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簡単じゃない

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捕まったのは3人。軍の監獄搭で管理されるらしい。多分、今回は拷問してでも吐かせる為だと思う。副長官の名が出てくるのを。

自分が先に男達に接触して、その最終地点を掴みたかったのに…。お父様に接触してきた男に繋がる何かを見つけても、情報は私には下りてこない。
私の出自だって知られてしまう。
何も上手くいかない。


その日の夕飯、セドリックは席にいない。

「セドリック様は?」
「必要無いと。」
「ラッドさんがロビン様のもとへ向かった訳は何だったのですか?」
「……」
「そう、返事は結構よ。」

知ってたんだわ。いないのも作戦よ。

コンコン
「エリザベスです。」
「…はいれ。」
「お茶をご一緒にと思って持ってきたんですが、どうですか?」
「…頂く。」

ソファーに座ってお茶を飲む。部屋にはソファーが1つ、2人がけの物しかないので、私達は隣どうしに座ってる。

回りくどくは言えない性格だもの、率直に言うしかないよね。

「後悔してる?」
「何を?」
「死にはしなかったけれど、人を撃ってしまったんだもの。」
「それは別に。死んでたら情報が聞き出せないから。」
「もし私を助ける為に自発的な行動だったならお礼を言うけれど、そうだったの?」
「さぁ、100%ではないにしても、助けようとは思っていた。」
「…私を助けなくてもいいわ。貴方とでは立場も身分も違うのよ。」
「何故、リズが身分だとか立場だとか、そんな事が言えるんだ。」
「……どういう事?」
「誰かを救う事は悪い事なのか?やらなければいけない立ち位置だと、前に俺に言った。リズは出来る事をするべきだと。なのに何故それを俺に聞く?」
「…っ」

そう言われると、何も言えない。
役に立てと言われたら、そうするしかない。

「俺は人を撃つ事を命令されていた。危ないと思った時は殺せ。そうじゃなくても、必ず足を撃て…と。別にいい、それについては納得した。ただ、それをするのにリズが巻き込まれてもいい…と言われた。『』…と。」

「私が…?」

「リズの言うとおり、立場と身分だ。俺はリズが殺されるような状況をわざと招いて、自分が死ななければいい…と思ったんだ。」
「私はナイフを持っていたわ。殺されるなら先に相手を殺してたから、そんな風に思わなくてもいいわよ。」
「……」

私は『侯爵のためなら!』と、自分から行動する。人を殺すような悪い奴なら、自分が殺す事になっても躊躇わない。
セドリックは自分の意思で動いたとしても『やらされてる』と思ってしまう。思い込んでる。それがセドリックにとっての1番の劣等感で、ジレンマね。

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