この婚約、白紙に戻させていただきます

シンさん

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木偶人形

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 私は、村を襲った兵士を全員殺した。魔力をコントロール出来なくて、村人も殺してしまった。両親も、兄弟も、友達も、私が村1つ壊した。

「知ってるでしょ。私は人殺しなの。ガスパールと結婚したいなんて、夢を見る事さえ許されないの。冷静に考えれば、貴方の先祖は正しい判断をしたのよ」

 親無しの『人殺し』が貴族と結婚なんて出来ないなんて、誰でも解る。

「私が本気を出せば、この国を一人で制圧出来るわ。誰も私を止められない。唯一、私を殺す方法が『森に閉じ込める事』だったのよ」
「そんな風に、自分を責めないで下さい。生まれ持った魔力はリュシルの希望したものじゃない」

 所詮、他人事だからそんな風に言えるのよ。



 コンコン

「誰だ?」
「モロフでございます」

 返事を聞いて、レナードが部屋のドアを開けた。

「王太子殿下を治癒するようにと、陛下からの命令です」
「リュシルはまだ体力を回復していない。治癒魔法を使うのは無理だと言ったはずだが」
「このまま回復せず、リュシル様がお亡くなりになる可能性もありますので」

 昔から、私はこの人達に利用される為だけに生きていたような物なのね。

「いいわ。王太子様を治してあげる」
「リュシル、無理をしないで下さいっ!!」
「さっさと終わらせて、このブレスを外す方法を探す方が、時間を有効活用出来るもの」
「兄は普通の病気ではありません」
「どんな病気を『普通』と言うのかは知らないけど、死んでないなら治せるわ。モロフって人、案内して」

 レナードが必死に止めるけれど、無視して王太子の部屋へ向かった。


「何これ……」

 ベッドに寝てるのは、ただの木偶人形だよね。

「貴方達は、また私を騙してるの?」
「いいえ。兄は生きたまま人形になってしまったんです」
「そんな病気、聞いたことがないわ。一体何が原因でこんな事になったの?」
「誰にも解りません。だから、リュシルにしか頼めないんです」

 こんなの、私だって治せないわよ……。

「いつからこうなったの?」
「先月から徐々に体が動かなくなって、3日前に完全に木偶人形のようになってしまいました」

 3日前……
 1日話し合った結果、昨日私を迎えに来たって事ね。

「どうして完全に木偶化する前に私を呼ばなかったの」
「……」

『魔力が多いのは私のせいじゃない』と言っておいて、結局は私を危険人物扱いしてたからすぐに呼びに来なかったって事よね。レナードも、ガスパールや王様と同じ考えなのがよく解った。

「悪いけど、木偶化の原因を調べないと治せないわ。少しでいいから、何か情報はないの?」

 レナードは緩く顔を横に振った。

「これは病気ではなく魔法よ。特質魔法で人や物を木偶化させるような。レナードの魔法と系統は似てるわ」

 王太子の頬を触って、魔法と魔力を解析してみるけれど、術式が全く解らない。特質魔法は魔法の特性が個々で違うから、強い魔力保持者の魔法は簡単に紐解けない。

「考えたくないけど、私と同等の魔法使いがどこかにいるわ」
「リュシルと同等……?」
「それ以上かもしれない」



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