王太子様お願いです。今はただの毒草オタク、過去の私は忘れて下さい

シンさん

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聞きたい事

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あれからすぐに副長官は捕まったし、長官も無事だったみたいでよかったわ。

けど、何故大切な時間を割いてまで、私が聴取をうけなければいけないの。もう2時間もたつわ。
副長官を捕まえたという功績があるのに、警官2人は質問攻め。

バンッ
「いつまで続くのよっ!!言ってるじゃない、『長官の部屋にいたら副長官に呼び出されて、そのまま馬車に連れていかれた。そこに長官もいた。逃げる為に足を刺して、馬車から飛び降りた』って!これが全てで、それ以上はないの!!」

「何故長官に使った毒の種類まで知っていた?」

「私が毒草オタクだからよ!信じられないなら、セドリック様にでも聞くといいわ!」

こんな事になるなら、そのまま捕まればよかったわ。
それなら、副長官が誰と繋がってて何をするつもりなのか、上手く聞き出せたもの。

「副長官に会わせてください。」
「無理だ。」
「何故?」
「君に関わりがない。」
「…そうね。」

もう、どうでもいいわ。他人には頼らない。私が私以上に頼れる人なんていない。
窓に格子は付いていないし、ここは1階。逃げられる。
本当はやりたくはないけれど、お父様の身分を拝借するわ。

私は窓の鍵を開けた。

「おいっ!」

思った通り、警官が1人駆け寄ってきた。

「私に触らないでくれるかしら。」
「なんだと?」
「はぁ、貴方達はさっきから誰を相手に話をしてると思っているの?ミリオン侯爵の娘、エリザベスよ。私が貴族らしからぬ振る舞いをしているからといって、調子にのり過ぎよ。」
「……」
「……」

…これだと他の貴族と同じよ。お父様の名に傷をつけるわ。

「ごめんなさい。お父様は名前を出して人を従わせるような事はしないから安心して。けどお願いよ、このまま見逃して。『持っていたナイフで自分の喉をつくと脅されて脱走した』と言ってくれればいいの。きっと信じるわ。お願い…。」

私は深く頭を下げた。
何でもきつくばかり当たって、敵ばかり増やしては駄目よ。頭を下げるのは上手く立ち回る方法の1つよ。

「深い訳でもあるのか?」
「命だってかけられるほどよ。」
「……わかった。」
「何を言ってるんですかっ!!駄目ですよっ!」
「…正直なところ、エリザベス様がいなければ、俺達は一歩も動けなかった状態だ。助けて貰った義理は返すのが筋だ。」
「っありがとう!!」
「副長官は警察病院だ。馬にのれるなら使用も許可する。」
「ありがとう!おじ様っ!!このお礼は私が生きていたら絶対にするわ。」

私は窓から外に出て厩舎に向かった。

・・・・


「いいんですか?懲罰ものですよ。」
「お前は手洗いに行っていて、見なかった事にしろ。」
「しかし…」
「生きるか死ぬかの勝負に出る、それくらい大切なものがあるんだ。どうやっても彼女を止められない。」
「……」
「それにしても、『おじ様』だぞ。お転婆娘もやはり侯爵令嬢だ。あれが素で出てくるんだからな。」



・・・・


馬に乗って警察病院へ。場所を知らない人はいないわ。
警察と軍だけの特権よ。医師をよんだりしなくていい。怪我をすればそこで無料で診察を受けられる、そんな建物があるのだから。

15分ほどで病院に着いたけれど、部屋にどうやって入ればいいかしら。
「エリザベス・ミリオンです。副長官に会わせてください。」
「誰も通すなと言われている。」

案の定、入り口の前にいる警官2人に止められた。

「私が彼を捕まえたような物なのに?」
「……」
「……」

無視なんしていられなくしてやるわ。

「そう。会わせないつもりなら、誘拐事件についての警察の失態を全部新聞社にリークするわ。2度も誘拐されたエリザベス・ミリオンの言う事を信じない記者も貴族もいないわよ。飛ぶように売れるでしょうね。」

「……」
「……何を言ってるんだ」

警備にあたってる警官もオロオロするよね。

「回収できない所まで行く前に、私を副長官に会わせなさい。私の口を封じるなら、ここで殺すくらいしかやり方はないわよ。」

既に私が副長官に誘拐されていたのは側にいた人達には広まってる。それくらいなら、『エリザベスの勘違い』それで丸め込めるかもしれない。けど新聞の情報量と範囲は違う。何より、醜聞は怖いはずよ。ペンは剣より強いわ。

1人が私が言った事を伝えに行って、戻ってきたのは長官だった。

「副長官に会わせてください。」
「10分だ」
「…っありがとうございます!!」

案内されたのは最上階。階段をのぼって右の2つ目の部屋。

「2人で話をさせて頂けますか。」
「…いいだろう。」


部屋に入ると副長官に睨まれた。

「何のようだ?」
「別に、あなたの事なんてどうでもいいのよ。私のお父様と話をしていた男は誰なの?」
「知らないね。」
「貴方を助けられるのは私だけよ?」
「私は事件に関係ない。君は同意のもとで馬車に乗った。」
「そう証言してあげてもいいわよ。おそらく待遇は変わるでしょうね。侯爵令嬢を誘拐した副長官ではなくなるんだもの。」
「…」
「今までの誘拐に関与していたとしても、それを証明する人が出て来なければ逃げられるかもしれない。けれど私は違うわよ。ミリオン侯爵令嬢を誘拐。家柄からして重罪を課せられるわ。そうなれば、他の貴族も黙ってはいない。怒りをぶつけるところが無かった被害者やその親族は貴方を許さない。全ての誘拐に関わってなくても貴方のせいにする。そうでなくては気がすまない。冤罪でも死罪確定ね。おそらく長官だけなら警察内部の恥さらしはしないと思うわよ。」
「……」
「公開処刑にすると思うわ。それを見ないと気がすまない高貴な方が多すぎる。警察の副長官が断罪されるだなんて街の人は興味津々でしょうね。大量に人が集まるわ。家族はどうなるかしら?裕福に暮らしていたのに、街をおわれて働き口がなければ妻はどうなるか考えなさい。女の働く場所、末路は解るでしょう。娼婦にでもする気なの?」

 
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