上 下
7 / 12

王城3

しおりを挟む
 目を覚ますと夜だった。

 今日あった事は夢なんじゃないかって、夜空だけ見ていたら、そう思う。

 けど、手首を見たらブレスが着いていて、現実なのだと思い知らされる。



 ガスパールが死んだ……。

 例え生きていたって別の女と結婚してたんだし、どっちでもいいけど。

「……っ」

 でも、好きだった人が死んだって聞かされるのは、やっぱり辛いかな。
『好きだった』って過去形にしてるけど、今日の朝まで結婚するのを楽しみにしてたのに、気持ちの整理がつかない。最悪な誕生日よ。

 ガスパールの事で泣くなんて悔しいけど、涙が溢れてくる。


 裏切られたのを知って、頭に血が上った。
 もし逢魔が刻の森で、レナード本人が転移魔法を使っていたら、ブレスの力があっても王城に連れて来れなかったはずなのに。私の方が魔力が強いんだから、レナード程度の魔法に引っ張られることは無かった。
 今、魔力も体力も少ない私は、どこにも行けない。


 ……ブレスを外して1人になりたい。


 ベッドの縁に座って月を眺めていると、レナードが部屋に入ってきた。

「良かった!目を覚ましたんですね。体の具合はどうですか?痛むところはありませんか?」
「問題ないわ」

 私の顔を覗き込むレナードは、心配してるような表情はしてるけど、本心はどうだか解らない。

「……リュシル、泣いていたんですか?」
「だったら?」
「……」

 暗闇で見ると、ガスパールと見分けがつかないくらいソックリ。そんな男と結婚しろだなんて、どれだけ私を侮辱すれば気が済むの。

「貴方のお兄様の所へ連れて行って。治してあげるわ」
「魔力が殆ど残っていないのに、治癒魔法なんて不可能です。死んでしまいます」
「なら、好都合だよね。私が死ねばこのブレスもはずれるし、貴方に損はないでしょ」
「俺はリュシルの死など望んでいません」

 そんなの、どっちでもいい。もう私に生きてる意味なんてないから。行く宛も帰る宛もない、私を知ってる人は誰もいない。ただ、孤独なだけだもの。
 レナードがどれだけガスパールに似ていても、この人は違う。初対面の知らない男の人。

「後1年、逢魔が刻の森にいられれたら、ガスパールに好かれていなかった事を知らずに死ねたのに」
「……っ」
「『幸せになって』って、何の冗談なの?ガスパールは自分だけ言いたい事を言って、スッキリして死ねたでしょうね。でも私は、永遠に許さないし、一生幸せになんてなれない」

 レナードが悪いわけじゃない。それは解ってるけど、怒りをぶつけたい相手が生きていない。私は20才の女なのよ。笑って許せるわけないじゃない!!

「私が幸せになる時は、このブレスが外れる時よ。貴方は、私が幸せになる姿をどうやっても見れないの」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端家族が溺愛してくるのはなぜですか??~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...