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番の腕輪

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「そう…、わざわざありがとうございます」
「祖父を悪く思わないでください」
「思わないですよ」

 ガスパールは、この森と都の時間の流れが違うのを知っていたのかな。もし、知っていたなら、何故教えてくれなかったんだろう。

 幸せになってって何?
 貴方と幸せになりたかった私は、どうやって幸せになればいいの?

「用はそれだけですか?なら、お帰りください。疲れて帰れないと言うなら、私がお好きな所へ転送しますから。」

 お茶も出さず『帰れ』だなんて、20才になって大人気ないと思うけど、今はこの顔を見ていたくない。

「貴女に伝える事は、まだあります。」
「何?」
「本日で、リュシル様は森番終了です」
「わかった。荷物をまとめたら出て行くわ」
「荷造りなど、リュシル様なら一瞬で出来るのでは?」

 魔法を使えば出来るけど、急いで帰る意味なんてない。50年近く経った都に帰って、私はどこに暮らせばいいのよ。

「明日帰るわ。では、さよなら」
「待ってください!」

 ドアを締めようとすると、ガスパールの孫に阻止された。

「伝えたい事は、もう一つあります。」
「何?『もうお前の家は無いから、好きな所で生きろ』…とでも言うの?」
「いいえ、『リュシル様は私の婚約者だ』と」

 何を言ってるの、この人。私を馬鹿にしてるとしか思えないわ。

「面白い冗談ですね」
「冗談ではありません」

 そう言って、左手首に赤い石のついた金のブレスをつけられた。

「番のブレスです。俺達の結婚は王命ですから」

 番のブレスは逢魔が刻の森で採れた金と鉱石で作られた、呪いの腕輪とも呼ばれている。
 これを所有してるのは、王家の血を継ぐ者だけ……。

「貴方は何者なの?」
「俺は、この国の第二王子、レナードです。」

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