とある少年の奮闘記

シンさん

文字の大きさ
上 下
19 / 36

開墾

しおりを挟む
「トマス、ここが俺達の畑か?」
「はい。」
「畑…」
「はい。」
「……畑…?」
「はい。」

どう見ても、ただの荒れ地!!

「これじゃ何も植えられないけど。」
「開墾します。」
「この状態から…?」
「はい。」

『特訓しなくていい』って言うから喜んでたのに…、それより更に過酷な肉体労働をする事に。

誰かがこういう土地を開拓しなきゃ、俺のイメージしてる畑にはならないのか…。その『誰か』が俺…。
トラクターがほしい!

日本で当たり前のように見ていた景色は、先人達の汗と涙の結晶。俺は今、未来の誰かにとっての『先人』になるわけだ。

メンドクサイ…

「俺は楽して楽しく暮らしたい。今すぐにジャパンに帰してくれ!!」
「何を訳の解らない事を…」
「ふん、トマスに俺の悩みは解るまい。」

文句いってても始まらないし、とりあえず畑を作ろう。開拓、開墾だ。
墾田永年私財法だ。

「コタロー、今は鍬は使いません。畑はまず草狩り、石とりから始めないと…。」

意外と地味な作業だな。

たかが雑草抜きと侮っていたけど、めちゃくちゃしんどい。長い草は根がはっててなかなか抜けないし、短いのはしゃがまないといけない。

「イタッ!?」
「どうしました!?」
「草で手が切れた……」
「では、少し休みましょうか。」
「うん」

トマスが雑草を抜いた土地、サッカーコートくらいある気がする…。俺は…テニスコート半分くらい…。

体力おかしくね?
いくらなんでも差がありすぎる!!

暫くボケーっと座ってると、トマスが立ち上がって剣を抜いた。

「コタロー、私の後ろへ。」

トマスの雰囲気がいつもと違う。
俺は言われた通り、すぐに立ち上がってトマスの後ろに隠れた。

2mくらいの長さの雑草が不自然に揺れて、ガサガサと音が近付いてきた。
じっと見ていると、そこから出てきたのは痩せ細ったじいさんだった。

「コラーッ!!人の土地で何やってる、この蛆虫野郎共っ!!」

じいさんめっちゃ元気っ!!
ん?トマスが剣をおさめたって事は、危なくないじいさんなのか?

「ここは、俺達の土地だ。」
「ふざけるなっ!!先祖代々、ワシ等の土地じゃ!!」

そうなの?
トマス、土地間違えたのか?

「この土地って、どこからどこまでがじいさんの土地なんだ?」

トマスの後ろからチラッと顔を出して聞いてみた。安全を確保しつつ、言いたい事を言う俺。卑怯もの!!

「何処からも何も、この島は全てワシ等のもんじゃ!!お前ら蛆虫が寄ってたかって奪ってるだけじゃろ!!」

これは、じいさんが正しいと思う。

「『じいさんの』って訳じゃなく、『島民の』って事だよな?」
「そうじゃ。」
「じゃ、ここの持ち主は?」
「……」
「いないのか?」
「いたが、殺された…」
「……外から来た奴に?」
「そうじゃ。お前らみたいに、日焼けもしてない奴らが、何もかも奪っていきよる。」

……
俺はバカだ。
ここは植民地なんだ。
誰かのもんを奪って、それを自分のモノにしてるだけで、統治なんかじゃない。
俺らはただの侵略者…。
この世界の、この時代の人間にはこれが普通なのか?
日本で毎日安穏あんのんと生活してた俺は、誰かから奪ってまで金が欲しいとか、贅沢したいとまでは思わなかった。そんな事、考えなくて良いように、父さんや母さんに守られてたから。
飯が食えて、学校に通えて、スマホ買ってもらって、親が頑張ってたからだ。

じゃ、バスティは?
俺に石を投げてきた子供は?

生きる土地も仲間も家族も自由も奪われて、どうやって生きていくんだ?

今日まで俺が当たり前だと思ってた事が、当たり前じゃない世界なんだ。ここは…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...