この婚約、白紙に戻させていただきます

シンさん

文字の大きさ
上 下
1 / 14

森の番人

しおりを挟む
「ハッピバースデー私!!」

 今日、逢魔が刻の森の番人を命じられて4年がたった。任期は5年。
 あと1年、あと1年で都に帰れるっ!!


 ……あと1年、長いなぁ。
 ガスパールはどうしてるかな。私の事を忘れて、別の女と付き合ってたりしたらブッ飛ばしてやるんだから。


 そんな事を考えながら、朝ご飯を食べていると『コンコン』とノックの音がした。

 ……誰かしら。誰じゃなく、魔物?
 でも、それならノックなんてしないよね。

 ここは、魔力持ちしか入れない森の深部。誰でも入って来れるわけじゃないし、好んで入って来る人もいないよね。ということは、人じゃない。
 用心してドアを開けると、そこには会いたかった人がいた。

「ガスパール!!もしかして、会いに来てくれたの?」
「……え?」
「疲れたでしょう?狭いところだけど入って」
「いや、あの……」

 何故かガスパールは家に入ろうとしない。
 貴族のお坊ちゃんには、山小屋はハードルが高すぎるのかな。

「掃除はしてるから、汚くないわよ」
「……リュシル・クロークト様ですか?」

 何でそんな事を聞くのかしら。

「貴方、たった4年で婚約者の顔を忘れたの?」
「……ガスパールは、私の祖父の名です。私は、リュシル様に、祖父が亡くなった事を伝えに来たのです」
「え?何言ってるの。目の前にいるじゃない」
「私は祖父の若い頃に生き写しだと言われますし、困惑するのも無理はありません」

 薄暗い森の中だからハッキリ見えてなかったけど、よく見ればガスパールじゃない。声も姿もそっくりだけど、それでも違う。

「逢魔が刻の森は、時の流れが遅いんです。貴女が都を出て、もう50年近く経ちます」
「……嘘よ。そんなの」
「俺は祖父が最期に言い残した事を伝えにきました」
「何?」
「『幸せに生きてほしい。約束を守れなくてすまない』……と」

 約束……
 結婚の約束だよね。
 この子がガスパールの孫なら、誰かと結婚して家庭を築いてたのね。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。 ※諸事情により3月いっぱいまで更新停止中です。すみません。

お飾り王妃は愛されたい

神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。 私とは違う人との間に。 愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。

処理中です...