嬢さん!大変申し訳ない事をしてしまった!まさか牢に入れられてるとは…。」
伯爵は深々と謝ってくれた。
「いえ、ラドクリフ伯爵、ありがとうございました。疑いははれたようなので、私はこれで失礼致します。」
「お嬢さん、待ってくれないか」
もういいから、さっさと帰して…。私はお水を買いに行きたいの!
とは、伯爵相手に言えるわけもないよね…
「…何でしょうか?」
「お詫びといってはなんだが、家に招待したい。マールもとても感謝していて、ぜひ君に会って礼を言いたいらしい。」
「………」
「来てくれないだろうか」
行きたくないのが本音だけど、行けばご飯は食べられる…わよね。
「ええ。私もマールくんの元気な姿を見たいと思っていましたの」
1人で暮らす為に、体力はつけておかないとね!
お屋敷までは1時間くらいかかるらしい。
伯爵を前にして寝るなんて失礼すぎる!とは思ったよ、思ったんだけど…ご免なさい、もう睡魔に勝てません。
「わっっ!」
馬車から降りると、すぐにマール君が抱きついてきた。
「マールくん、お家に帰れてよかったね」
私がそう言うと、マール君はニッコリ笑って頷いた。
「よく来てくれましたね。さぁ、こちらへ。」
案内されたのはお風呂で、その後は綺麗な洋服に着替えされられた。たぶんこれも持て成しの1つなんだろうけどさ、私の服はちゃんと返してくれるんだよね?
全てが悪い方向へ向かっているのを考えると、もう何にも油断は禁物だよね。
ここは伯爵家、危険な事は起こらないと思うけど、何があるかわからないもの!気を引き締めなくちゃ!!
「マールを助けてくれて、本当に感謝するわ。ありがとう。」
「いえ、そんなお礼を言われるほどの事はしておりません。」
ご飯に水とビスケットしか出せなかったしね…
「そうだ、お嬢さん。まだ名乗っていなかったね。私はマールの父のアドルフだ。君は?」
え~と…本名は明かしたくないのよね。貴族との繋がりは出来るだけ経ちたい。王子に見つけられる可能性が高くなるもの。それだけは避けたいし。
「ニナ、ニナ・スミス…です。」
私にはこの国に友人もいないし、名前を知る人なんてゼロに等しいんだから、この人達には偽名かどうかすらわからないはず。
「ニナか、良い名だね。」
「ありがとうございます。」
偽名ですけどね。
「さぁ、話は食べながらにしましょう!」
「はい」
ですが、…何故かずっと私の膝の上にいるマール君を何とかする気はないのね…
ご機嫌で私の膝の上に座っているのを見て、伯爵夫妻も当然のように喜んでいる理由を教えてください…。
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