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僕の愛するセドリック

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「セドリック様。その変態狂人は、いつも何処にいるんですか?」
「今はわからない。奴は14才の時に逃げた。」
「逃げる先があったという事?」
「いや、存在を知られてはいけない男だ。外出するのも制限されていた。その男……トビーと俺は接近を禁止されてた。何かあっても俺には情報は入ってこなかった。」

王子に怪我を追わせたけれど、身代わりとしては役に立つ。…そういう事よね。
それじゃ、怒りの矛先が変な方へ向くのも考えられるわ。
でも、何かが欠落してる精神疾患っぽいのは確かだけど。

「リズ、本当に気を付けてくれ。」

狂人…ね。
ここまでの話をきいていれば、私に好意を持っていると言っておいて、これってただ単にセドリックの気を引きたいだけなのよね。何てくてだらない事に巻き込まれてるの、私は…。

「…あの恋文は『僕の愛するエリザベス』じゃなくて『僕の愛するセドリック』宛よ。『君と僕の勝負』もね。私へ宛てたのは『毒を愛する者』と『フリナの花弁1枚』よ。」
「あれはエリザベスに届いた物だ。俺への手紙なら俺の部屋に届いてる。」
「邪魔者がいるから無理なのよ。いつもね。」
「…それは、まさか私ですか?」

ラッドさんがセドリックの後ろで胡散臭い笑みを浮かべている。

「さて、ご想像にお任せするわ。」

私も胡散臭い笑顔で返した。

「俺を恨んでるのに、俺への手紙な訳がない。」
「私なら折角逃げ出せたのに、わざわざ自分の存在をアピールするような手紙は出さないわ。私ならというか、ならね。」
「俺の側にあるものを壊したいだけだ。好意を抱くのも俺が絡んでるからだ。」
「そこよ。貴方が絡んでるからよ。そして妬まれてるのが私。ラッドさんや他の人が側にいても何も起きなかった。けれど婚約者候補の私が出て来て、その変態も動きだした。候補3人のうち2人には彼氏がいたのに、私はいなかった。」
「どういう事だ…。」
「貴方を私にとられると思ったのよ。」
「とられる?別にリズは俺のものじゃない。」
「『リズは俺のもの』じゃなくて『セドリックはリズのもの』になるのが嫌なの。自分の気持ちは恨みから来てるもので、色恋沙汰だと思いたくないのよ。」
「色恋…?そうだったとして、何故俺じゃなくまわりを狙う。」
「まわりが貴方に近づかなくなる。王太子としか扱わなくなる。これだけは言えるわ。これから貴方の妻になる人は必ず狙われる。トビーという狂人にね。」
「……」
「私は変態に好かれてるのだと思ったわ。でも、本当に好かれていて私を殺したいと思っていたなら、あんな風に手紙を置かなくてもいいのよ。郵便で届くんだもの。私が狙われてるんじゃないか、って回りに思わせないほうが『君と僕の勝負』になる。けどそうしたのはセドリック様を振り回したかったの。自分がする事で。」
「……」
「私もなめられたものだわ。この変態に『僕はセドリックが好きです』って、みんなの前で告白させるてみせる。そして貴方はこう言うのよ。『俺は女が好きなんだ。』ってね。」
「いや、そういう問題じゃなくて…」
「どういう問題でもいいのよ。」
「……リズ…何を言ってるんだ。もう、トビーへの危機感が薄れてる気がするのは気のせいか…?」
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